閑話(?):どうか、僕たちを嫌いにならないで
これを読んでくれたあなたへ。
僕はあらゆるところの争いを見てきました。その多くは不思議なことに、人間が関わっています。
なぜでしょうか? それは人間が残酷な生き物だからだ、という人がいます。
僕も長いことそうかもしれないと思っていました。が、そうじゃないんです。
人間は向上心を持った、弱く臆病な生き物だったのです。
臆病な種族が真っ先に考えることは、身を隠すことです。しかし人間はそうしてきませんでした。
人間は自分より優れた種族、というより自分たちより武力や知力、魔力などを持っている者たちを絶えさせることで、誰も自分に勝てなくしたかったのです。
独占欲や支配欲がなかったわけじゃないでしょう。残忍さも持っています。楽しんで殺す人もいます。
でもそれは人間に限ったことではありません。だからといって許されることではありませんが、残忍さは人間が争う理由としては足りないのです。
人間は自分たちが弱く、満たされないことが我慢できなかった。
良い環境を得るために他種族から奪おうとしました。安全を得るために他種族を滅ぼそうとしました。
人間が始めた争いの大半は、このどちらかだったんです。
僕は魚人に分類される亜人の子と、鬼子と呼ばれる人間の子と、三人で暮らしています。
二人ともとてもいい子です。二人とも、傷だらけでした。
鬼子は人間からも魔族からも嫌われていますが、彼は人間を特に恐がります。
魔族は不吉なものが歩いてきたと鼻で笑うだけで、人間は不吉なものが歩いてきたら殺そうとするそうです。
魚人の子は魚人の町からここ、八地区に逃げ込んできました。
彼は父から愛されず、その暴力から這う這うの体で逃れてきた八地区で、人間たちから暴力を受けるところでした。
二人とも、人間から恐れられたのです。だから殺されそうになったんです。
二人とも人間が嫌いでしたが、最近はかなり良くなったみたいです。
魚人の子は鬼子のことを、鬼子としてではなく人間として慕っているようです。
少しだけ乱暴な鬼子は、魚人の子にたった一度も暴力を振るいませんでした。
案外、仲良くするためにどうしても必要なものは少ないのかもしれません。
僕はあらゆるところで争いを見てきました。その多くに関わった人間を、少し嫌いになりかけていました。
僕は人間にとって都合の悪い歴史をたくさん書きました。が、その大半は失われてしまったようです。
人間にとって都合の悪いことを書きたかったわけじゃないんです。ただ、歴史を書くとそうなっただけなんです。
なぜ争うのか理解すれば、それを未然に防げることもあるはずです。それが百件に一件だったとしても。
なぜでしょうか。人間は争いを防ぐことより、争った過去を隠す方が大事だったみたいです。
人間として情けなくて、悔しくて、申し訳なく思います。
人間は本当に、本当に、本当に、弱くて愚かな種族です。
でも僕は人間としてみんなに言いたい。
どうか、僕たちを嫌いにならないで。




