表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
砂鳥物語-現の鳩  作者: 千羽鳥


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/32

三章 鱗のある少年:そんなことをして、どうするんですか?

 少年の心が癒えるのにはホーク以上に時間がかかった。

 それでも少しずつ口数が増え、どうやら僕とホークのことを信用してくれたらしいことも、その言動から分かる。


「みなさん、ボクたちに食料や水を分け与えてくれます。どうしてなのでしょう?」


 ある時、少年が言った。


「ここは少し殺伐さつばつとしているところだけど、助け合って生きているんだ。でも僕がみんなに良くしてもらえるのは、きっと医者をやっているからだと思う」

「いしゃ? いしゃとは何をする人なのですか?」

「ケガとか病気を治すんだよ。おれもお前も、パロマが治してくれただろ?」


 ホークが言うと、少年は驚いたように僕を見上げた。


「そんなことをして、どうするんですか?」

「どうするって……。どうもしないよ。痛そうで、つらそうで、できれば治してあげたいなって思ったからかな」


 この地区に入ってきた時、僕の目の前で倒れ、亡くなった人のことを思い出す。

僥倖ぎょうこうだ〟

 彼はそれだけを言い残した。

 何もすることのできなかった、医療の知識をほとんど持っていなかった僕に、彼はなぜか感謝した。


 今でこそ色んな知識を身に着けた。多くの人を助けられた。

 でも、次の日の争いに、僕は送り出していただけなのかもしれない。

 治してどうするんだと聞かれても僕は、傷を治せばまた戦えるだなんて思ったことなんか、一度もない。


 争いを始めた魚人が憎い。争いを始めた人間が憎い。

 ここでも魚人の町でも、うまくやっていこうと思えばできるじゃないか。

 現に今だって、争わずに両者は生きている。


 身を滅ぼすだけの復讐心なんか、捨ててしまえ!

 貴方たちは自分の家族や仲間たちにまで危険をおよぼしてまで、何を求める!


「……マ。パロマ」

「ん、ごめん。聞いてなかった。なんだって?」

「顔色が悪いぞ。パロマだってたまには休んだらいい。最近、いつも遅くまでなんか書いてるじゃん」

「うーん、まだちょっとやることがあってね。でも、今日は早めに寝ようかな」


 答えながら伸びをして、立ち上がる。

 僕のふるまいがわざとらしかったのがバレたのか、ホークは心配そうに僕を見上げる。

 それでも僕は、二人に笑いかける。


「外の空気に当たってくるよ。最近はずっと家にこもりきりだったからね」


 この二人の平穏を、守っていたいから――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ