二章 八地区に差す光:大丈夫
少年の治療は難しかった。
傷口を綺麗にするところまでは順調だったけど、魔術による裂傷から殴打の痕まで様々あり、しかも時折暴れだすのを数人がかりで押さえつけなければならなかった。
ようやく一通りの手当てが済んだのは夜も更ける頃。協力してくれた人たちの顔にも疲労が目立つ。
「これは魚人にやられたのか?」
「それは本人に聞いてみないと分かりませんね」
一段落したといっても、少年の状態は良くない。息が悪く、熱もかなり高い。
白い家から取ってきた解熱剤と痛み止めも、あまりにも嫌がって抵抗するものだから使わなかった。
あとは彼の生命力を信じるしかない。にしても、暴れさせて体力を消耗させてしまったのが痛い。
これ以上、動かすわけにはいかない。
家の主には白い家で眠ってもらうことにして、僕自身は泊まらせてもらって彼の様子を見ることにした。
家の主は食事を用意して行ってくれた。煮魚のスープだ。
濃い目に味つけされたそれは身体を温めてくれたけど、嚥下するたびに肋骨が痛む。
そういえば自分も結構な怪我をしたんだったと思い出し、腹部と左腕の手当てを済ませた。
ベッドの脇に椅子を移動させて座ると、急にどっと疲れが出る。
少年の額に浮かんだ汗を時々拭っているうちに、そのまま眠ってしまった。
♢
真夜中、僕は激しい呻き声に目を覚ます。
痛みのせいでひどい夢を見ているのか、少年はもがくようにガリガリと毛布を引っ掻いていた。
「大丈夫だよ。ここは安全だからね」
ぼんやりしたまま頭を撫でると、少年は突然半身を起こして僕にしがみついてきた。
すごい力だ。また傷が開いてしまう。
あと、肋骨がとても痛い。
「大丈夫。ちゃんと良くなるよ」
正体の無い何かに怯える少年を安心させるために抱きかかえていると、呼吸が少しずつ落ち着いてくる。
彼には自分を守ってくれる人がいたんだろうか。
もしいたのなら、今日はその人の代わりをしよう。
そしていないなら、今日から僕が守ろう。
大丈夫。
何度もくり返しながら、僕たちは眠りの中に戻っていった。




