第九話 「配信中に助けられました」
「.....え?」
一体じゃない。
二体。いや――
「三体?」
「多い」
「逃げろ」
「Eランクでそれはダルい」
「いやちょっと待てって!」
同時に三体が動く。
「来る!」
一体目、回避。
二体目、ギリギリで回避。
三体目。
「うおっ!?」
対応が遅れ、バランスが崩れる。
「危ない」
「右!」
「いや左!」
「どっちだよ!」
判断が遅れる。
「っ!」
肩をかすめる。痛みが走る。
「.....やば」
「1回引け」
「落ち着け」
「囲まれるぞ」
「分かってる.....!」
でも、足が止まる。
その瞬間、一体が飛び込んでくる。
「やば――」
その時だった。
「そこ!下がって!」
鋭い声。
次の瞬間、モンスターが横から一閃で切り裂かれる。
「.....え?」
一瞬で一体が崩れ落ちる。
視線を向けるとそこには――
一人の女性。
軽装の装備に無駄のない動き。
そして――余裕のある立ち姿。
「誰?」
「うま」
「強くね?」
「大丈夫?」
振り向きながら軽く言う。
「え、あ、はい.....!」
「じゃあ残り、行ける?」
「.....たぶん!」
「オッケー、じゃあやってみて」
軽く距離を取る。
「丸投げで草」
「でも優しい」
「いや見てるだけ!?」
「大丈夫、ちゃんと見てるから」
女性が笑う。
「ほら、来てるよ」
ハっとする。残り二体。
「.....よし」
構える。今度は――焦らない。
一体目。
「今だ!」
回避からの一撃で撃破。
「いいぞ」
「落ち着いてる」
二体目。突進。
「っ!」
ギリギリで避ける。
「今!」
踏み込み、短剣を振り抜く。
手応えを感じる。
モンスターが崩れた。
「.....はぁっ.....」
息を吐く。
「ナイス」
「ちゃんと成長してる」
その時。
「証拠」
「.....あっ」
慌ててスマホを向ける。
ギリギリで撮影の成功した。
「セーフ.....!」
「危ない危ない」
女性が苦笑する。
「でも、慣れないと忘れるよね」
「ほんとそれです.....」
少し落ち着いてから、改めて向き直る。
「さっきは助かりました」
「気にしなくていいよ」
軽く手を振る。
「同じ配信者だし」
「えっ?」
「配信者?」
「マジ?」
「誰?」
女性は少しだけ笑う。
「白井ミオ」
刹那、コメント欄がざわつく。
「あのミオ?」
「中堅の人じゃん」
「普通に有名」
「.....え?」
「まぁ、そんな大したことないけどね」
軽く肩をすくめる。
「それより――」
ユウを見る。
「一人で突っ込みすぎ」
「.....すみません」
「でも、さっきより全然いい動きだった」
「ほんとですか?」
「うん。ちゃんと考えてた」
少しだけ嬉しくなる。
「じゃあさ」
ミオが笑う。
「次一緒にやる?」
「キターーー」
「コラボ」
「神展開キタコレ」
「え、いいんですか!?」
「配信的にも面白いでしょ」
ニヤッと笑う。
同時視聴者数は――250人。
「じゃあ....あとはダンジョン出るだけなんで一旦ここで終わります」
軽く息を整えて、カメラに向かって言う。
「今日もありがとうございました!」
配信を終了し、画面が切り替わる。
静かなダンジョンに戻る。
「.....ふぅ.....マジで助かった.....」
「さっきはマジでありがとうございました」
改めてミオに頭を下げる。
「いいっていいって」
軽く手を振る。
「それより、ちゃんと帰ろ」
「あ、はい」
二人で出口に向かう。
ダンジョンの外。
外の空気を吸った瞬間、体の力が抜ける。
「.....生きてる」
「大げさ」
ミオが少し笑う。
「でも、最初はそんなもんか」
「ですよね.....」
少しの沈黙。
「じゃあ俺、この辺で」
「うん。じゃあね」
「ありがとうございました!」
ミオと別れ、一人になってスマホを取り出す。
「.....そういえば」
配信アプリを開く。
登録者数の表示。
「.....え?」
一瞬、止まる。
「312....じゃない」
数字が変わっている。
「.....428?」
思わず見返し、もう一度更新。
「.....430」
じわじわと増えていき、通知欄も増えている。
『登録されました』
『登録されました』
『登録されました』
さらに、SNSの通知。
「.....うわ、なんだこれ、さっきの切り抜きもう上がってる.....!?」
動画の一部。
自分が助けられたシーン。
再生数が伸びている。
「.....マジかよ」
少しだけ笑い、
「.....いけるかもな」
スマホを握りしめる。




