第八話 「ちゃんと撮れてないと、報酬ゼロらしい」
「.....よし」
ダンジョンの入口前で軽く足踏みをした。
新しく買ったブーツ。前よりも地面をしっかり掴む感覚がある。
「これ、だいぶ違うな」
「滑ってないな」
「いい感じ」
「ちゃんと装備してきてて草」
「当たり前だろ」
軽く笑う。
腰には短剣。前より少しだけ戦う準備ができている気がする。
「今回行くのは――Eランクの初級ダンジョン」
「妥当」
「初心者はそこから」
「無難すぎて草」
「いや、無難でいいだろ」
「ちゃんとクリアして、ちゃんと稼ぐ」
軽く頷く。
「急に意識高い」
「でも大事」
「だろ?」
「じゃ、行くか」
一歩踏み出す。
ダンジョンの中は相変わらず薄暗い。
けど――
「.....前より全然怖くないな」
「慣れ」
「慢心するな」
「フラグ立てるな」
「最後やめろって」
苦笑する。
少し進んだところで物音がする。
「.....来たな」
構える。
小型のモンスターが姿を現す。
前と同じタイプだ。
「いける」
「前より余裕」
「まず落ち着け」
「分かってる」
深呼吸。
モンスターが突っ込んでくる。
「っ!」
一歩横にずれる。
ブーツがしっかり地面をとらえる。滑らない。
「お、行ける」
「今だ」
「前出ろ」
「了解!」
踏み込み、短剣を振る。
手応え。
モンスターが倒れる。
「.....よし!」
「ナイス」
「普通に安定してる」
「成長してるな」
「だろ?」
ちょっとだけ得意げに笑う。
その時。
「で、証拠は?」
「.....え?」
一瞬固まる。
「.....証拠ってなに?」
「討伐証明」
「撮ってないと報酬出ない」
「ログか映像」
「.....マジで!?」
慌てて周りを見る。
倒したモンスターはすでに消えかけている。
「ちょ、ちょっと待て!」
スマホを向ける。
ギリギリで映像に収める。
「.....危な!」
「ギリセーフ」
「今の危なかった」
「次から先に構えとけ」
「いや、聞いて無いって!」
額の汗を拭う。
「これ毎回やらないとダメなの?」
「基本そう」
「生還で最低報酬、討伐報酬は証拠ないと無効」
「そんなんも知らなくて草」
「シビアすぎだろ.....」
でも。
「.....逆に言えば、ちゃんとやれば稼げるってことか」
「そういうこと」
「だから配信者は強い」
「なるほどな」
少し納得する。
「じゃあ.....」
スマホをしっかりと構え、
「次からはちゃんと撮る」
その直後、また足音が。
「.....もう一体か」
「落ち着け」
「今度は証拠忘れるな」
「分かってるって」
構える。
「今回は――」
スマホを先に向ける。
「ちゃんとやる」
モンスターが飛び出す。
「来い!」
同時視聴者数は――180人。




