第三話 「コメントで戦うって、こういうことかよ」
第三話です。
テンポ感がいまいち掴めません!
「.....来るぞ」
目の前のモンスターが、ゆっくりと体勢を低くする。
さっきより一回り大きい影。
鈍く光る爪。地面を削るような足音。
逃げるか。
戦うか。
一瞬だけ迷って――
「.....いや、やるわ」
ユウはナイフを握り直した。
同時視聴者数は30人を超えている。
コメント欄もさっきまでとは比べ物にならないくらい流れていた。
「無理すんな」
「いやいける」
「ちゃんと見ろ」
「右回りキープ」
「だから意見バラバラすぎだって!」
思わずツッコむ。
けど、不思議と嫌じゃない。
むしろ――
「頼むぞ、ほんとに」
小さく呟いて、一歩踏み出した。
次の瞬間。
モンスターが地面を蹴った。
「うおっ!?」
一直線に突っ込んでくる。
速い。さっきのやつとは比べ物にならない。
「右!!」
「右だな!?」
反射的に体を捻る。
ギリギリで回避。風圧が頬をかすめた。
「いや、危なっ!!」
「止まるな」
「回れ回れ」
「正面立つな」
「OKOK!走る走る!」
言われるがまま、円を描くように走る。
モンスターの視線がそれを追う。
「これ、さっきと同じパターンか?」
「似てるけど違う」
「突進2回来る」
「フェイントあるぞ」
「情報多いって!」
叫びながらも、頭はフル回転していた。
”突進が2回”。
つまり――
「1回避けて終わりじゃないってことだな」
モンスターが再び踏み込む。
「来る!」
「今避けろ」
「うおっ!!」
横に飛ぶ。一発目を回避。
だが――
「え、また来る!?」
すぐに二発目。
体勢が崩れたまま、無理やり転がる。
地面に叩きつけられる衝撃。
「ぐっ.....!」
「言ったやろ」
「遅い」
「でも生きてる」
「いや今のはしょうがないだろ!?」
息を荒げながら立ち上がる。
正直、怖い。一発まともに食らえば終わる。
でも。
「.....なんかわかってきたかも。」
モンスターの動き。コメントの意味。自分の動き。
全部が少しずつ繋がり始めていた。
「次で行ける」
「焦るな」
「タイミング見ろ」
「.....よし」
深呼吸。
ナイフを握る手の震えが少しだけ収まる。
モンスターがまた構える。
「来いよ」
小さく呟く。
突進。一発目。
「今」
「っ!」
ギリギリで回避。今度は余裕がある。視界が少し広い。
二発目。
「次左」
「了解!」
体を捻る。
完璧ではない。でも――当たらない。
「.....いける」
思わず笑みがこぼれる。
「今だ」
「前出ろ」
「首元」
「ここだ!!」
ユウは踏み込んだ。
逃げるんじゃない。自分から前へ。
すれ違いざま。
ナイフを振り抜く。
手応え。
確かな感触。
モンスターの動きが止まる。
数秒の沈黙。
そして――
崩れ落ちる影。
「.....は?」
その場に立ち尽くす。
息が荒い。
心臓がうるさい。
「.....勝った?」
信じられない、という顔で呟く。
コメント欄が一気に流れる。
「ナイス」
「普通にうまくなってて草」
「今の良かった」
「判断よかったな」
「いや、お前らのおかげだろ!!」
思わず叫ぶ。
笑いながら膝に手をつく。
怖かった。
普通に死ぬかと思った。
でも――
「これ、すげえおもしろい」
ぽつりと呟く。
スマホを見る。
同時視聴者数は――78人。
さっきの倍以上。
「いや、増えすぎだろ.....」
呆れながらも、口元は完全に緩んでいた。
「次も行け」
「まだいける」
「配信続けろ」
「いや、ちょっとは休ませろよ!!」
ツッコミを入れながら壁にもたれかかる。
でも。
もう、最初とは違う。
「コメントで戦うって、こういうことかよ」
小さく笑う。
「なあ、お前ら」
スマホに向かって言う。
「次も頼むぞ」
コメントが一斉に流れた。
「任せろ」
「行こうぜ」
「次もバズらせるぞ」
ユウはニヤッと笑った。
同接は100人目前。




