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第90話

「お、遅かったなお前様」


俺がブラックホールを抜けると、そこはがらんとした空間だった。石造りの壁が立ち並び、奥に続いている。

さっきまで後ろにいたサクラ達は、何故か俺の目の前に揃っていた。


「あれ? どうして先にいるんだ?」

「あの空間に入った時点で分断されたんだ、引き返せだの納得しただの好き勝手言いやがって。偽物ぶち殺してとっとと出てきたんだ」

「・・・あれ偽物だったのかよ」


あの空間での会話も、サクラ達の存在も全て偽物だったらしい。俺は見破れなくて悔しい気持ちと、あっさりと騙された恥ずかしさに赤面する。


「さてエル、お前覚悟は出来てるよな?」

「あんな舐めた真似したんでありますから、怒りを買うのは当然でありますよね」

「・・・正直悪趣味と言える、不愉快だ」


エルは俺の後ろのブラックホールから現れ、俺の肩に手を置いた。


「そうカッカしないでください、奥でボーディガン様がお待ちですから」

「その必要は無い」


空間の奥から声が聞こえる。ゆっくり、ゆっくりとした足音がコツコツと響く。

暗闇の中から、一人の青年が姿を現した。年は俺と同じくらい。白いスーツの様な服に身を包み、長い黒髪を床スレスレまで垂らしている。そしてその目は、金色に輝いていた。


「ハジメマシテ、俺の名前はボーディガン。君達にとっては七大魔王の最後の一人、災厄魔王ボーディガンだ」


演技臭い挨拶と、深々としたお辞儀。どこか神経を逆なでする態度、その顔には薄ら不気味な笑顔が浮かんでいた。


「我は牙爪(がそう)魔王サクラ。お前を殺して最強になりに来た」

「ナナ・ベルフェゴール。魔族の未来、勇者の使命で魔王を殺す者であります」

「リーリャン・イ・フェニクス。レニィの街(僕の故郷)で死んだ仲間達の仇を討つ」

「ジハード・アーサー。サクラと一緒に最強になりに、そして世界を救いに来た男だ!」


ボーディガンは両手を大きく振り上げ、頭の上で手を打ち鳴らす。そして両手を下ろし、ハグを求めるように両手を開いた。


「来い」

「ッ!」


その舐めた態度に、サクラが走り出した。一瞬でボーディガンの目の前に走り寄り、滑りながら立ち止まる。拳を引いて、力を目一杯溜める。

一瞬の静寂が流れた。


「死ね」


サクラの全力の一撃が振るわれる。

どす黒い衝撃と空間のヒビ割れが、ボーディガンに襲いかかる。だが。


「なにっ!」


ヒビ割れはボーディガンには届かなかった。それどころか、サクラの拳もボーディガンの目の前で止まっていた。

ボーディガンの周りには、バイオレットが持っていたバリアが張られていた。


「【近接攻撃を全て無効化するギフト】、そして」


ボーディガンの手に嵌められている指輪が光り輝く。その瞬間ボーディガンの背中から何十本もの腕が生えてきた。


「【異形の腕を生やし操るギフト】」


その腕達は拳を握り、サクラに何十発と叩き込まれる。


「ならぶった斬るであります」


吹き飛ばされるサクラと交代するように、ナナがボーディガンから生えた腕を切り落とそうとする。するとまた、ボーディガンの指輪が光った。


「【武器を生成し飛ばすギフト】」

「わっ!」


空中にいたナナに、大量の剣や槍が放たれる。ナナは大剣を盾にして、ダメージを最小限に抑える。

ボーディガンから生える腕は、ナナに弾かれた武器を拾い上げて装備する。


「射線から離れていろ、【グレン・ショット】」


リーリャンは炎の弓を作り出し、引き絞ってボーディガンに狙いを定めた。

まるで太陽の様に赤い火の玉が生まれ、温度が上がって青い炎へと変質する。空間を埋め尽くすほどの青い炎が、ボーディガンへと放たれた。


「【魔術を消すギフト】」


ボーディガンの指輪が光ると同時に、リーリャンの魔術は消滅した。武器をいくつか溶かしたが、肝心のボーディガンには届かなかった。


「【重力を増やすギフト】」


ボーディガンの指輪が光った。俺達は押し潰される様に、地面に叩き付けられた。


「くっ! この程度で!」


サクラは重力を増やされている状態でも立ち上がり、ボーディガンに向かっていく。


「ではもう少し増やしましょうか」


ボーディガンの指輪が更に強く輝く。サクラは顔面から地面に叩き付けられ、腕すら動かせなくなっていた。


「貴方達は脅威ではありません」

「ん、だとぉ!」


サクラは地面に押し付けられながらも、言葉だけでボーディガンに噛み付く。


「我々の脅威は魔王達が結託し襲いかかってきた時、それだけが懸念事項でした。ですが今や脅威となる魔王は三人。二人はここで地に伏せ、一人は毒で再起不能。今や我々を阻む者はありません」

「ですがボーディガン様、人間族の援軍に異常に強い者がおります」

「ではそいつは俺が始末しましょう、Lがそう言うのなら相当の強さですからね」


俺達をそのままに、エルとボーディガンは普通に会話を繰り広げる。

本当に俺達は、脅威とすら思われていなかった。


「ッ! 【反転】!」


俺は自分の体に反転をかける。体に掛かっていた負荷が消え、俺の体にのしかかっていた重力が反転する。

体が自由になると同時に走り出し、サクラの体に触れる。


「【反転】!」

「っしゃぁ!」


サクラは立ち上がると同時に軽くなった重力によって、天井にまで吹き飛ぶ。サクラは天井を足場に、ボーディガンに向かって飛ぶ。


「エル」

「はい!」


サクラの目の前にブラックホールが生まれる。サクラがブラックホールの中に吸い込まれ、壁に向かって打ち出される。


「【反転】! ナナ、動けるか?」

「助かったであります!」


ナナに反転を掛け、自由になったナナがエルに向かって切り掛る。


「【武器を生成し飛ばすギフト】」

「それはさっき見たであります!」


ナナが身構えるが、その瞬間ナナの背後から様々な武器が飛んでくる。ナナは対応しきれず、何本もの武器が体に突き刺さる。


「ナナ! 【反転】!」

「助かった! 今助ける!」


リーリャンの体に反転を掛け、自由になったリーリャンが武器とナナの間に入る。武器はリーリャンの体に突き刺さるが、傷はすぐに燃えて癒える。


「【地獄の稲妻を呼び出すギフト】」


天井から黒い稲妻が降り注ぎ、俺達の体を貫く。

絶えず降り注ぐ稲妻は俺達を遠ざけ、ボーディガンから距離を取らされる。


「【無数の斬撃を飛ばすギフト】」


ボーディガンから遠ざかった俺達に、無数の斬撃が繰り出される。体の隅々まで浅く切り刻まれ、俺は血を撒き散らす。


「こんなものぉ!」


サクラが壁から飛び出し斬撃を浴びながらも、ボーディガンに向かって突き進む。黒い稲妻を集中的に浴びても立ち止まらず、ボーディガンの背中から生える腕に身体中を掴まれても立ち止まらない。


「ぶっ殺す!」

「エル!」

「もちろんです!」


サクラが振るった拳は、エルのブラックホールに吸い込まれた。そしてその拳はブラックホールを通り抜け、俺の腹を突き破った。

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