第86話
「やったか!?」
ドラゴンは地面に倒れ伏し、ピクリとも動かない。
『どうやらその様だな・・・』
「強かったでありますね」
『僕が一番苦労したぞ、いつまで気を引き続ければいいんだまったく』
三人とも疲弊の色が見える。
そういう俺も、疲れがどっと襲ってくる。焼け付く空気も火種が無くなったことで冷え始め、地面を焼いていた炎も勢いを衰え始めていた。
「ん?」
「どうしたナナ?」
ナナがドラゴンの死体を見て首を傾げる。大剣を担ぎ、ドラゴンの死体に近寄る。大剣の先でドラゴンの頭をつんつんと突く。
「いや、動いた気がしたんでありますが・・・」
『腹が割かれて死なない生物がいるかよ』
『まだ終わっていない!』
どこからかディーの声が響き渡る。そして、ドラゴンの死体が大きく動き出す。
「まだ動くぞ!」
ドラゴンの首は大きく持ち上がり、首の下からディーが現れた。
さっきは暗く遠かったせいでよく見えなかったが、そのディーの容姿は異様なものだった。
『な、んだあれ・・・』
「気持ち悪いであります・・・」
『あんな姿になってもまだ・・・』
ディーの頭には顔が三つ、胴体からは足と腕がめちゃくちゃな方向に三組ずつ生えていた。
ディーは体を引き摺りながら、ゆっくりとこっちに近付いてくる。
『まだ終わって、いない!』
ディーは腕を大きくうねらせる。そしてその内の一本が、ドラゴンの頭に変化した。
「やらせないであります!」
ドラゴンの頭が火を吹こうとした瞬間、ナナがその頭を切り落とした。
ディーは切り落とされた腕を抑えながら、雄叫びを上げる。ディーの背後に何かが生えてくる。
「あれは」
『尻尾だ!』
サクラが誰よりも先に反応し、尻尾の先端が俺達を狙った瞬間に食いちぎった。
『まだまだぁ!』
ディーは自分の腹に腕を突っ込む。そして皮膚を破き、内部を露出させる。
そこには牙が生え揃い、第二の口の様に開いた。
『【グレン・ストライク】』
リーリャンが冷静に魔術を放つ。大きく開いた腹部の口に、巨大な炎の球が直撃する。牙はボロボロと溶け、炎はディーの全身を包み込んだ。
『・・・』
「流石に止まったか?」
『どうして、どうして勝てない』
ディーが静かに呟く。
『L! 俺はどうして勝てない! どうして! 四人、四人合成でもまだ勝てないのか!』
その叫びに対して、返答はない。
ディーは体力の限界が来たのか、地面に膝を着く。
燃え盛る火だるまとなったディーは、両腕を天に向ける。それが何を意味するのか、俺達には分からなかった。
「・・・死んだであります?」
ナナが大剣の先で突く。ディーの死体はパーツごとに別れ、ボロボロと崩れ落ちた。
「どう思う、お前様」
サクラが人の姿に戻り、俺の隣に立つ。
俺は崩れたディーの姿を見て、少しだけ物悲しい気分になった。
「埋めてやろう」
「いいだろう、リーリャン、ナナ手伝え」
「はいであります!」
「しょうがないね」
俺達は広場の中央に小さな穴を掘り、黒焦げになったディーの死体を全て入れた。
黒焦げになりバラバラになってしまったディーの死体は、あまりにも量が少ない様に思えた。
「三人分」
「え?」
「きっとエルに合成されたんだろ、力を手に入れるために」
「それであんな異形の怪物に・・・」
「何にせよ、こいつも被害者って訳でありますね」
土を被せ、ディーを埋葬する。
「みなさん! ここに通路がありますよ!」
いつの間にか戦車から抜け出し、最初にディーがいた台座から手を振っていた。
俺達がそこに着くと、確かに通路があった。
台座の奥には通路があり、人が一人分通れるスペースしかなかった。
「ここから上に上がれるであります!」
ナナが通路の先を確かめ、顔を出す。
俺達は広場に置かれた戦車を見る。明らかに通れないサイズだった。
「よし、ホバはここに置いていこう」
「戦車の番は任せたでありますよ」
「そうだね、病人は無理させられないね」
三人はあっさりとホバと戦車を置いて、スタスタと通路の中に入っていく。
俺はどうしても、ホバをここに置いていくなんてことは出来そうにはなかった。
「ホバ、どうする?」
「僕も連れていってください、弾除けくらいにはなります」
「しないよそんな事」
俺はホバを背負い、通路を通って三人の後を追った。




