表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

79/102

第79話

振り返れば、巨大な移動要塞から何かが放たれていた。空には太陽が二つ登り、一つはこちら目掛けて落ちてきている。


「やばい!」


兵士達が一斉に馬に乗り込み、本部に向かって走り出す。俺達は当然のように、置いていかれた。


「嘘だろ!?」

『乗れお前様!』


サクラに跨る。サクラが走り出すと、あっという間に馬に乗った兵士達に追いつく。

その瞬間、大地を揺るがす程の轟音が響いた。俺達の頭上を光の矢が通り抜け、落下する太陽を撃ち抜いた。撃ち抜かれた太陽は無数の炎となり、バラバラになって俺達の頭上に降り注ぐ。


「なんだあれ! 何が起きてる!」

『掴まれお前様!』


サクラが落下してくる火炎弾を避けながら、直撃しそうな兵士達を回収する。乗っている俺は左右に前後に激しく揺さぶられるが、サクラが口で投げた兵士達をキャッチする役目に従事する。


「本部にも火炎弾が!」

「もっと急いでください!」

『こっちだって全速力だバカ!』


本部が見えて来た瞬間、俺達の頭上を火炎弾が通り越していく。本部目掛けて落ちていく火炎弾。それとは別の炎が、本部から飛び立った。


『リーリャン!』


鳥の姿になったリーリャンが身を呈して火炎弾を防ぐ。だが無数の火炎弾はリーリャン一人では防ぎ切れず、何発も本部周辺に直撃する。


「フラン!」


俺達は本部に着くと同時にサクラから飛び降りる。一際大きなテントにも火炎弾が直撃している、俺は最悪の事態を予想し青ざめる。


「ジハード様!」

「フラン! 無事だったか!」

「大きな音がしてテントから出たおかげでなんとか・・・お怪我はありませんか?」

「それよりもヤバい! 戦力差がありすぎる! ここは撤退するべきだ!」

「フラン女王陛下!」


俺達と一緒に帰って来た兵士達が詳細な情報をフランに伝える。フランの顔色はどんどんと悪くなり、隣にいるリリーナの表情も険しくなっていく。


「戦力差は十倍以上、撤退を進言します」

「撤退・・・」


フランはリリーナを見上げる。しかし、リリーナは首を振った。


「さっきの火炎弾で森林火災が起きている。森の中を通り抜けての撤退は不可能、本国からの援軍や物資の供給も絶たれました」

「そうですね、それに・・・」


フランは顔を上げた。


「私達に撤退は許されていない」

「ど、どういう事だ?」

「今頃ガリュオーン王国では避難勧告が出ているはずです。戦力差は予想されていました、勝てない事も予想されてました」

「じゃあ、何でここに?」

「一秒でも長く、一人でも多くの避難民や王国民を逃がすため。私達は、死ぬ事を承知でここに戦いに来たんです」


フランは冷たい表情でそう言い切った。その顔は、まるで国を背負った指導者の顔だった。

俺はリリーナに詰め寄る。


「どういう事だ? こんな小さい子を死なせる前提で戦場に?」

「それは・・・リリーナ様たっての希望だ」

「おい、おかしいだろ? そんなの」

「いいえ、おかしくありません。私達の敗北は決定していますが、戦力を少しでも削れればいいのです。人間族がきっと、私達の犠牲の上勝利してくれるはずです」

「おい」


黙って話を聞いていたサクラが口を挟む。

その表情には、怒りが浮かび上がっていた。


「こんなくだらん奴らの言葉に耳を貸すなお前様、不愉快だ」

「不愉快って、私達だって必死に考えました! 力も無い知恵も無い、そんな私達の最後の足掻きがこれなんです!」

「うるさい。ナナとリーリャン探して行くぞ」

「どこに行くと言うのだ、既にここは戦場。退路もないぞ」

「うっせーな。ぶち殺しに行くんだよ、ボーディガンをな。もっとも負ける前提のお前達に何も期待しないし、邪魔にならないようにとっとと死ね」

「サクラ、言い過ぎだ」

「お前様はいいのか! こんな物言いをする奴らが存在する事に! 生きる事への冒涜だ、命の価値を貶める行為だ! 今の我なら分かるぞ!」


サクラは牙を剥き出しにして、リリーナとフランを睨み付ける。


「生きようとする気概すら感じないこんな奴らに、いったい何が出来る! 死ぬ覚悟も出来ないこんな奴らに、いったい何を期待する!」

「死ぬ覚悟は出来ています」

「いいや出来ていない、震えているのはどうしてだ? 何故兵士達の士気は敵が迫る事に落ちている? こんな中途半端な戦争があっていいものか!」

「貴様、黙って聞いていればフラン様になんて口を!」


リリーナが剣を抜こうと手を動かす。その手を、サクラが足で押さえ付ける。


「お前達は覚悟と言うものを口にする資格は無い」

「なにぃっ!」

「希望を吠えろ! 絶望を跳ね除けろ! お前達にも明日を生きる資格があるのだ!」

「明日を生きる資格・・・」


フランが小さく呟く。そして、リリーナの剣を手で制す。


「貴方達なら、やってくれますか?」


フランが俺に問いかける。


「ボーディガンを倒して、私達を、世界を救ってくれますか?」

「もちろんだ」

「私達の国にも、生きて迎えれる明日は来ますか?」

「もちろんだ」

「手を、貸していただけませんか?」

「もちろんだ!」


フランは両目いっぱいに涙を浮かべる。

その瞬間、また天を割く轟音が鳴り響く。またあの火の玉が天に放たれ、俺達に向かって落ちて来ようとしていた。


「サクラ! 全力で投げろ!」

「おうとも!」


サクラは俺を片手で掴み、カタパルトの様に空に向かって射出する。

体がちぎれそうなくらい痛いが、歯を食いしばって我慢する。一瞬で巨大な火の玉に接近する。

俺は腕を突き出し、火の玉と接触した瞬間に大声をあげた。


「【反転】ッ!!!」


太陽と見まごう程巨大な火の玉は起動を反転させ、移動要塞に向かって飛んでいく。


「俺達からの宣戦布告だこの野郎!」


移動要塞に火の玉が着弾すると同時に炎を撒き散らし、移動要塞が火に包まれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ