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第78話

軍靴の音が辺りに響く。森の中を行進しながら、ガリュオーン王国軍は一弾となって進む。

俺達も軍馬に戦車(チャリオット)を引いてもらいながら、歩きで軍の先頭に着いていく。

名目としては女王の護衛だ。実際はフランのわがままなのだが。


「それでそれで、その後どうなったんですか!?」

「崩壊するユートピアから、あの戦車(チャリオット)で脱出したんだ」

「すごい!」


フランは俺達の旅の話に目を輝かせ、手足をバタバタと振るう。馬は迷惑そうな顔をするが、お構い無しで興奮している。


「フラン様、与太話の可能性もあるので」

「何を言うのですリリーナ! ジハード様達が嘘をつく訳ないでしょう!」

「我は太陽に触れた事があるぞ!」


後ろの方で兵士達に、俺も知らない与太話をベラベラ喋っているサクラに視線が向く。

その兵士達に混じって、ナナも目を輝かせている。楽しそうだから、放っておこう。


「ところで女王様、僕達は開戦と同時に自由行動で構わないんだね?」

「えぇ、私達に貴方達を縛る権利はありません」

「それはありがたいが、護衛の人数が足りないんじゃないですか?」


リーリャンが周囲を見回す。フランの周囲を守る護衛の兵士は、あまり数がいないように見える。

それを聞かれて、フランは少し顔を強ばらせる。


「私が命に替えてもフラン様を生かす」

「いけませんよリリーナ。命を大切に、です」

「はい」


少し違和感を覚える。だが、森が終わると同時にその違和感は払われた。


「森を抜けるぞ!」


一面の平原が広がっている。森はまるで切り取られたかのように途切れ、地平線に永遠と伸びる緑の平原。

そこに誰の姿も見えなかった。


「どうやらまだ来ていないようですね」


リリーナが合図を出すと、兵士達が先行する。馬車に詰んだ物資を下ろし、前線基地を設営する。


「森を背に陣を敷く。ここが作戦本部だ」

「なら前線はもっと前だな、お前様」


サクラが俺の肩を叩き、ニヤリと笑う。


「ちょっと見に行こうぜ」

「それなら兵達に案内させましょう。ある程度前線がハッキリするだけでも、防衛意識が高まるでしょう」


リリーナが手を上げると、馬に乗った数人の兵士がやってくる。


「ジハード達を前線まで頼む、異変があれば即撤退だ」

「かしこまりました! どうぞお乗り下さい」


俺とサクラは兵士の後ろに乗せてもらい、本部を離れる。

ナナとリーリャンを置いてきてしまったが、あの二人なら大丈夫だろう。


「お前様、この臭いが分かるか!」

「なんだって!?」

「臭い!」


サクラが大きな声で話しかけてくる。風の音に掻き消されながらも俺は聞き取り、鼻を効かせる。


「確かに、少し臭いな」

「これは血と戦の臭いだ! 確実に強まっている!」

「どこから臭ってくるんだ?」


サクラは真っ直ぐと前方を指差す。俺の目には何も見えない。いや、まだ何も見えない。

兵士達が馬を止める。


「ここです。ここが最前線です」

「ありがとう。サクラ、それで何の話だ?」

「臭いだ。どんどん強まってる」

「そりゃ進軍して来てるって話なら、強まるんじゃないか?」

「いや、そうじゃない。普通こういう戦争なら、兵達の臭いが先に、戦の臭いは後に来る。だがこれは・・・」


サクラは鼻をスンスンと鳴らす。

そして嗅ぎとった臭いに眉をひそめた。


「まるで戦場そのものが歩いている」

「戦場そのものが?」


サクラの発言に、少し寒気がする。

サクラは地面に這いつくばり、地面に耳をピッタリ付ける。


「足音多数、それだけじゃない。巨大な物が、何かを引きずりながら歩いている音もする」


俺も真似して耳を付ける。

確かにサクラの言う通り、足音の様な物が聞こえる。


「足音っぽいのが聞こえるぞ」

「え、そんなはずないですよ。人間の聴力ではそこまで聞こえないはずです」

「いやほんとだって、聞いてみてくれよ」


兵士も恐る恐る地面に耳を付ける。俺と同じ物を聞いたのか、顔を上げて首を傾げる。


「そんなはずは・・・」

「ほれ、見えてくるぞ」

「そんなはずは・・・!」


地平線の向こう側。何かが動いている。

小さい。いや、遠近法で小さく見えるだけだ。何かが左右に揺れ動いている。


「あれは・・・?」


兵士が望遠鏡を取り出す。


「エルフの国が時間も経たずに負けるわけだ」

「で、伝令! 伝令ー!」

「なんだ、何が見えてるんだ!」


兵士は慌てて俺に望遠鏡を手渡す。俺は望遠鏡を覗き込み、その小さな対象に向ける。


「なっ・・・んだあれ!」


地平線の向こう側、平原をゆっくりと歩いて来ていた。

都市だ。都市に足が生えていた。

足の生えた巨大な都市に、巨大な大砲が生えている。


「馬鹿じゃねぇのか?」

「お前様、それだけじゃないぞ」


サクラが俺の双眼鏡を持って、地面に向けさせる。

まばらだが、人の姿がある。ガリュオーン王国軍とは違い、格好や服装に統一感は無い。だがその後ろには、大量のゾンビエルフが付き従っていた。


「あのゾンビがいれば、国を落とすのは時間の問題。それに優秀なギフトを持った者達を兵とする事で、戦力の増強や強者の排除。最後にあの巨大な要塞兵器でダメ押し。隙の見えん完璧な布陣だな」

「言ってる場合か! 兵士数千人で勝てるわけが無い! フランに知らせるぞ!」


その瞬間、空を揺るがす轟音が響いた。

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