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第52話

城の中庭で楽しそうに殺し合うサクラとナナを眺めながら、俺とリーリャンはベランダで優雅にティータイムを楽しんでいた。

街はビィの能力で凍り付いていたが、ゆっくりと氷は溶け始めていた。


「強くなったなナナ!」

『主様程じゃないであります!』

「そうだな! 我の方が強いな!」

『言ったでありますね!』


ナナの大剣が中庭の噴水を粉砕しながら、サクラに向かって振り下ろされる。

俺は紅茶の入ったティーカップを傾けながら、甘いクッキーを口に運ぶ。


「すっかり元気だな」

「あれからまだ一日経っていないぞ? 一晩であの回復力、魔族の中でも悪魔の力は別格だな」

「そうだな、我が娘ながら恐ろしいよ」

「ベルフェゴール卿」


包帯を腕に巻いたベルフェゴール卿が、使用人の助けを借りてベランダに出てきた。


「悪魔の力は別格だ。他の魔族と違い特殊な能力は無いが、身体能力や耐久力は飛び抜けている」

「そりゃああれだけ動けてたらなぁ」

「ベルフェゴール卿、これからどう動くんですか? 僕は魔族です、長としての意見が聞きたい」

「そうだな、話すとしようか」


ベルフェゴール卿は椅子に座り、大きく息を吐いた。


「こんな事があったからには、我々魔族はボーディガンの一派とは敵対関係になる」

「となると人間側に味方するのですか?」

「いや、我々魔族は此度の戦いを静観しようと思う。人間への反感情も魔族上層部の潜伏者も片付いていない、それが片付くまでは我々魔族は戦争には参加しない」

「ふむ、そういう方向性に行くのですね」

「リーリャン的にはどうなんだ?」

「僕も賛成だ。今の魔族なら人間に対して戦争を仕掛けるならまだしも、その他の勢力に対しての攻撃なら団結が出来ない。きっと弱く脆いだろう」

「君は人間が嫌いかね?」

「人によります」


リーリャンはそう言って、俺の部屋から持ってきたクッキーを食べた。

ベルフェゴール卿は静かに笑いながら、リーリャンのクッキーに手を伸ばした。


「私もそうだ、人間と話せばまだわだかまりは解決できるほどの大きさだと思っている。いつか話せる人間が我が城を訪ねてきてくれればいいのだがね」

「・・・一応俺、こんな見た目ですけど人間ですよ?」

「え? ・・・気付かなかったな。だがこれで分かった、人間の中にも話せる者がいる事がな」


そう言いながらベルフェゴール卿はクッキーを口に運び、盛大にむせた。

俺はベルフェゴール卿の背中を擦りながら、甘いクッキーを差し出した。

その時、ベランダに吹き飛ばされたナナが激突した。手すりを破壊し、血を流しながら空を見上げている。


「ナナ!」

『大丈夫であります、それほど深くないであります』

「頭から血が! それに腕も変な方向に!」

『だから! 大丈夫でありますって!』


ナナはそういいながら、額の血を拭い腕を無理やり元の形に戻した。


「やり過ぎたか、ナナ?」

『なぁに、これくらいかすり傷でありますよ主様!』

「ククク、本気でぶつかれるのは楽しいな!」

「ナナ、本当に大丈夫なのか?」

『父様は心配しすぎであります! ナナはもう大人であります!』


ナナはぷんすか怒りながら、立ち上がって中庭に降りようとする。

俺はその腕を掴み、タオルを差し出した。


『ありがとうであります、旦那様!』

「ナナ心配する気持ちを分かってやれとは言わないが、そういうものだと受け取ってやって欲しい」

『むぅ』

「父親にとって娘はいつまでも大切な子供なんだよ」

『親と関係最悪な旦那様にはあんまり言われたくないでありますね』

「でも俺は知ってるから言わなきゃならないんだ。そしてベルフェゴール卿もです」

「私?」

「ナナは立派です、俺達の大切な仲間で大事な戦力です。どうかナナの行く末を案じ、無事を祈るだけにしてやってください。巣立ちの時はもう来たんですよ」

「そうか・・・大きくなったな、ナナ」


ベルフェゴール卿は大きく腕を広げ、ナナを抱きしめた。ナナは最初は嫌がっていたが、どうやっても抜けられない事を察すると諦めた様に抱き返した。


「父様、苦しいであります」

「もう少しだけこうさせてくれ、ナナは明日にはここを出るのだろう?」

「誰が教えたんでありますか・・・」

「僕だよ、文句なら受け付けよう」

「無いであります、ただ恨むだけであります」


ナナは恨めしそうな顔でリーリャンを睨む。リーリャンは涼しい顔で紅茶のカップを傾ける。


「お〜い! ナナまだか?」

「今そんな気分じゃないであります」

「ちぇ」


サクラは悪態をつき、その場に座り込んだ。

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