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第14話

俺達は早朝ダンジョン前に集合した。サクラは眠そうな顔をしていたが、ナナと合流する時にはシャキッとした顔になっていた。


「それじゃあ早速攻略開始であります!」

「おー!」


妙に張り切るナナを先頭に、ウキウキ顔のサクラに押されながらダンジョン内に入る。

ナナはダンジョンに足を踏み入れるやいなや、すぐに道を逸れて壁に剣を向けた。


「とりあえずここから進むであります」

「ここってどこだよ」

「えい!」


ナナはバターでも切るかの様に、大剣でスパスパと岩壁を切り裂く。ナナが崩した壁の向こう側には、捻れ曲がって下に続く穴が空いていた。


「このパターンなら、ここから降りれば十三階層まで行けるであります」

「こんな所から降りるのか? どうやって?」

「飛び降りるぞお前様!」


サクラが俺を担ぎ上げ、穴に向かって飛び降りる。凸凹とした突起が飛び出し落下を阻害するが、サクラはそれらを乗り継ぎどんどんと降下していく。


「よし着いたぞ」

「退いてくださいでありま〜す!」


サクラがひょいと避けると、大剣を下敷きにしたナナが落下してきた。どうやら突起全てを大剣で押し潰しながら落ちて来たらしく、ネバネバした液体が周囲に散らばる。


「うへえ、なんだこれ」

「十三階層からは歩きであります! 行くでありますよ〜!」


ナナは大剣を足で蹴り上げ背中にしまう。サクラは俺を地面に下ろし、懐からランプを取り出した。


「このダンジョン、こんなに湿ってたか?」


俺は周囲の様子に違和感を覚える。壁や天井がぬるりと光沢を放ち、地面にはいくつか水溜まりが出来ていた。


「このダンジョンは封鎖されている区間は溶解液が流れている事があるであります。不用意に壁や天井に穴を開けると、あっという間にドロドロになるでありますよ」

「そういう事先に言ってくれないかなぁ・・・」

「っと、敵でありますよ!」


ナナが大剣を構え前方を見つめる。暗闇の中から、細く長い触手がゆっくりと伸びてくる。触手の先には天井に張り付く、巨大なタコの魔物が潜んでいた。


「先手必勝!」


サクラが飛び掛ろうと身をかがめた瞬間、タコの胴体が大きく膨らむ。俺は咄嗟にサクラの前に飛び出し腕を突き出した。


「【反転】!」


タコの魔物は口から巨大な火炎を吐き出すが、俺の手に触れた火炎は反転しタコの魔物を焼き尽くした。


「サクラ、気を付けろよ」

「我ならあの程度の炎、何とでもない」

「それにしても水中にいるはずの魔物がどうしてこんなに多いのでありましょうかね・・・周囲には湖も海も無いのに」

「いや、海ならあるぞ」


サクラが口を開く。


「昨日の本に書いてあった地図によると、この山から数えて三つ。そこに海に繋がる湖があったはずだ」

「そんな遠くの湖とこの山が繋がってるって? あまり現実的じゃないな・・・」

「まぁ知識としては入れておいて損はないだろう」


トンネルの様に山の下を通る通路があるのだろうか。そうだと考えても、あまりの長さに疑問が残る。


「とりあえず先に進むでありますよ〜」

「あぁ、そうだな」


俺は一旦考えを保留にし、ナナの後に着いてダンジョンを行く。

ナナは慣れた様子でダンジョンを進み、道中の魔物にも素早く対処。そして俺達はあっという間に昨日より深い二十階層にまでたどり着いた。


「これで地下二十階層でありますね」

「いっそう薄暗くなった気がするな」

「魔物も強くなっているが、我らの敵では無いな」


そう言ってサクラが足を踏み出した瞬間、地面が円形に崩れ俺達の足元が陥没した。


「サクラ!」


俺はサクラを咄嗟に引っ張り上げるが、足元が陥没し踏ん張りが効かず、入れ替わる形で穴に落下してしまう。


「旦那様!」


大剣を壁に突き刺し俺の方にナナが手を伸ばすが、俺はその手を掴めずに穴に落ちる。すぐに着水し肌がピリピリする感覚で、自分の状況を理解する。


(溶解液に落ちた! 早く出なけりゃ溶かされる!)


俺は水面に向かって泳ごうとするが、次の瞬間水中に強い《《流れ》》が発生する。

水流は俺を巻き込み、俺が落ちて来た穴から遠ざかっていく。


「【反転】!」


俺は自分自身の体を反転させ、水流を逆に進む。どんどんと肌に刺さる様な痛みが増していく。眼球にビリビリと痛みが走る。

俺は水面から手を伸ばし、辛うじてナナの手を掴んだ。


(っ!?)


その時、俺の視界に信じられないものが映った。溶解液の中を悠々と歩く、黒い人影を。


「せーのっ!」

「ぷはぁっ!」

「お前様!」


俺は水上に引きずり出され、何とか息をする事が出来た。身体中あちこちが痛むが、特に大きな傷にはなっていなかった。


「大丈夫でありますか?」

「あぁ、溶解液がそれほど強くなくて助かった」

「無茶をするなお前様! 我ならあれくらいなんともない!」

「はは、つい体が動いたんだ」

「・・・無事でよかった! ありがとうな!」


サクラが俺を強く抱きしめる。服の表面が溶けてしまい、サクラが触れる度ボロボロと崩れる。


「ここで少し休憩するであります、旦那様の体も診つつ進むか退くかを考えるでありますよ」


ナナは荷物を地面に慎重に置き、食事の準備を始める。

俺は陥没した穴を見つめ、さっきの黒い人物を探す。だが流れが早く、水中の様子は何も見えない。


「なぁ、サクラ」

「なんだ?」

「この溶解液の中で人を見たって言ったら、信じるか?」

「ううむ。お前様の言う事だ、信じない訳では無いが・・・」


サクラは悩む様に首を捻り、水中を一緒に覗く。

そんな様子を見て腹を立てたのか、ナナが俺達の背中を引っ張る。


「ナナ一人に準備させないで、お二人も手伝うでありますよ!」

「はいはい」

「主にも準備させるのか!? まったく・・・」


俺達はナナに言われる通りに食事の準備を始める。

俺達を監視する者の事すら知らずに。

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