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第13話

俺達は街にまで戻って来た。来た時とは違い、ナナも加わってギルドに向かう。


「あ! 魔族のガキ!」

「な、なんで連れて来たんだよ!」

「誰でありますか?」

「自分でボコボコにした相手くらい覚えておけよ」


ナナは不思議そうな顔で詰め寄ってくる連中を見つめ、連中は今にも殴りかからんとしている。その間に入ったのはサクラだった。


「落ち着け。我の支配下に置いた、これで勝手もせん」

「本当かい姉ちゃん!」

「やっぱすげぇ人だったんだな!」

「なんだかよく分からないけど、お腹空いたであります! 旦那様、ご飯はどこで食べるでありますか?」

「いや、食事は後だ。俺は一つ気になる事がある」


俺はナナとサクラを残し、一人ギルドの奥に進む。そして日中と同じ受付に向かい、受付を叩いた。


「一つ聞きたいことがある」

「はい、なんでしょうか?」

「お前、なにか知ってるだろ」


俺の言葉に受付の眼光が鋭くなった。


「魔王の窟、この呼び方は一般的ではないらしいな? 俺達以外で使ったのはお前だけだ」

「・・・まぁ、受付ですから。多少見聞きはしますよ、噂や伝説をね」

「それを教えてくれ、今は情報が必要なんだ」

「・・・もう少しで上がります。そこら辺で待っていてください」


そう言い切ると受付は手をヒラヒラさせ、俺に引き下がるように促した。

俺は素直に従い、サクラとナナのいるテーブルまで戻る。


「二人は何くつろいでるんだよ」

「お前様がナンパするとこ見てた」

「主様と言う者がありながら・・・足りないと申すでありますか!?」

「違う、そんなんじゃない」

「それはどっちでありますか?」

「・・・どっちの意味でもだ」

「お待たせしました」


そう言って俺の肩を知らない女がポンと叩く。

俺は一瞬何が起きたか分からなかったが、少し観察するとさっきの受付だった事に気付いた。


「ここでは他の冒険者の目もあります、いい店を知っています」

「お前様、あぁいう苛烈そうなのが好みなのか?」

「馬鹿な事言ってないで行くぞ」


受付の女に手を引かれ、俺達はギルドを出て街を歩く。外はすっかり暗く、街中は酒の匂いで充満していた。

受付の女は俺達を率いて路地裏に入り、すぐ傍にあったバーに入った。


「奥の席に。マスター、軽食とお酒を適当にお願いします」

「はいよ」


俺達はあれよあれよと店の奥の席に押し込まれ、あっという間にテーブルには料理と酒が並んだ。


「改めまして、私はエルサ。冒険者ギルドで受付をやっています」

「・・・俺はジハード、こっちがサクラ」

「ナナはナナでありますよ!」


サクラは俺達そっちのけで料理に気を取られているため、俺が変わりに紹介する。

エルサは酒をぐいと呑むと、小首を傾げて俺を見る。


「それで、話が聞きたいんでしたよね」

「あぁそうだ、魔王の窟。それに関する情報が知りたい」

「まぁいいでしょう。その呼び方も久しぶりに聞きましたからね」


エルサはさっぱりとした表情で、昼間に見た本を懐から取り出した。


「これはあの本の《《写し》》です。私が作成しました」

「拝見するであります」


ナナが本を受け取り、中をパラパラも捲り始める。


「この本のオリジナルも私が作成しました」

「・・・あの本、随分古い様に見えたが。エルサさんはだいぶ若く見えるが?」

「まぁ、こういう者なので」


エルサはそう言って髪を掻き上げる。そこにはピンと尖った耳が現れた。


「エルフか、そりゃあ長生きな訳だな」

「サクラ、口に物を入れながら喋るな」

「あのダンジョンについて成り立ちを知っていますか?」


エルサは唐突に口を開いた。

俺は首を横に振り、本から顔を上げたナナも首を振った。


「あのダンジョンは一夜で生まれました。何も無かった平野に、山ごと」

「あの山丸ごと!?」

「あのダンジョンには我々ギルドも知らない秘密があります。一夜で生まれた山とダンジョン、定期的に組変わる構造、他では見ない特別な魔物、それらを調べて欲しい」

「どうして俺達に?」

「私は【鑑定】のギフトを持っています。あなた達の《《正体》》や技量等を鑑みて、のお願いです」


俺はサクラをチラリと見る。サクラは食事の手を止め面白そうな物を見る目で、エルサの瞳を見つめている。


「分かった、良いだろう。お前様、ダンジョン攻略といくぞ」

「そんな安請け合いしていいのか?」

「どちらにせよ攻略する予定だ、途中目標が増えても構わんだろう?」

「ありがとうございます」


エルサは簡潔に礼を言うと、酒のジョッキを空にして席を立った。


「最後に一ついいか?」

「えぇ、サクラさん。どうぞ」

「どうして魔王の窟と呼ばれている?」

「いつから囁かれ始めたか、あのダンジョンには魔王が潜む。そういう噂があるからです。ご馳走様でした」


エルサはツカツカと歩いて店を出ていってしまった。テーブルの上にあった本はいつの間にか無くなっており、人数分のジョッキと少なくなった料理だけが残されていた。


「流れでダンジョン攻略する羽目になっちまった・・・」

「ダンジョンの途中までなら案内出来るでありますよ!」

「だから、構造が変化するって話じゃなかったか?」

「それも全部覚えたであります。パターンは大きく分けて18パターン。そこから組み合わせで分かれる37パターンと、区画ごとに変形する173パターンで構成されていて」

「待て待て待て、えっと、何パターンだ? それ全部覚えているのか?」

「もちろんであります!」


ナナは胸を張ってドンと叩いた。俺は唖然としながら席に着いた。


「こりゃあ楽勝そうだな、お前様」

「そんな簡単な話じゃないって・・・」

「まぁナナに任せるであります!」

「それじゃあ明日の朝ダンジョン前に集合でな、我はもう眠い」


サクラは欠伸をしながら店を出ようとする。その時、マスターに腕を捕まれ動きを止められる。


「お客さん、お会計は?」

「んえ? エルサとか言うのが払ってくれてないのか?」

「・・・会計を押し付けられた」


俺とサクラは長旅で文無しだった。

頭を下げてナナから金を借り、何とかその場を切り抜ける。俺達は一度解散し、翌朝ダンジョン前で集合する事を約束した。

ダンジョンを攻略するための朝が、やって来た。

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