第弍章ー力ー
「その……、どういたしまして?」
「あはは!なんで疑問形なの?」
とりあえず、加那は本当に怒っていないようだ。
それに少しだけホッとする自分がいる一方、許されてよいのかと考える自分がいた。
普通に生きていれば、到底関わるようなことのない、血生臭い、下手を打てば死んでしまうような世界を、片鱗とは言え触れさせてしまったのだ。こんなに簡単に許されてよいのかと、後ろ暗い気分になる。
「でも、謝らせてほしい。本当にごめんなさい」
「うん、いいよ。許します」
だが、どうやら加那は微塵も気にする様子もなく日向の謝罪をすんなりと受け入れる。
「むしろあれだよ。西牙くんがそんな暗い顔してる方が私は嫌だよ」
と、少し怒ったかのような調子で加那は言う。
「あ、うん、ごめん」
「ほら、また謝る!許したんだからもう言いっこなしだよ?」
「うん、わかった」
「よろしい!」
日向はそんな加那を見て、強張っていた緊張が切れたのか顔を綻ばせる。
それを見た加那は満足げに頷き、日向に笑いかける。
なるほど、これはあの友人が、織人が太鼓判を押すわけだと、日向は妙に納得した。これは、学年のマドンナと言われても遜色はないだろう。油断すれば、思春期真っ只中の日向もこの無邪気な笑顔に惚れてしまうところだった。
「さ、もういいかい?
そろそろ本題に入ろう。伊吹さんも聞きたいことが山ほどあるだろう?」
炎陽としては、息子の家では見られない姿をずっと見ているのも悪くはないのだが、それでは話が一向に進まないと判断したのか、手を一つ叩いて話を切り替える。




