第弍章ー力ー
「あははっ!本当に水景ちゃんの言った通り」
「へ?」
どんな罵詈雑言を浴びせられようと、全て受け止めようとした日向は頭を下げたまま身構えていたが、返ってきたのは罵詈雑言とは程遠いものであった。
「言った通りだったでしょ?」
「うん。本当に」
タイミングよく水景が皿にドーナツを、炎陽と日向の分のコーヒーも一緒に客間へ戻ってくる。
「えっと……?」
拍子抜けする出来事に、日向は目を点にして首を傾げている。
すると水景はコーヒーとドーナツを机に置いてから日向に説明を始める。
「加那さんに言ってたんだよ、お兄ちゃんならきっとこう言ってくるよって」
「お邪魔させてもらって、西牙くんが来るまでの間に雑談してたんだ。
そしたら水景ちゃんが、お兄ちゃんは多分思い詰めた顔をして精一杯謝罪してくると思うよって」
「まぁお兄ちゃんの性格考えたら予想はつくよね」
加那と水景は向かい合い、お互いに笑い合い予想が当たったとはしゃいでいる。
「えっと、その、伊吹さんは怒ってないの?」
「むしろ何で怒ってると思ったの?逆に感謝してるのに」
感謝?何故?自分は伊吹さんをあの戦いに巻き込んでしまい、少なくともトラウマになる程の恐怖を経験させてしまった。恨まれこそすれ、感謝などされようがないと思うのだが……。
「だって西牙くん、私を守ってくれたでしょ?」
「え、えっと、守った……のかな?」
「うん、守ってくれたよ?西牙くんがいなかったら私多分あの場で死んでたもん。
だから、私がお礼を言いたかったの。
ありがとう」
「え、ちょっ、そんなこと……」
そう言って加那は頭を下げて感謝の言葉を述べる。
その光景に日向はただただ理解が追いつかず、あたふたしている。




