第弍章ー力ー
「あ、西牙くん」
客間に行くと、水景と加那が隣同士ソファに座り、仲良くお茶を飲んでいた。
織人によれば性格も太鼓判を押されている加那だ。水景も社交性がある。仲良くなるのは必然だった。
(それにしても、早いなぁ)
社交性がお世辞にも高いとは言えない日向は、内心で妹のその能力の高さに若干の嫉妬を覚えた。
「こんにちは。挨拶をしていなかったね。
僕は西牙炎陽。彼らの父親で、少し話した家業の頭領でもある」
「こんにちは。今日はお招き頂き感謝します」
「いや、この前はろくな説明も出来なかったからね。
今日は僕に代わって彼がきちんと説明をするよ」
と言って炎陽は視線を日向へと向ける。
……困ったな、覚悟と決意はしたが上手いこと言葉にならない。いざ面と向かってみると一歩を踏み出すのが怖くなる。
「……」
「とりあえず座ったら、お兄ちゃん。
ほら、お父さんも。
加那さんからお菓子頂いたから用意するね」
あっけらかんとした態度で水景はそう言って立ち上がると英語で何やら書いてある箱を手に、客間を出てゆく。
「あぁ、手土産まで。すまないね」
「いえ、そんな」
炎陽はペコリと頭を下げると加那とは対角にソファに腰掛ける。
「……西牙くん?」
ソファにも座らず、どこか辛そうに目を背けている日向を見て、加那が声をかける。
……いつまでも、こうしてはいられない。
「その、伊吹さん!」
「え、はい!?」
それほど大きな声を出したつもりではなかったが、自分でもびっくりするくらい大きな声を出してしまい、声をかけられた加那はもちろん、声を出した日向本人も驚いてしまう。
「あ、その……、一昨日は本当にごめんっ……!」
日向はガバッと頭を下げる。
「ぼくがしっかり気付いていれば君はあんなに怖い思いをしなくて済んだのに……。
いや、そもそもぼくが行かなければあのあやかし達も手を出してこなかったかもしれない。彼らは見えない者にはあまり手を出してこないから……。
謝ってすむ問題じゃないことは重々承知している。けど、ぼくには謝ることしか出来ない。本当にごめん……!」
あの時ああしておけば。そもそも行かなければ。いや、織人を通してでもあの肝試し自体を行わなければ。こうはならなかっただろう。
しかし、今更言っても詮なきことだ。謝り、償うより他に、日向に出来ることはなかった。




