第弍章ー力ー
「うん、気を付ける」
口は災いのもととはよく言ったものだと日向は思う。
「まぁ実際に君が見たものが祝法だったとしても、その効力まではわからない。だから、彼女が突然魑魅魍魎共の姿が見えるようになったのが、それが関係しているのかはわからないね」
「……霊的要因による以外で後天的に見えるようになったケースってある?」
「ふむ……」
炎陽は数旬、思考を巡らせる。彼が即答出来ずに考え込むのは珍しいことだ。日向としても、数えられるくらいしか見たことがない。
「……例えば外的要因、誰かが見えるように手助けすれば或いは見えるかも知れない」
「手助け?」
「僕には出来ないけど、多分、北の婆ちゃんなら出来ると思うよ。やったことはないかもしれないけど」
「つまり、見えないものを見えるように……、例えば眼鏡を貸すみたいな?」
「あぁ、そうだね。例えとするならそんな感じかな。
もっとも、そんな手助けをしてしまったなら霊的要因となり得るけどね」
加那が突然見えるようになった原因は、呪いだと日向は思っていた。
しかし、炎陽からしてみれば呪いはそんなに優しいものではない。故にほぼ断定していた日向に忠告をした。見えようが見えまいが、死にはしないのだから。
「……ま、考えていても仕方ないさ。
見える力“しか”持っていない人も多くはないが少なからずいるんだ。例え彼女が見えるようになっていたとしても、何らかの解決の手段はある」
なってしまったものは、この際仕方がない。それを防ぐことが彼らの本懐ではあるが、万全ではない。
予防が出来なかったのなら、対策を。それも又彼らの領分なのだ。
「さて、長いこと話し込んでしまったね。
そろそろ行こう。水景たちが待っている」
「うん」
「簡単にだが、説明はしておいた。
でもまぁ、君の口からも説明してあげなさい。彼女はもう当事者だ。不確実なことは不安の材料になるからそれは避けるとしても、わかっていることは全て教えてあげなさい。
それが君の、祓師としての責任だよ」
そうだ。彼女を巻き込んでしまった。この闇の中へ。普通に生活していれば、片鱗に触れることすらなかった世界へ。
だからこそ説明はしなければならない。そして謝ろう。許して貰えるとは思っていない。だが、全身全霊を込めて彼女を守ることを誓い、誠心誠意謝ろう。それしでしか償うことはできないのだから。




