第四話 カイゼン、アルセラと共に領主に会いに行く
できるだけ誤字は見直すようにしていますが、チェックしきれない時もあるので誤字報告はものすごく助かります。感想も嬉しいw
別サイトにて、評価がついたのでお祝いの毎日投稿です!
(尚ここからは、週3投稿で)
「ガルド、領主にコネないか?」
「はあ? あのなあ、領主様はブラン・ド・マイコン様だぞ」
「ブランかあ。カを付けたら昔やってた格ゲーのキャラだな」
「はあ?」
ったく、ガルドはサッシの悪い奴だな。ガルドはガリガリと自分の頭を掻いて、ため息をついてる。お前、ため息をつくと幸せと毛根が逃げるぞ。俺の腕の中には何故か、アルセラがお姫様抱っこされている。ちょっと目を細めて満足げにしてるが、こいつヤバいんだぞ。ガルド、どうにかしてくれよ。
俺は目が覚めた時に、ひんやりとしたアルセラが正面からしがみついていることに気づいた。しかもだ。首元に腕を巻き付けてすりすりしてくる。なんかおかしいな、と思ったんだ。
「アルセラ、なんで抱き着いているんだ?」
「魔力供給をしてもらうためです」
「ったく。してやるから離せ」
「いやです」
「はあ?」
俺が疑問の声を上げるとアルセラは、いつになく表情を変えてにっこりとした。だが目の奥には何か黄色い炎が燃えているように見えた。あれ、おかしい。そもそも奴隷契約をしているので、命令には逆らえないはずだが。アルセラはさらに首元に回した腕に力を込めてくる。アルセラ? 段々と首が締まってきたんだけど? 俺は離れようとするが、全く離れない。どころかアルセラの目の奥の黄色い炎は火力を増しているように思えた。
「アルセラ……?」
「マスターはあたしを高く売るんですよね?」
「おお、そうだぞ」
「じゃあ、マスターと一緒にあたしは死にます」
「はあ⁉ おま、何を言って」
「マスターが悪徳工匠ならあたしは狂った魔人形です。ちなみに拒否権はありません」
「ちょ、ちょっと。首元締めるのやめて⁉ 何が不満なんだ!」
「マスターがあたしと離れるのであれば、あたしはマスターを殺して、魔石を抜いて死にます」
あ、あかん。アルセラさんが、狂乱している。こ、怖いよ。それなりに戦闘は出来ると自負していたのだが、俺は今のアルセラに全く勝てる気がしなかった。段々と首元が苦しくなってくる。アルセラは俺の耳元で囁く。
「マスターがあたしを愛してくれるなら……」
もう何が言いたいのか、さっぱりわからん。初めてあった時の無表情なお人形さんフェイスはどこに行ったの⁉ どうしていいかわからんが俺はコモドンに助けを求める。だが、アルセラは顔をゆがめて、俺の首元をどんどん絞めてくる。
「マスター、今他の事を考えましたね。あたしのことを考えてくれないマスターなんて……いらないかなぁ」
「わ、悪かった。俺はコモドンの事を考えてただけだぞ。アルセラが一番だからな」
「わあ! それならよかった!」
俺、こんな怖い魔人形要らないんだけど! 殺されそうなんだけど! 絶対奴隷契約効いてないんだけど!
「マスター? 昨日話したあたしを折檻した前の主人、どうなったか知りたいですか?」
「い、いや~いいかな」
俺の言葉を聞いたアルセラの笑みはほんっとうに綺麗だが、奥の瞳の黄色い炎が強く燃えていた。こ、怖いです。はい。アルセラさんを売れません……。多分だけどアルセラの前の主人は……。まあ自業自得だろうけどな。俺は自分の行く末を想像してフルフルと震えていたが、アルセラはそれを見て、ウフフ、マスター可愛い、とかほざいていた。
話がそれたな。アルセラ改め、アルセラさんは何故か俺にお姫様抱っこを要求し、俺はそれを受け入れざるを得なかった。奴隷契約が魔人形に効いていないのは……どういう事だろうな。だがアルセラがいる手前、それを聞くのはリスキーだ。
俺はガルドに助けてくれ! とアイコンタクトをした。
「何だ? その気持ち悪いウィンクは?」
「ダメだ、こいつ何とかしないと」
「お前、ぶっ飛ばすぞ」
はあ、この剣に関してはアルセラがいない時にガルドに聞こう。
俺はため息をつきながら、アルセラをお姫様抱っこして街を歩く。
「マスター、ため息をつくと幸せが逃げますよ」
「はあ……」
俺は現実逃避することにした。
「ほら、街の市場で買い物するから下ろすぞ」
「仕方ありませんね。マスター」
「アルセラ! おいらに乗る!」
アルセラをコモドンに乗せた後、マイコンの街の市場で領主、ブラン・ド・マイコンにプレゼンするための物を買っていく。
「ビッグボアの骨の粉末と魔樹の樹液を大量にくれ」
「はいよ。あんた、前も買ってくれたね」
「お、前に魔石の端材を買っていったな」
俺は市場の露店で錬金術師を営んでいるおばあちゃんと仲良くなった。
名前はメルといういうらしい。若い頃は大層美人だったろうな。
「あんた、二枚目だね。孫を紹介しようかい?」
「おお、それは! って、いや、おばあちゃんに悪いから……」
メルが言った瞬間、きっと隣から視線が飛んでくる。
こ、こわい。何も言わないでおこう。
「マスター、必要な素材を早く買いましょう」
「そ、そうだな」
俺はさらにアラングレイン遺跡の掘り出し物を売っている胡散臭い親父から歯車と車軸になる棒を買う。
「これなんか、何に使うかわかんねえんだよな」
胡散臭い親父は一つの小さい箱を見せてくる。ほうほう、魔石を組み込んで小さな歯車を回せるようになってるのか。
「って、これモーターじゃねえか!」
「もーたー? 何だあそれ」
「とにかくすごい奴なんだよ」
「マスター、目が輝いてますね」
「こういうのは好きなんだよ」
他にも必要な素材があるなあ。こういうやつないかな?
「おっちゃん、丸くて車軸に取り付けられるやつないか?」
「おう。それはこれか? 金属製なんだが遺跡からはよく発掘されるぜ」
おお、金属製のタイヤだな。ゴムが欲しいけど……。
ゴムは今回無理だな。いや、錬金術師のメルから買えないか?
俺はメルの居る露店に戻って、白い液体が出る木の事を聞く。
「ああ、ムルムルの木かい? あんまり流通してないけど一応あるよ」
「おお、後卵の腐った匂いの液体は?」
「そっちは硫黄かい? そうだね。危険物だけど店にあるよ」
「おお、そりゃあよかった」
「ただあれは危険なんだよ。何に使うんだい?」
「ああ、そりゃあゴムを固めるためさ」
「固める? ああなるほどね」
「俺のジャンクスキルならしっかりと使える」
俺たちはメル婆さんの錬金術の店に行くことになった。
商業ギルドがある大広場の近くからさらに領主の館に近づく大通り。
そこの裏通りに入るとメル婆さんの店が見えた。
そこで出会った孫娘ムルは大層美人なお姉さんって感じだったがここは割愛する。
なんせ、アルセラがむくれて、冷えた目線を向けてきたからな。
とりあえず、ムルムルの樹脂と瓶に密封された硫黄を買って、俺たちは領主の館を目指す。
お、昨日のクソガキのマイクと領主の娘たちが空き地で遊んでやがる。
俺は持ってきていたビッグボアカートとコモドンカートを出す。
ジャンクスキルには収納スキルがあるからな。めちゃくちゃ便利なんだな、これが。
「あー! 昨日のおじさんだ~」
「あら、私たちに何か用ですの?」
「俺、あれ、乗れなかったんだよなあ」
「はいはい。昨日のクソガキ共。今日も特別に乗せてやるぞ~」
「でも、買えないんでしょ?」
「だから特別に無料で乗せてやるんだよ。これは特別試乗ってやつだぞ」
「わーい!」
昨日、カートに乗れなかったクソガキ共がわらわらと寄ってきて。乗り始める。
お、昨日の領主の馬車も近くに停まっているな。
領主の娘は、にっこりと笑って、近づいてくる。
「カイゼン様? どういう魂胆でこんなことを?」
お、だいぶ賢いな。タダより高い物はないってしっかりと知ってやがる。
でもな、アルセラ。子供にむきになるな。
さっきから俺に向ける目線が冷たいんだよ。
「じゃあ、あそこの馬車にいる人に繋いでくれないかな? 商談があると」
「フフフ、良いですわ。私、マリアーヌ・ド・マイコンがお父様に話してきます」
「お父様があそこにいるのか?」
「はい。あれは中は書斎のような造りで移動執務室になっていますの」
「は、はあ」
何で外で執務してるんだよ。俺は少し呆れた顔になるがすぐに気を引き締める。マリアーヌはにっこりと俺とアルセラに向けて笑みを見せると馬車に走って行った。
マリアーヌは多分七歳くらいの女の子だ。金髪碧眼のツインテール。将来は美人になるだろうな。熊さんのワッペンを服に付けていた。
アルセラは白髪で赤い目をしている。地味に怖いんだよな。魅了されそうで。
待つ事数分。マリアーヌが馬車から出てきて俺達を呼ぶので、アルセラ、コモドンと共に馬車まで歩く。
そして出てきたのは、金髪ショートの俺と同じ身長位の少年だった。
え? マリアーヌの弟か? と思ったらなんか背伸びして俺に話しかけてきた。
「よく来たな。ジャンクショップのカイゼン。俺様に何か用か?」
「え、誰?」
「俺様は! ブラン・ド・マイコンだ! この街の領主だよ!」
「はあ? 若すぎるだろ」
「まあ見た目はな。何だって俺様はハイエルフだからな」
「え。マリアーヌって何歳?」
「あら、レディに年齢は聞いてはいけないわ。でも特別に教えてあげる。二十歳よ」
えええ⁉ 二十歳? 俺とそんなに年変わらないじゃん。
てか、マイコンの街ってエルフが領主なのか?
なんかすごいことになってきたな。
俺とアルセラは自然と百面相していたのだろう。ブランとマリアーヌは腹を抱えて笑い始める。まあ、初めて会った貴族がぜんぜん貴族らしくないんだが。まあいいか。
「カイゼン。大分驚いているな。それで俺様に何用だ」
「ああ、領主ブランに商談を持ちかけようと思ってな」
「ほう。それはどんなカートだ?」
おお、やっぱりカートに食いついている。
「あんた、子供の事が大好きだろう」
「そうだな。いつも子供たちが健やかに遊んでくれることを願っている」
「そんなあんたに、このカートは魅力的に映るだろう?」
「ふむ。確かにそうだが……商業ギルドのアーモットが出てくるのであろう? ならば商談は?」
「まあまあ、俺が提案しに来たものはカートだけじゃないぜ?」
「ほう、何だ?」
それは……?
これだよ。ミニ四駆……ではなくミニ魔導カート。
「ジャンクショップカイゼン、開業ってな」
「ほう、作っている所を見せてくれるのか?」
「その方が面白いだろ?」
「流石マスターです!」
「あらあら楽しみですわ」
俺はいつも通り、ジャンクスキルで透明な一メートル四方の正方形の空間を作る。
いつの間にか、クソガキのマイクたちが周りに集まってきていた。
「ここに近づくんじゃねえぞ!」
『はーい!』
元気に返事をするクソガキ共を尻目にビッグボアの骨の粉末と魔石の粉を取り出す。
先にミニ魔導カートのシャーシ、つまり車体を作る。プラモデルのパーツをイメージしながら、魔石ボックスとモーター、ギアがかちッとはまるように設計する。
「これは恐らく、最初に作れるのは俺しかいない」
「なるほど、技術的には難しそうだな」
ブランと話しながらシャーシを作り終える。
モーターとビニオンギヤという小さな歯車を回してプロペラシャフトやカウンターギヤを介してタイヤにパワーを伝える。
プロペラシャフトとは、FR車(後輪駆動)や4WD車(四輪駆動)の車体中央を前後に走り、エンジンや変速機の動力を後輪や前輪のデファレンシャルギアへ伝える回転軸のことだ。カウンターギアとは、モーターや駆動軸の回転力を別の軸へ伝え、速度や回転方向を調節するための「中間歯車」のこと。
プロペラシャフトはミニ四駆の車体を繋ぐ棒のような物だ。
カウンターギアはさっきも言ったけど速度調整のために必要になる。
カウンターギアは小さくて細かいので魔力を多めに注ぎ込んで成形していく。
結構疲れるなあ。俺は汗をぬぐいながら、作業を進める。
後は魔石を電池のように削り、嵌める。まあ電池みたいに二つつける必要はない。
そしてここで取り出しますは、金属製のタイヤに沿わせる加硫したゴム。
「なるほど、白い液体に硫黄を混ぜて固くするのですね」
ジャンクスキルの空間からは何も漏れないので匂いを気にせずに作れる。
さくっと黒いゴムがタイヤに巻きあがる。
「すげえ!」
「魔法じゃん、これ」
「おじさん、すげえな!」
ん? なんか、昨日居た目ざとい商人たちも遠巻きに見守っている。
あいつら、俺をストーキングしてないか? なんかアイデアの出る箱だと勘違いしてないか?
そして最後のボディ。そうだなあ。マリアーヌは熊さんのワッペンを付けてたな。
多分精神年齢は子供だろう。俺は少しきりっとした熊さんの顔をボディにして作り上げる。それをシャーシに全部はめ込んで……。
あっ、車軸もちゃんと入れれば……。
「良し、ミニ魔導カート、マリアーヌモデルの完成だ!」
『うおおおおお!』
『すげえ! かっこいい!』
周りのクソガキ共が騒ぐ中、マリアーヌはプルプルと震えて、赤い顔をしている。
あれ、怒らせた? 熊さんはまずかったか?
と、思ったら……。
「私の! 私の熊さん魔導カートですわ!」
あ、めっちゃ喜んでる。
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