第三話 カイゼン、商業ギルドのアーモットと対立する
できるだけ誤字は見直すようにしていますが、チェックしきれない時もあるので誤字報告はものすごく助かります。感想も嬉しいw
「それで何で毎回俺の所に見せに来るんだよ……」
「悪いか? ただの自慢だぞ」
「お前、俺以外に友達いないだろ……」
次の日の朝、奴隷商人のガルドの所に子供向けの荷台を見せに来た。
何で、ガルドに見せに来たのかって? こいつは意外と人望があるからな。
買ってくれそうな商人を紹介してもらうためだよ。
ガルドの奴隷商館は質実堅実な造りで、黒色の木材を使った重厚な館だ。
二階と地下室があり、高そうな壺とかは置いていないのが、好感が持てるんだよなあ。
まあガルドに対してそんなことは言わないけどな。こいつは俺の商売のタネになるからな!
「またろくでもないこと考えてやがるな……」
「マスター、不気味な笑みがこぼれています」
「良いんだよ! 俺は悪徳工匠のカイゼンだからな!」
「マスターが悪徳かと言われると……」
「カイゼンは胡散臭いカイゼン」
「え? トカゲ型の乗り物が喋った?」
「ガオー!」
「いや、今誤魔化してももう遅いぞ……」
奴隷商人のガルドはコモドンに対してため息をつく。
てか俺の笑みを不気味とか胡散臭いとか! 最高のほめ言葉だ!
はっはっは。
「ダメだこいつ、何とかしないと」
おい、ガルド。それ、昔の日本のネットミームだぞ。まあ俺もどういうネタかは忘れたけどな。
「という事でガルド、よさげな商人を紹介してくれ」
「それはどういう訳だよ」
一々文句を言うな。
「というか、お前の……その商品を見るためにここに目ざとい商人が集まっているぞ」
え? ああ、奴隷商人のガルドの奴隷商館は大通りにあるから、人目が集まるんだな。
マイコンの街の親子連れや、目ざとい商人がもう集まってきやがった。
いや、これは都合がいいな。この状況を利用するか。
「おい、そこのクソガキ。このボアカートかコモドンカートに乗ってみたいか?」
「クソガキじゃないやい! マイクだい!」
「じゃあクソガキのマイク。これに乗ってみろ」
「えー、マイクだけずるい!」
「私も乗ってみたいですわ」
おお、こいつらは昨日もここら辺で話しているときにアルセラのコモドンを見ていたクソガキ共だな。あーちなみに、荷台って言うと、新しくないからボアカートやコモドンカートにしてみた。
マイクをボアカートに乗ると、俺は後ろからボアカートを押す。
「え? 何するの? おじさん」
「俺をおじさんって言ったな? そういうやつにはこうだ!」
「うわ! キャー! 動く、これ動くよ!」
俺が軽く、ボアカートを押すと、通常よりも速い速度でボアカートが動き出す。
実は昨日、カートだけじゃあ芸がないと思って、魔人形を売っている魔人形屋で壊れた魔人形を買ってきたんだよな。
魔人形とは、魔石を魂として動く人工生命体だ。
身体を動かすのも、思考するのも魔力。
そのため普通の食事は必要ない。
魔人形には単純な命令しか理解できないものから、人間のように会話できるものまで存在する。
下級魔人形。
・命令されたことだけ実行する。
中級魔人形。
・簡単な判断ができる。
高級魔人形。
・会話、学習、状況判断ができる。
特殊な魔人形。
・人格や感情まで持つ。
魔人形屋で買ったのは、中級魔人形だ。走る、止まる、くらいの判断ができればいい。
「すごいよ! おじさん! 僕が動かさなくても走るなんて!」
「私も乗りたいですわ!」
「じゃあ、お前にはコモドンカートだな」
クソガキ共が嬉しそうに大通りの道を走っていく。目ざとい商人たちは目を金の文字に変えて、頭の中で金勘定をしているのが見て取れるな。うっしっし。これなら売れる、売れるぞお!
「ジャンクショップ、カイゼン様! このカートは幾らで売り出すのですか!」
「おい、抜け駆けはずるいぞ! 私なら一台金貨三枚は出す!」
「ならば、私は金貨五枚だ!」
商人たちが騒ぐ中、ボアカートとコモドンカートに乗ったクソガキのマイクと庶民にしては汚れのない綺麗な服を着た女子が嬉しそうに叫んでいた。
馬車が通る所までは行かないように指示してあるので問題ないのだが、なんか地味な割に小奇麗で商会のマークや貴族の紋章が押されていない馬車が一台止まっているな。
「マスター。あの馬車の中から視線を感じます」
「確かにそうだな。クソガキのマイクともう一台に乗っている女子を見守っているように見える」
「おいおい、あの馬車……」
「なんだ? 知っているのか。ガルド」
「ああ。だがありゃあ、マイコンの街の領主様の馬車だぜ」
おいおい。ってなるとマイクと一緒に遊んでいるのは領主の子供ってことになるのか?
キラーン。こいつは金になるかもなあ。
俺たちが話し合っている中、商人たちはオークションのような事をしている。
いいぞ、そのまま吊り上がって一番、高い金を出した奴に売ってやろう。
と、考えていたのだが、俺は重要なことを二つ忘れていた。
まず一つ目は昨日、セバスにも売ると約束していたこと。
そしてもう一つは……。
「困りますねえ。商業ギルドにアイデアと設計図を登録しろと言いましたのに」
そう、商業ギルドの副ギルド長アーモットの事だ。
「商業ギルドに登録せずにマイコンの街で商売をすることは許されません。これは違反ですかね?」
アーモットはこちらに不気味な笑みを見せながら、歩いてくる。
目線は俺の奴隷のアルセラとコモドンにも向いているようだ。
なーんか、嫌な目線なんだよな。
俺の隣にいたはずのアルセラはコモドンと共に俺の後ろに回って服の袖を握ってくる。
「おお、昨日ぶりだなあ。アーモンド」
「アーモットですが? ジャンクショップのカイゼン様は記憶力も悪いんですねえ」
「うるせえ。それで何の用だ」
「商業ギルドに登録して、アイデアと設計図を登録するように言いに来たのですよ。ああ、今回は商業ギルドに登録せずに商いをしようとしたので違約金として金貨五枚は必要ですがねえ」
アーモットは趣味の悪い額縁眼鏡をクイっとしながら、にやにやと腹の立つ笑みを見せてくる。ちなみにこの街の通貨は日本円に直すとこうなる。
・鉄貨一枚:百円。
・銅貨一枚:千円。
・銀貨一枚:一万円。
・金貨一枚:十万円。
・大金貨一枚:百万円。
・白金貨一枚:一千万円。
・大白金貨一枚:一億円。
つまりこいつは登録料に五十万円も払えと言っていることになる。
「はあ? そんな金あるわけないだろう」
「それが嫌なら、商いは出来ませんねえ~」
ちぃっ。つくづく嫌味なやつだ。クソガキのマイクや領主の娘らしき女子、周りにいた商人は固唾をのんで見守っている。まあ元手的には金貨五枚はないわけではない。だがなんか、アーモット改め、アーモンドには払う気が起きない。なーんか、嫌な感じがする。
「ああ、そういえばあなたは金にがめついとか。そうしましたら、そこの欠損奴隷とトカゲ型の奴隷を私に無償で譲れば、登録料は免除してもいいですよ?」
「!」
俺の後ろにいたアルセラが俺の服の袖を更に強く握り、不安そうなひょうじょうをみせる。はあ、俺は悪徳工匠で金にがめつい男だ。まあ登録料がタダになるなら商品は高く売ってやっても……ってそんなこと言う訳ないよなあ?
「おい、アーモンド。それはとっても魅力的な提案だ。だが断る」
「はあ? 良いのですか? カイゼン様はこのまま商売ができなくても」
「俺の商品はもっと価値を高くして、高く売る。そんな登録料の免除くらいで売れる訳がないだろ」
「ほう。ならばよろしい。貴方はマイコンの街で一切商いはさせません。商人の皆さんも無断でカイゼン様と商いをすれば……わかっていますね?」
アーモンドは不気味な笑みを周りに振りまくと、満足そうな感じで商業ギルドに戻って行った。はあ、二度とあいつの面見たくねえ。絶対次あったら手が出そう。
周りの商人たちはアーモンドに対して苦々しい表情を見せていた。
「あいつのせいで、いつも商いが台無しになる」
「ああ、昔の商業ギルドは本当によかったのに……カオル様がいた頃に戻りたい」
「アーモンドはいつも登録料や手数料と言って法外な値段を吹っかけてきやがる!」
なるほどなあ。商業ギルドのファンシーでお洒落な雰囲気と組織が真逆だったのは前任者と今のアーモンドの違いだったのか。
「ああ、カオル様の病気が治れば……」
「おいたわしい」
「マスター……あたしのために」
「胡散臭いカイゼン。今回だけはかっこよかったゾ「
「うるせえ、お前らのためじゃねえ」
俺は先ほどから止まっている馬車と領主の娘らしきガキを見る。
ふむ。何か突破口があるとすれば、ここだな。
まあ、今のところは引き下がろうかね。
カオル様の事も気になるしな。
「カイゼン、どうするんだ?」
「ガルド。まあ何とかするさ」
「アルセラ、コモドン、帰るぞ」
「はい、マスター」
「胡散臭いカイゼン。分かった」
俺たちはいつの間にか、重たい雲に覆われた日差しのない空を見上げながらとぼとぼとジャンク城に帰って行った。
森の木々もいつもより元気がないように感じる。小動物は息をひそめて重たい空と呼応しているようだった。
帰って、キッチンに戻った、俺はアルセラと一緒に料理をしていた。
「あたしは、料理は食べられませんが、マスターのために料理を覚えます!」
「ガオー!」
「いや、アルセラはともかく、コモドンまでいると邪魔なんだけど……」
「絶対作ります!」
「ガオー!」
「いや、コモドンは喋れよ」
俺はため息をついて、料理を始める。
まずは小麦粉に水と塩を混ぜて、練り合わせる。
生地をこねるための棒で記事を伸ばして、練り合わせ、伸ばしてを繰り返す。
卵があれば、パスタを作ろうと思ったのだが、この世界、卵も貴重品なんだよなあ。
まあ愚痴はいい。とりあえず、生地をこねる。
アルセラがやりたがるので任せる。
その間に前に森で狩ったビッグボアの燻製ベーコンと骨を取り出して、あく抜きを兼ねて山菜とにんにく、しょうがを入れまくる。
にんにくとショウガは何と森に自生している。山菜はワラビやフキノトウとかそんな感じ。
燻製ベーコンはビッグボアの肉を塩漬けにして、数日間つけておいた。それの塩抜きをして、香りのよい、香木をウッドチップにして煙でいぶす。そして燻製ベーコンに魚醬、お酢、白ワインを入れて煮詰める。まあ現代の日本だったら、醤油、みりん、料理酒、砂糖を入れるんだろうけど、醤油もないし、砂糖は貴重。料理酒は白ワインで代用するしかない。みりんも当然ない。今作ろうとしてるのはチャーシューモドキだな。
昼から夜になるまで、ビッグボアの骨から出汁を取ると良い感じの匂いになってきた。
豚骨ラーメンのスープみたいな感じだな。魚醬をスープ皿に入れて、出汁を入れるといい感じの匂いになった。さっきこねていた麺はうどんになる。
中華麺でもよかったなあ。中華麺は確か、小麦粉、卵、塩、かん水だったか?
かん水は重曹を入れれば行ける。重曹は異世界でも使われていて、売られているからなあ。卵はお好みだが、あった方が好きなので卵問題をどうするか、めどがつくまではラーメンは無理だな。
チャーシューもいい感じになったのでビッグボアのスープと切った不揃いのうどんを入れて、チャーシューを乗せる。山菜を乗せれば……。
「豚骨うどんの完成だな」
「おお、これが料理!」
「匂いはいい感じガオー!」
テーブルと椅子に俺だけ座り、隣にアルセラとコモドンを呼ぶ。
そしてまず豚骨スープを飲む。うん、意外といい感じだ。
魚醬の魚臭さはあるが、ビッグボアの出しと合わさると良い感じになってる。
俺はスープを飲んだ後、アルセラの背中に手を当てる。アルセラはびっくりしてるな。そしてスープの味をイメージしながら魔力を供給する。アルセラは目を輝かせて、語りだす。
「すごい、マスター! 魔力を供給しながら味のイメージも伝えるなんて! これが人間の味覚なのですね! あっ……」
「アルセラ、もうバレバレだ。お前、魔人形だろ」
「……はい」
「ご飯を食べられない。魔力が必要。やたらと魔人形のコモドンに好かれる。そして人形のような見た目。初日に何となく勘づいていたぞ」
「そうでしたか……」
アルセラはシュンとした顔を見せて、俯く。
「それで、マスターは捨てるのでしょうか。前の主人のように気味が悪いと言って折檻して、左足を折ったりするのでしょうか」
アルセラの言葉に俺は絶句する。どうして、欠損奴隷になったのかはわからなかった。でも前の主人にそんなことをされているとは思わなかった。俺は思わず、テーブルをダンと叩く。
「おい、アルセラ」
「ひぃっ。何でしょう、マスター」
「俺がそんな奴に見えるか?」
「……。いえ、マスターはとっても優しくて素敵な方です」
「まあ俺はお前を賞品としてしか見てないが、そんなことは絶対しない。させない」
「マスター……でもそれは矛盾しているのでは?」
「……うるさい」
俺はその後、無言で豚骨うどんを食べた。チャーシューはベーコンから作ったので塩辛かった。何故か目から汗が出てきた。次はベーコンからじゃなく、普通にチャーシューを作ろう。その後は井戸から汲んだ水で汗を拭く。
「マスター、あたしの仕事です」
「……」
やたらと甲斐甲斐しくなったアルセラが体全体を吹いてくれた。
こいつはどんな人生、いや人形生を送ってきたんだろうな。
俺はその後、商業ギルドの事やアルセラの事を考える。ぐるぐると思考が回るがアルセラのことに関しては答えが出なかった。
うとうとしているときに何かが聞こえてきた気がした。
「マスターは一生かけてあたしが守る。あたしを売るなら、マスターを殺して、あたしも魔石を抜いて死ぬ……」
「……ガオ」
何故か、冷や汗をかいた気がしたが、いつの間にか寝ていた。
朝起きるとアルセラの冷えた体が俺にしがみついていたが。
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