第二話 カイゼン、奴隷少女アルセラと街を歩く
できるだけ誤字は見直すようにしていますが、チェックしきれない時もあるので誤字報告はものすごく助かります。感想も嬉しいw
「で、お前さん、それは何だ?」
「はあ、アルセラの義足だろうが」
「ちげえだろ! どう見ても昨日買ったトカゲ型の玩具に乗ってやがる。しかもサイズが全然ちげえ! 一体全体どうなってやがるんだ!」
「俺の腕がいいんだよ」
「はあ……」
奴隷商人のガルドは驚き疲れたのか、ため息をついてやがる。ったく義足なんて形の物を作る気はないんだぞ。こっちは面白い物を作りたいんだ。ガルドは呆れた顔で見ているが、マイコンの街の奴らはさらに変な目で見てやがる。
「おいおい、カイゼンの奴、何て乗り物を作ってやがるんだ?」
「トカゲ型で自律して動く乗り物なんて聞いたことがないぞ」
「あら? でもあんな玩具があったら子供も大人も喜ぶでしょうね」
「おかーさん、あれ欲しい」
ん? こういう乗り物は異世界では珍しいのか。前世の日本ではアニメキャラクターの顔をしたショッピングモールにとかにある乗り物とかあったよな。ふむふむ、これはいい儲け話かもしれんぞ。ただなあ、子供が乗っても壊れないし、壊さない程度のプラスチックがないんだよな。俺は一応、ガルドとアルセラにも聞いてみる。
「ガルド、アルセラ。子供が乗る可愛い荷台みたいなものはないのか?」
「荷台が可愛くてどうするんだ?」
「あたしが乗っているコモドンみたいなものでしょうか?」
「そうだ。後は子供が乗っても壊れないもので着色しやすい物ってないか?」
「うーん。スライムゼリーとかならいいんじゃないか?」
「スライムゼリーだと柔らかすぎる」
「じゃあ知らねえよ!」
ったく、俺が折角話を振ってやってるのに。優しい俺の気遣いを無視しやがって!
「マスターはとっても優しくていい人ですよ」
「はあ、カイゼンは変人でただの馬鹿だよ」
「ああん!」
「何だって?」
俺とガルドがにらみ合う中、間に入っておろおろするアルセラ。そしてコモドンが……。
「ガオー!」
『いってえ!』
俺とガルドの脚に噛みついてきやがった。こいつ、やっぱりただのジャンク品に戻してやろうか?
「ダメですよ。マスター、コモドンは悪くありません」
「ちぃっ!」
「ったく、なんてものを作りやがったんだ。このバカは」
さっきからナチュラルに俺の思考を読んでくるな。アルセラは。
俺とガルドはにらみ合って、髭親父だの、世捨て人とか、お互い言いたいことを言い合ってから踵を返す。しょうがない、商業ギルドに行くか。俺とアルセラとコモドンはマイコンの街を歩く。今は大広場の傍にある商業ギルドに向かって歩いている。屋台の串焼き屋は少し魚臭い匂いのタレを付けながら串焼きを焼いていた。この異世界には醤油がないんだ。まあ作り方は昔散々、ネットで調べたから知ってる。大豆と米麴が必要なんだが、米麴の元になる米が見つからないんだよな。
両隣には木造とレンガ造りの商店が立ち並んでいた。こっちにも四季があるんだが、基本的には日本の夏と一緒だ。まあ湿度はそんなに高くならないから過ごしやすい。だが、冬はクッソ雪が降るし寒いんだよな。奥に見える領主の館を見つめながら、アルセラを乗せたコモドンと歩く。
アルセラは昨日から飯を食べていない。さっきも串焼きを買うか? って聞いたんだが、首を横に振った。ふむ、ますます昨日考えていた仮説が頭に浮かぶなあ。
「マスター……」
「ん? なんだ?」
「あたし……いえ、何も」
「ふむ、話したくないことは聞かないから」
だってこいつは俺から巣立っていく商品になるんだからな。アルセラは少し潤んだ目でこちらを見てくる。ったく、なんだよ。俺は商品に何で愛着がわいているんだ。
俺たちは大通りの傍の商業ギルドに着いた。天秤のマークが目印で、奥に長い長屋の作りになっている。まあこの世界だとあまり高層の建物がないんだよな。オーク材っぽい明るめの木材とレンガを組み合わせてある。すごい温かみがある建物だ。
コモドンとアルセラを連れて、商業ギルドに入っていく。中は喫茶店のような椅子と机がおしゃれに配置してある。果実ジュースが売られていた。ああ、そうか飲食スペースもあるんだな。この発想は先進的な気がする。コーヒーがあればなお良いんだが。
カウンターで無表情で作業をしている受付嬢に声をかける。
「マイコンの街で取り扱っている魔物素材について聞きたい」
「ん。何の素材?」
うーん、接客態度は微妙かあ。建物の感じとか発想はすごくいいんだが、サービスがなってないなあ。まあ異世界だからしょうがないかもなあ。
「着色できて、子供が使っても壊れない、加工しやすい素材だ」
「はあ。それは何のために使うの?」
「子どもが乗って遊べる荷台だ」
「マスターが作ってくれたコモドンのような物です」
「コモドン?」
受付嬢はアルセラが乗っているコモドンに気づいて顔を少し緩める。
あ、ちょっと笑ったな。だがすぐに顔を無表情にすると、職員を呼んでくると言って、後ろの作業場に引っ込んで行った。さあどんな奴が出てくるかな。
「ラインから用件をお伺いしました。商業ギルドの副ギルド長アーモットです」
おお、大物が出てきたな。
俺は詳しくアイデアを話す……前に素材があるか聞くが、アイデアを話してほしいの一点張りだった。
「アイデアを話して、どうなるんだ?」
「マイコンの街では商業ギルド会員でないと商いをすることはできません。そして、そのアイデアと設計図を商業ギルドで登録していただく必要があります」
うーん。特許みたいなものを登録する必要があるのか? まあアイデアを登録するのは良いんだが、設計図までしなきゃいけないとなるとなあ。
「そちらのお嬢さんが乗っている子供向けの玩具でしょう? アイデアを登録しておかないと他の物に真似されて、先に登録される恐れもあります」
「ふむ。なるほどな。だがまだ設計図までは作っていないんだ」
「なるほど。ならば先ほどの素材の相談は出来ませんね」
「何だって?」
「設計図とアイデアを登録してからの販売許可が下りますので」
「はあ? 素材の相談は関係ないだろ。しかも、横暴じゃないか?」
「それが商業ギルドの決まりなので」
「もういい。帰るぞ、アルセラ」
商業ギルドが融通の利かない、組織だとわかった。腹が立つが仕方ない。
「マスター、これからどうするんですか?」
「鍛冶屋に行って素材の相談をする」
「鍛冶屋さんでもわかりますかね?」
「ダメなら自分で研究する。ああ、冒険者ギルドに行くのもありだな」
「確かに素材の事なら冒険者ギルドの方がいいかもしれませんね」
俺は商業ギルドの建物を見上げて、ため息をつく。こんなにお洒落な建物で喫茶店のような事をしていて、組織はダメとは思わなかった。勿体ない。
俺たちは商業ギルドから離れて、剣と盾のマークを付けた建物に向かう。
こっちは質実堅実といった感じで、雰囲気は少し暗い。
俺たちが冒険者ギルドに入ると酒場と併設させた広い空間が目に入る。
「いらっしゃいませ!」
お、こっちはサービスがいいな。ちょっと期待できる。
「魔物の素材について説明が欲しいんだが?」
「うーん、貴方は冒険者ですか?」
「いや、そうではないんだが。商業ギルドでは素材のことについて聞けなくてな」
「なるほど……あれ? 黒髪黒目でこの街にいる人物。もしかして、ジャンクショップのカイゼンさんですか?」
「え、何で知ってるんだ?」
「魔物の素材を取り扱っている商人でも鍛冶屋で武器屋でも錬金術師でもない人はカイゼンさんくらいです。しかも貴方自身で素材を取りに行くこともあるとか!」
あ、あれ? 俺、この街でそんなに有名だったっけ。
冒険者ギルドの受付嬢はアスミンと名乗り、目を輝かせて握手をせがんできた。
なんか隣のアルセラも気分良さそうにふんぞり返ってる。お前は昨日来たばかりの新人だろ。
まあいいや。なんかアスミンの話を聞いた冒険者が俺達の話を聞いている。
商業ギルドで説明した素材の話をすると、アスミンは少し考えてからこういった。
「これは私の友達の錬金術師から聞いたのですが、ビッグボアの骨に魔石の粉を混ぜるとおあえつら向きの素材になると聞きました。しかもビッグボアはマイコンの街の傍の森ですぐに湧くので、素材としても安いです。後は着色としては魔樹の樹液に魔力を通すと青色以外の色になりますね」
おお、めっちゃ詳しいな。それに話も分かりやすい。冒険者ギルドのアスミン、良いぞ。
ただ作るとなると……うーん。ジャンクスキルの中にあるジャンク合体や、成形を使えば余裕なんだが、俺以外しか作れなくなりそうだ。まあしばらくはそれでいいか。
ビッグボアの骨と魔石の粉を売ってくれる商人を教えてくれたので、そこに歩いて向かう。
ザラード商店という、マイコンの街では中規模の商店だ。
出てきた商人は日本のRPGゲームに出てきた小太りで汗かきなおっさんだ。
ト〇ネコのおっさんを思い出したがセバスって名前だった。
何で執事みたいな名前なんだよ!
「すみません。わたすも気になるのでその、荷台を作っているところを見せてくれませんか?」
「ああ、いいぞ」
セバスのわたすという主語には突っ込まないぞ。
俺は倉庫の手前の広く開けたところでビッグボアの骨と魔石の粉と魔樹の樹液を取り出す。まずは粉末にしなければいけないのだが、錬金術の素材としても需要があるため、粉の状態で売られていた。
まずはジャンクスキルで透明な一メートル四方の正方形の空間を作る。これはジャンクスキルの合体や成形、解体をこなす空間だ。先ほどの素材を浮かせて、徐々に素材を混ぜ合わせる。魔力を魔樹の樹液に流していると赤、黄、緑、橙、白、黒など様々な色に変わっていく。
「おお、急に素材が宙に浮いて混ざり合っていく」
「凄いです! マスター!」
「ガオー!」
俺はここでビッグボアの顔を優しめのブタさんにした顔にしていく。
さっき気づいたが、部品ごとに作らないと駄目だな。
アニメ調のイラストを脳内にイメージしながら、目と角、鼻、皮膚、ビッグボアの毛をそれぞれ作っていく。
体は子供が乗る部分を開けて、車輪を入れる場所も用意する。
あ、車輪をどうするか決めてなかったな。
「しまった。車輪がない」
「車輪ですか? 荷台用の車輪なら使っていない荷台から取れますが」
「おお、それはいいな」
それ、採用。急遽、持ってきてもらった荷台を横に置いて、解体してから車輪と骨格を仕上げる。結構時間がかかるな。
日が真上になってきた。固焼きパンに干し肉と野菜を挟んで食べる。
この世界の飯は調味料がそれほど普及してないから上手くない。
「今度、美味い飯作ってやるよ」
「マスター、あたしは……」
アルセラは少し落ち込んでいる。
「今度、魔力流してやるから」
「!」
アルセラは目を輝かせる。商人のセバスはそのやり取りを不思議そうに眺めていた。
「マスター、コモドン型の荷台も欲しがられると思います」
「そうだな。作るか!」
「カイゼンさん、この荷台売れますよ! 我が紹介でも取り扱いたいですな」
「ガオー!」
コモドン型の荷台も作っていく。
そして夕方に差し掛かるころ……。
「できた!」
「良いですね! マスター!」
「これで子供たちが遊ぶのですね」
「ガオー!」
ビッグボア型の荷台とコモドン型の荷台が完成したぞ!
さて、どう売ろう。
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