第五話 カイゼン、領主ブランの特注工匠になる
できるだけ誤字は見直すようにしていますが、チェックしきれない時もあるので誤字報告はものすごく助かります。感想も嬉しいw
「すごい、すごいですわ! これはどう走らせるのですか⁉」
「ちょっと待ってろ。土の上で走らせるよりもレース場で走らせた方がいいから」
「レース場? これでレースができるのかい?」
マリアーヌが大声ではしゃいでいるし、領主のブランは大きなお目目を大きくして俺に質問してくる。現代日本にはよくあった。ミニ四駆用のレース場だな。一発目でうまく走るとは思わないが……まあ試しながら段々と速く走れることを競っていけばいい。
それにしてもクソガキ共や商人たちの爛々とした目が怖い。そしてもっと怖いのが俺の腕にマリアーヌがしがみついているとアルセラがとても冷えた目で俺を見てくることだ。
「マスター、あたしのミニ魔導カートも欲しいです!」
あれ、ミニ魔導カートが欲しかったのか。
「カイゼン! 俺のも欲しい」
「僕のも!」
俺はクソガキ共が俺におねだりをするのを見て、いい流れだなと思った。
領主のブランもとても目を輝かせて、マリアーヌモデルのミニ魔導カートを見つめている。領主権限で作れと言われそうだな。
「それで領主のブラン。これを作ってほしいなら商談しないとな」
「ならば俺様から一つ提案しよう。カイゼン。お前をマイコン領の特注工匠として認定する」
「ほう、それなら商業ギルドに登録しなくていいのか?」
「いや、登録はする。だが金貨五枚という馬鹿げた値段は払わないがな」
領主ブランから説明された特注工匠の規約はこんな感じだ。
特注工匠とは、既存の商品では満たせない依頼に対し、独自の発想と技術によって一点物の商品を作ることを領主から認められた民間工匠である。
領主からの認定によって一定の信用と商業上の特権を得るが、領主に雇用されるわけではない。
そして何より、「存在しない商品を作る」ことこそが、特注工匠の価値である。
「領主に雇用されるわけではないというのがいいな」
「そうだろう? 職人を規則で縛っても良いことがないからな。ちなみに存在している者でも改良版を俺様から要望することもある」
「それくらいならいいけどよ。俺はジャンクショップ、カイゼンだ。大量生産ができる訳じゃないぞ?」
「商業ギルドに登録してアイデアと設計図を渡した後は特許料が発生する。そしてそれを各職人に割り振ることが可能になるぞ」
「それはいいな。鍛冶師、魔道具師、木工職人。革職人、馬車職人、魔人形師たちに指示できるわけか」
まあ、指示した所でまだ関係のない職人たちが作ってくれるとは限らない。だがミニ魔導カートは絶対流行るだろう。ならば職人たちが勝手に悩んで俺のところに集まってくれるかもな。
という事で商業ギルドにブランと一緒に向かう。
「これはこれは、ジャンクショップのカイゼン様と……領主様⁉」
「商業ギルドの副ギルド長アーモットよ。俺様が来ると何か不都合なことでもあるのか?」
「い、いえ。そういう訳では……」
「今日はジャンクショップカイゼンを領主直属の特注工匠にしようと思ってな」
「そ、そうですか。ですが商業ギルドの登録はしてもらわないと困ります」
「そう言うと思って、しっかりと登録のために来たぞ。前に商人たちが噂をしておったが登録料に金貨五枚を要求したとか?」
「い、いえ。銀貨五枚で結構です……」
「ほう? 領主様と俺には随分と態度が違うなあ」
「あれは違反金を込めて金貨五枚と言ったのです。領主様の特注工匠になるのであれば違反金は必要ありません……」
ほお? そう言いながらも随分と悔しそうな表情を俺に見せてくるなあ?
こいつはまた何かを仕掛けてくるだろうな。本当に嫌なやつだ。
前の商業ギルドにいたカオル様って人の事も気になる。
日本人みたいな名前だし、もしかしたら転生者かもしれない。
「しっかりと俺の登録したアイデアと設計図は“商業ギルド”が守ってくれるんだよな?」
「……は、はい。そうです」
「そこのところは領主の権限でしっかりと見張ろう。アーモット、お主には色々なうわさが流れておるしなあ?」
「いえ、滅相もございません」
なるほど。商人たちが噂していた登録料と手数料の話は領主ブランも聞いていたのか。これでしばらくはアーモット改めアーモンドもおとなしくなるかな?
アルセラはコモドンに乗りながら俺の足元にくっついて、アーモットに涼しい目線を向けていた。そもそも、登録料代わりにアルセラとコモドンを欲しがったのはどういう道理なんだろうな?
「……クソ、これで終わると思うなよ」
アーモットが何かを呟いていたが俺の耳元には聞こえなかった。
アルセラがとっても怖い顔をしていたから良くないことだろうな。
という事で商いが晴れてできるようになったので、俺たちは空き地に戻って行った。
クソガキ共が俺達にくっついてくる。ええい、俺はクソガキが嫌いなんだっつうの!
「ふむ、領主権限でミニ魔導カートを子供たちに製作するように。何、金は俺様が出そう」
「一台どれくらい出す?」
「ふむ、銀貨三枚でどうかな?」
おお、意外と出してくれるな。日本円で三万円だよ。ここにいるクソガキ共は七人くらいいるから二十一万円だな。
うーむ、ただデザインをどうしようかな。
ひとまずレース場から作るか。
「じゃあまずは、レース場から作るか」
「レース場とはどんな形ですの?」
「ぐるっと丸く何台も走れるコースにするんだよ」
俺は、いつも通りジャンクスキルで透明な一メートル四方の正方形の空間を作る。
ビッグボアの骨の粉末と魔石の粉を白いプラスチックにして、四台くらいが同時に走れるコースにする。
今回は簡単すぎたので魔樹の樹液で各コースに白、赤、黄、緑の着色を施す。
まあ今回はこんな感じでいいかな。
マリアーヌが嬉しそうに熊さん魔導カートを持ってきた。
「これはどう走らせるんですの⁉」
「裏側のスイッチを入れて、レース場で走らせるんだよ」
俺はマリアーヌを連れて、空き地に作ったレース場に行く。マリアーヌの目はキラキラしてるな。後、クソガキのマイク、なんか俺に鋭い目を向けてるがマリアーヌを取ったわけじゃないぞ。アルセラは何でおれの手を強く握ってくるのかなあ。
「よし走らせるぞ。マリアーヌ、ミニ魔導カートの裏にあるスイッチをオンにするんだ」
「こうですの?」
マリアーヌが裏の魔石に繋がるスイッチをオンにするとホイールが回り始める。
結構、良い感じに速さが出そうだな。マリアーヌがおっかなびっくりでレース場にミニ魔導カートを離すと勢いよく、走り始める。
ウィーン! ギュィーン!
「うおおお!」
「速い! 速いわ!」
「おお、これはすごいのう!」
クソガキのマイクとマリアーヌが騒ぎ、ブランも嬉しそうに叫んでいた。
俺も個人的に嬉しいな。まさか、異世界でミニ魔導カートを作れるとは思わなかった。
心臓部のモーターは多分これから手に入るかは微妙だ。だけど俺には問題ない。
ジャンクスキルにはジャンク複製というスキルもあるからな。
これからモーターは作りたい放題だ。
「モーターを色々作って、速さとか出力を変えられるものも欲しいな」
「ほう、それが変わるとどうなるんだ?」
「コースによっては曲がり切れなくて、コースアウトしてしまう物もあるんだ。だからちゃんとコースを曲がれて、速さも求められるものにしないと駄目だ」
「戦略性があるのだな」
クソガキ共が騒いでいる間に、違うボディのバリエーションを作る。
ドラゴンの顔のボディだったり、サラマンダーやスライムの顔の可愛らしいボディも作ったぞ。それを持って行ってやるとクソガキ共は大喜びだ。
「カイゼンさん、是非、私の商会にもミニ魔導カートを取引していただきたい!」
「あたしの所にも頼むよ! ああ、昨日作ってたボアカートやコモドンカートもいいなあ!」
商人たちが嬉しそうな顔をして商談を持ってくる。
だがなあ、特注工匠だから領主様との商談になるんだよな。
という事で領主様経由で商談開始だ。
ブランと商人たちはお互いポーカーフェイスだが結構やり合ってた。
結局民間に卸す分は銀貨五枚になったな。
「マスター、もっと高くなくていいんですか?」
「安めにしておいて、民間にもっと普及させるのがいいんだよ。高めに売るなら貴族向けに特別なデザインにすればいいからな」
「フフフ、マスターはお人よしですね」
「おいおい、ちゃんと話を聞いてたか?」
「ちゃんと聞いてましたよ? 子供向けには安く売るって話ですもんね」
はあ、アルセラは俺の事どう思ってるんだ? アルセラは俺の手を強く握って笑みを見せる。俺は目を背けた。俺はそんなこと思ってないからな。
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