第一章 第三話 その名は大森剛平! ゴリマッチョ参上
強烈なキャラクター、登場です。
なお、今後コード・オレンジにおいて、重要人物となります。
私は、一枚の資料を眺めていた。
そこに記されている、未来に至ることができる可能性は、わずか2%。
必死に計算し、技術開発を行い、それでもこれだけしか得られなかった数字。
「絶対に、変えてみせるにゃ」
私は、決意を固めた。
その時、玄関のチャイムが鳴った。
学校から帰り、夕食をどうしようかと考えていたタイミングであった。
インターホンのモニターで確認すると……そこには、この物件のオーナーの姿と、何やら大きな影。
不審人物?
「にゃ、後ろにいるのは誰にゃ?!」
「はい。以前、さいぜりやでとった行動を受け、本部が栄養学に詳しい医師をつける必要があると判断しました。その専門家です」
さいぜりや……ああ。
あの、全メニュー制覇。
「栄養学、確かに必要にゃ。多分、野菜が不足していたからにゃ~」
「いえ、野菜云々のレベルではないのですが……」
オーナーの声は、小さすぎて聞こえなかった。
素性が分かったため、ドアを開けた。
そこには、とんでもない存在があった。
それは人と言うにはあまりにも大きすぎた。
大きく。
分厚く。
重く。
そして、豪快すぎた。
それはまさにゴリマッチョだった。
「にゃぁ?! この人、誰なのかにゃ?!」
その人物が、低い声で名乗った。
「私の名前は、大森剛平よ。万果は愛称。マンゴーと呼んでもいいわよ」
絶対に、マンゴーではない。
「ど、ドリアンにゃ!!」
オーナーが、崩れ落ちる。
ゴリマッチョは、少しだけ傷ついたような表情を見せた。
「ど、ドリアン……せめて、パッションフルーツ……」
「ドリアン以外の例えが、思いつかないにゃ!!」
オーナーが、激しく痙攣を起こしている。
大丈夫なのだろうか?
「せ、せめて万果と呼んでほしいわ」
「ドリアン以外には、ゴリマッチョしか思いつかないにゃ!!」
オーナーの、動きが止まる。
本当に、心配になってきた。
「ご、ゴリマッチョ……まあ、呼び方は受け入れるわ。確かに見た目は、そうだから」
どうやら、ゴリマッチョで定着して良いようだ。
「ところで、そろそろ夕食だけれども……何を食べるのかしら?」
ゴリマッチョの問いに、私は答えた。
「以前から気になっていた『禁断』に行くにゃ!」
禁断。
それは、ジロー系インスパイアの店の一つ。
圧倒的なボリュームと独自の美味しさで人気を博し、シズオカ各地に店舗を展開している。
幸い、住宅街のすぐ近くにもお店があった。
「いらっしゃいませ! 券売機で、選んでください!」
お店の中には、二枚のポスターが大きく表示され、インパクト抜群であった。
『地球皇帝、未だ倒されたことなし! 君よ、救世主となれ!』
『宇宙皇帝、無敗の頂点! 挑戦者絶滅中!!』
「券売機に、宇宙皇帝がないにゃ! 挑戦するにゃ!」
「お客様、まずは地球皇帝を攻略してから、挑んでください」
ゴリマッチョが、慌てて口を挟んだ。
「少し待て。重量4.5キロと書かれているぞ! 医師として、これは見逃せない!」
どうやら驚きすぎて「素」の口調になってしまっているようだ。
「今日は、目いっぱい食べたい気分にゃ。ちょうどいい感じにゃ! まあ、見ていれば分かるにゃ」
地球皇帝を注文した。
お店の人は慌てて、店長にその旨を伝えに行った。
「すみません。挑戦前に、料金の支払いだけ行っていただけますか? 完食できたら、お返ししますので」
別の店員が告げたため、私は財布から2000円を取り出す。
これで、戦いの準備は整った。
お店の奥から、巨大な「すり鉢」がこちらに運ばれてくる。
その上には、モヤシを中心とした野菜が「えべれすと」のようにそびえたっていた。
「制限時間は、22分となります」
「あ、ちょっと待ってほしいにゃ。金属製のボウルを、貸してほしいにゃ」
金属製のボウルが、用意された。
さあ、勝負の時だ。
「それでは……始め!」
まず、野菜を思いっきりボウルの方に移動させる。
そして、露出した麺の一部を野菜の上に乗せ、少しでも温度を低くする。
猫舌の私にとって、熱さは敵だ。
「まずは、野菜から攻めるにゃ」
ボウルに移動した野菜の山を、崩していく。
その合間に、少しずつ麺をボウルの方に移動させ、温度を下げていく。
麺が減れば減るほど、すり鉢の麺やスープの温度も下がるため、これが最適解。
「そろそろ、ボウル内の麺もいい頃合いにゃ」
予想通り、ある程度温度が下がっている。
これならば、口に運んでも大丈夫そうだ。
一気に口の中に入れ、少しだけ咀嚼して飲み込んでいく。
「おいおい、マジかよ……」
「これは、もしかしたらもしかするぞ!」
周りの雑音は、一切カット。
とにかく食べることに集中する。
ボウルに移した麺と野菜は、全て食べきった。
少しだけすり鉢のスープを口にし、飲める温度になっていることを確認する。
今回のルールでは、汁まで完全に飲み干すことが求められるのだ。
「汁を、ボウルに移して……そして、まずはそちらからにゃ!」
金属のボウルは、熱伝導性が良い。
温度を下げる上で、もっとも適切な判断であろう。
ボウルのスープを飲み干し、すり鉢に移る。
「これで、ラストにゃ!」
すり鉢に入ったスープ、野菜の残り、麺などを一気に口に入れる。
完食。
「タイムは……18分50秒。挑戦成功です!」
周りから、大歓声が上がる。
22分に対し、この時間。
少し冷めるのを待ちすぎたようだ。
「みかん、悪いけれどもこれに乗ってくれる?」
ゴリマッチョが、体脂肪計を取り出す。
どこから取り出したのかは分からないが……とりあえず、靴下を脱いで乗ってみる。
「直近の測定値と比べて、体重増加は0.8キロ……そんな」
ゴリマッチョが、崩れ落ちる。
その肩を叩いて、私は告げる。
「ギアスだから、仕方がないにゃ!」
観察者所見
ゴリマッチョ……もとい、大森医師からの報告は、にわかに信じられるものではなかった。
4.5キロを完食したにもかかわらず、体重増加は0.8キロ。
ヒーローという存在の理不尽さを、実感している。
いや、それ以前に女子高校生が、4.5キロの食べ物を完食できる時点でおかしい。
どこからツッコめばよいのか、こちらでも混乱している。
とりあえず、大森医師には「頑張れ」としか言いようがない。
なお、オーナーは笑いすぎていただけだったと判明。
腹筋の強化を、推奨する。




