第一章 第二話 NGコンビ ラムネ&ゼリー
こっそり、こちらを更新です。
学生の本分は、当然勉強すること。
それはこの「ヒーロー科」においても、変わらない事実だにゃ。
「う~ん……ダメだ! どうしても分からない!」
苦悶の声を上げたのは、結希。
戦闘中の判断力はともかく、普段の成績はあまり良くない。
物事を体系立てて覚えるのが、あまり得意ではないのかも、と考えている。
「俺も同感! これ、なんでこうなるんだ?!」
叫んで、テキストを放り投げたのは明。
トウキョウで知り合った、大切な仲間の一人。
ただ、勉強は結希同様、苦手としている。
「って、いい加減起きろ!!」
「にゃあ?!」
耳――頭の上につけているネコミミデバイスではなく、実際の耳を思いっきり引っ張られる。
せっかくの睡眠時間を、無駄にされて少し不機嫌になる。
「まだ試験まで、時間があるにゃ。もう少し寝かせてほしいにゃ」
「授業中も眠っているだろうが! いくら『睡眠学習』があるからといっても、限度があるぞ!」
明、うるさい。
確かに私には『睡眠学習』という、強力なギフトが与えられている。
しかし、疲労回復のための睡眠中は、学習機能を停止させている。
「眠らないと、夜がキツイにゃ。研究の能率が下がるにゃ」
「とはいえ、さすがにそろそろ起きたほうがいいですよ。時計、見たらどうですか?」
新たに声をかけたのは、漣。
明と同じく、トウキョウで知り合った大切な仲間の一人。
そして、明よりもずっと冷静、かつ「怖い」人だ。
「うにゃ……にゃ?!」
試験開始、10分前。
これは、予想外である。
「アラームの設定を……にゃあ……ミスしていたにゃ」
スマートフォンのアラームは、もう一時間後に設定されていた。
少し寝ぼけていたため、時間の指定を誤ってしまったようである。
「目を覚ますには……これにゃ!!」
私は机の引き出しから、保冷バッグを取り出した。
中に入っているのは、ゼリー状の食品。
ブドウ糖入りで、試験前にはもってこいの代物だ。
「これを開けて……一気、にゃ!」
まずは一つ。
そして、もう一つ。
「おい! それって、普通は一つだけ使うものだろう?!」
明が叫ぶ。
だが、そんなことに構っている余裕はない。
「なるほど。みかんは分かっているな」
今度は、別の声が飛んできた。
青髪の少年、久郎だ。
彼は、私と同じゼリー食品を口に咥えていた。
「当然にゃ! ブドウ糖は、脳のエネルギー源にゃ!」
「全く同感だ。だが、ゼリー状の食品だけでは即効性が弱い」
久郎が懐から取り出したのは……大粒ラムネの袋。
封を切り、中身を手のひらに乗せて……。
「ええ?! 一気に食べるのですか?!」
少し離れたところから、悲鳴が聞こえる。
悲鳴を上げたのは、奏という少女。
最近このクラスに編入されてきたため、まだ距離感をつかみかねているようだ。
「これが一番、効率的だ」
「分かっているにゃ! 効率は最大の味方にゃ!」
私も、ラムネの袋から中身をまとめて、口の中に流し込む。
「うっぷ……見ているだけで、気持ち悪くなりそう……」
結希が、顔を背けている。
漣は、呆れたような表情を見せている。
明もまた、完全に言葉を失っていた。
「試験準備完了。最後に口内の糖分を少しでも減らし、虫歯リスクを軽減する」
「それは大事にゃ。虫歯になったら、美味しいものが食べられなくなるにゃ」
久郎が取り出したのは、緑茶のボトル。
私が取り出したのは、キシリトールグミ。
「なるほど。グミならば、ガムと違って噛み続ける必要がなく、そのまま飲みこめる……緊急時にはそちらが有効だな」
「普段使うには、緑茶が良さそうにゃ。カテキンには抗菌作用もあるからにゃ」
それぞれ、試験前の準備を完了させる。
「はい、それでは試験をはじめ……なに、この状況?」
舞先生が、私たちに話しかける。
「試験準備だ」
「試験対策にゃ」
異議の声は、上がらなかった。
観察者所見
行動を分析した結果、久郎はみかんと極めて近い考え方の持ち主であると判明した。
合理性を重視する傾向があり、みかんと同じ方向へ、ためらいなく踏み込む可能性が高い。
この二人の組み合わせは、極めて危険であると判断した。
なお、試験では両者ともに好成績を残していた。
実際に試したところ、摂取後は反応速度と計算処理速度が一時的に上昇した。
これは、みかんが開発した脳波検出デバイスによる測定値と、解答速度及び正答率を照合した結果である。
したがって、一定の信頼性があると判断する。
長期的な過剰摂取によるリスクはあるものの、試験直前の応急手段としては一定の効果が認められる。
だが、一袋分のラムネを一度に口に入れるのは、いかがなものかと考える。
特にみかんは、ハムスターのような状態になっており、見るに堪えない。
指摘するべきか、指示を仰ぐ。




