第一章 第一話 猫神様、さいぜりやに立つ
本編「ブランシュ&ノワール」の、第四章終了後がスタートラインです。
私の名前は、みかんにゃ。
語尾に「にゃ」をつけるのは、口癖だからあまり気にしないでほしいにゃ。
「お金がいっぱい、どうするかにゃ……そうにゃ!」
昔からの夢。
叶えるならば、今しかない。
向かったのは「さいぜりや」。
イタリア料理を中心とした、ファミリーレストラン。
「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」
「そうにゃ。でも、いっぱい食べるから広いテーブルの席がいいにゃ」
幸い、4人掛けのテーブルが空いていた。
店員に案内されて、席に座る。
楽しすぎて、頭の上のネコミミと、しっぽがピクピク動いている。
このネコミミと、しっぽは自分の作品。
より「ネコっぽく」なるための道具。
「これを、全部スマートフォンに打ち込むのは無理にゃ……呼び出しボタンにゃ!」
卓上にある、ボタンを押す。
店員が来て、注文を聞く態勢になった。
「このメニューにあるもの、全部一つずつお願いするにゃ!」
店員が、固まる。
「あの……全部、ですか?」
「そうにゃ。まずはサラダからお願いするにゃ。猫舌だから、熱々のものは少し冷まして食べるにゃ。だから早めに持ってきてもらえると、ありがたいにゃ」
ざわめきが広がる。
店員が、再度確認してきた。
それに対し、私は頷く。
「分かりました……店長、大量注文です!」
店員が来て、二人掛けのテーブルを近づける。
6人用のテーブルとなり、食べる準備は万端だ。
「お待たせしました。キャロットラペ、小エビのサラダ、チキンのサラダ、わかめのサラダです」
ベジファーストの効果については、色々言われている。
とはいえ、一番早く提供できるメニューがサラダ系なので、問題ない。
「いただきます、にゃ!」
野菜たっぷり。
しっかり食物繊維を摂取してから、次に移行する。
「えっ、もう食べ終わったのですか?!」
店員が、次の料理を運んでくる。
私の食べるスピードは、速い。
既にテーブルの上にあったサラダは、姿を消していた。
「そうにゃ。次は……スープ系にゃ。ついでに温サラダとソテーも行くにゃ!」
温サラダなどは、少し冷ましてから。
その間に、ドリンクバーで飲み物を持ってくる。
何度も席を立つのは面倒なので、グラス3つを用意することにした。
その後も、食べ続ける。
冷たいスープがあったのは、実にありがたい。
そして、メインディッシュがやってきた。
「お、お待たせしました。ハンバーグはこちら、ピザはこちら、パスタはこちらになります」
テーブルは、更に2つ追加で用意された。
その上に並ぶ、無数のハンバーグやピザ、パスタの山。
トッピングの粉チーズや、温泉卵も提供された。
「うにゃあ~。幸せにゃ~!」
冷めたものから、次々と食べていく。
客の一部は、スマートフォンで写真を撮影しているようであった。
「すみません。店内の撮影は、ご遠慮ください」
「別に、みかんはいいにゃ。でも、お店のルールは守るにゃ!」
ムール貝、エスカルゴ。
今まで一度も食べたことがないものなので、テンションが上がる。
「すみません。お皿、通ります!」
店員は、少しバタバタしていた。
「お店の人に、迷惑をかけちゃダメにゃ」
何とか通路の部分は、確保されることになったようだ。
提供ペースが上がるのは、ありがたい。
「あ、今日はグランドメニューとは別に、若鶏の限定メニューがあるにゃ! すみません、この二品追加でお願いするにゃ!」
「はい、分かりました!」
野菜たっぷりのものと、チーズが乗った鶏肉。
どちらも美味しく、フォッカチオとの相性も抜群。
ライスも大中小と揃っているので、冷めやすい小から順に食べていく。
「デザート、お願いするにゃ!」
無数のデザートが、テーブルの上に並ぶ。
でも、そうじゃない。
「ちゃんと、メニューの全てを提供するにゃ。セットと単品、どちらもにゃ!」
今日一番の、ざわめきが広がった。
慌てて厨房に向かう、店員。
それを横目に、デザートを食べていく。
「お待たせしました。単品の分になります」
「待っていたにゃ! これで、フィニッシュにゃ!」
提供された、全てを食べきった。
最後にウーロン茶を一杯飲んで、会計に移る。
「金額は……2万5,550円です」
「3万円、行かなかったにゃ! 驚異のコストパフォーマンスにゃ!」
財布の中には、かなりのお金が入っている。
1万円札を3枚使って、会計を終えて店を後にしようとしたときに、ふと思い出したことを言い添える。
「あ、間違い探しの11個目、丸をつけておいたにゃ」
「えっ?!」
テーブル上の、間違い探しを確認する店員。
それを横目に、私は店を出ることにした。
なぜか周りの人たちが拍手していたけれども……何かイベントがあったのだろうか?
観察者所見
摂取カロリーは、少なく見積もっても成人男性10人分以上と推定。
観察者のうち、観察中に席を立ち、戻れなかった者が一名存在。
物理的に考えて、摂取不可能だと思われる量であるが、本人の表情に苦しさは一切見られない。
明らかな異常事態であり、医師などによる継続的な経過観察を必要とする。
なお、11個目の間違いは本部へ報告され、ホームページに掲載されることとなった。
ミリ単位の間違いであるが、みかんはそれを見逃さなかった。
極めて高い観察力を有することを、再確認する。
また、店外にて「お酒を飲めなかったのが、残念にゃ。大人になったら、もう一度挑戦するにゃ」との発言を確認。
これ以上どこに入るのか、理解不能。
なぜ「猫神様」と呼ばれているかは、本編の第四章でご確認ください。




