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第八話 去れし遠き日の夢

「あいつ、とんでもないものを屋敷に隠しやがったな」

「一瞬にして回復したようですね、宝寿(ほうじゅ)様」

「なんと羨ましい。我が家にも一匹くらい欲しいんだな、こりゃ」


 颯爽とした赤髪の男が、そう言った。

 胸元には「契(ちぎり)の印(しるし)」の端がちらつき、その傍らにはひとりの従者が跪いて控えていた。


「呪いの元を辿りに来たんだけど……ありゃ、今日はお取り込み中か。また出直すか」


 赤髪の男は屋敷の中を一瞥(いちべつ)すると、そう言って踵を返した。


 

 ◇◇◇


 夜。

 ぐっすりと眠ってしまった陸離の隣には、見守るようにその寝顔をじっと見つめる槐之介が座っていた。


 やがて、うとうととした槐之介もまた、去れし遠き日の夢を見ていた。


 木の葉で指を切った、あの人。

 傷口から鮮やかな赤い血が流れ出したとき、槐之介はそこにそっと自分の唇を重ねた。


 本当は、愛しいあの人の唇が欲しかった。

 けれど、笠から垂れ下がった黒い帳(とばり)のその先を、決して許してくれることはなかった。


 あのとき口にした、あの人の血の味が、ひどく懐かしかった。


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