↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月下老人、赤き糸を結びて  作者: 南雲 せせ
手がかり探索編
PR
15/19

第十五話 最初の手がかり

 宝寿が来た。


 長らく足が遠のいていた百々家へ、今日は従者まで連れて、堂々と客間に入り込んでいる。

 

 槐之介と仲直りできたことが、よほど嬉しいらしい。頬に浮かぶ笑みをどうにか堪えながらも、隠しきれない浮き立つ気持ちをそのままに、客間であぐらをかいて寛いでいた。


「槐之介、今日は特別に、この手掛かりを見せてやろうじゃねぇか」


 どこか得意げな顔でそう言う宝寿は、まるで自慢の宝物を見せびらかす子供のようだった。


 こちらから返せるような手掛かりなどない。ましてや、等価交換などできるはずもない。それでも、宝寿はそんなことを少しも気にしていないようだった。


 ただ、自分が持っているものを、惜しげもなく差し出してくれる。


  ――案外、優しいやつなのかもしれない。

 そんな宝寿の姿が、陸離にはどこか微笑ましく思えた。


 すると宝寿は、後ろに控えていた従者から木の箱を受け取った。


「これが、俺の掴んだ手掛かりだ」


 そう言って、開けてみろと言わんばかりに、宝寿は箱を片手で槐之介の目の前へ差し出した。


 陸離と家の者たちが固唾を呑んで見守る中、槐之介は拍子抜けするほどあっさりと箱を受け取った。そして、まるでそこらの菓子でも開けるように、何のためらいもなく蓋を開けた。

 

 ――箱の中には、羽根が二本入っていた。


 長いものが一本と、やや短いものが一本。


 長い羽根は、黒みを帯びた濃い茶褐色。

 短い羽根には、淡い褐色と白っぽい色が交互に入り、薄い縞模様を描いていた。


「これが、あの日、我が屋敷内に落ちていたものだ。忍者並みに顔を隠してたから、よくわかんなかったけどな。そのあまりの速さと力に圧倒されながらも、我が神槍(しんそう)——鳴神(なるかみ)で一突きしたときに、こいつをもぎ取ったのさ」


「茶色い羽根……なんかの鳥ですか?」


 陸離は羽根を手にしてじっくり観察しながら尋ねた。


「鳥の妖怪で、そこまで強いやつなど俺は知らんな。だが、間違いなくこれは鳥の羽だ」


(見ればわかるわ!)


 あまりにも大した情報が得られず、陸離は心の中で盛大に突っ込みを入れながら、再び考え始めた。

 

「茶色い鳥……小さいもので雀、雲雀、大きいもので鷲(わし)、鷹(たか)、駝鳥(ダチョウ)……いっぱいいますね。せめて何の鳥かわかれば、もう少し探しやすいんだけど」


「……ダチョウ、ってなに?」


 宝寿は聞き慣れぬ言葉に、きょとんと首を傾げた。


(そうだ、ここはほぼ平安時代みたいなもんだから、日本にまだダチョウはいないのか……)


「あ、いや……なんでもないです」


 陸離はそっと目を逸らした。


「鳥のことなら、姫鶴(ひめつる)様に聞けば、きっとすぐわかりますわ」


 瑞穂が、何か思い当たったように言った。


 それを聞いた槐之介と宝寿は、揃ってひどく嫌そうな顔をした。


「姫鶴様は……どなたですか?」


「五人の大妖怪の中で、ただ一人の女性にございます。鶴の妖であられますもの、鳥のことならお詳しいはずですわ」


「なるほど!鳥のことは鳥に聞けばいいってことね!にしても、お二人とも嫌な顔ですね……」


「お二方とも、姫鶴様にはよく懲らしめられておりましたので……」


 瑞穂は、どこか申し訳なさそうに苦笑した。


「結局、あの女に聞かなきゃわかんねぇのかよ」


 宝寿は、がっくりと肩を落とした。

 

 そして、天井を仰ぎながら、これ見よがしに大きなため息をついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。