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鱗の恋――ある蛇の話  作者: Kentarou Tou / Kentarou Theater


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第四話「草の中へ」



その蛇が、草の中へ入っていった。



見ていた。


草の間に、模様が消えていくのを、見ていた。



追った。


草の間を、追った。



草は湿っていた。


朝の露が残っていた。


体に当たった。


冷たかった。



しかし、その蛇が先にいた。


先を行っていた。



追いかけた。


草の間を縫って、追いかけた。



その蛇が止まった。


草の中の、開けた場所に止まった。


小さな空間だった。


草に囲まれた、小さな空間だった。



そこへ入った。


二匹で、その場所にいた。



上から、空が見えた。


草の間から、青い空が見えた。



その蛇が、こちらを向いた。


黒い目が、こちらを見た。



舌を出した。


その蛇の匂いを読んだ。


近かった。


匂いが濃かった。



その蛇も、舌を出した。



二匹で、草の中の小さな空間にいた。


空が見えた。


風が来た。


草が揺れた。


しかし、二匹のいる場所は、揺れなかった。



(第四話 了)

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