第8話 手加減-ラクシティ-
カイトを買ってから約半年が経った。僕たちの教育の賜物か、剣技なら負けるんじゃないかと思うくらい強くなった。さすがは貴族というべきか敷地内に訓練場が存在し、最近は3人でそこに日中ずっと籠っている
「お兄ちゃん、なんかカイト君強くなりすぎじゃない?初めて攻撃当てられたんだけど」
なっ!?僕ですらまだニューには剣を当てたことないのに。先を越された・・・
「カイト!嘘だろ・・・」
「ニュー様とネオ様のおかげでここまで強くなれました」
「よし、魔法戦だ。イデアルは使わないでやる」
「別に使ってくださってもよいのですが・・・」
教え始めて1週間でカイトはイデアルが使えるようになっている。でも、イデアルを使えばさすがに圧勝するのでハンデとして使わずに戦う
「行くぞ!『レインバレット』」
詠唱に意味はないのだが、したほうが魔法が撃ちやすいので一応詠唱している。レインバレットとは弾丸上にした火の弾、氷の弾、土の弾を連射する魔法である。ついでに半径10メートル以内ならどこからでも発射可能であり、10メートル以内に入れば360度全方向逃げ場のない魔法である
「いきなり飛ばしすぎです!『フルシールド』」
全方向を護るフルシールドを貼られる
「その程度で防げると思うなよ」
シールドの内側から魔法を発射する
「ちょっ、それは流石に強すぎますって。『ブースト』理想化」
カイトは一瞬光った後、羽が生え空に浮かぶ。身体強化魔法のブーストを使ったとはいえ、かなりの数のバレットが命中したようでかなりダメージが蓄積しているように見える
「距離を取られたか」
一応連射は続けるが、射程圏外のカイトには全て防がれている
「では次はこちらから、『ファイアバード』『ウォーターバード』」
火と水でできた鳥たちがこちらに飛んでくる。自動なのか手動なのかは分からないが、しっかりとレインバレットを避けながらこっちに向かってきている
「『ウィンドブラスト』!」
直線状に高威力の風を起こすウィンドブラストで向かってくる鳥たちを消し飛ばそうとする。しかし、消滅することなく突っ込んできた鳥たちをかわす。・・・危ない。鳥たちが炎の弾と水の弾を撃ってきたぞ
「外しましたか」
「危ねぇな。これは鳥たちを消すよりも本体を先に潰すべきか。『ウィンドブラスト』」
カイトを狙って放つが、回避される。不可視の攻撃のはずなんだがな、どうして避けられるんだ。レインバレットはシールドに防がれている
「このままではじり貧ですか・・・『ライトバード』」
とんでもない速度の鳥が飛んでくる。さすがに追尾性能は弱いみたいだ。それにライトバードを出したせいか、カイトはシールドを解除している
「3羽が限界のようだな。まだまだ行くぞ!『ウィンドブラストレイン』」
レインバレットに数は劣るが、大量のウィンドブラストを撃ち物量で押し込む
「理想化、ストーップ!お兄ちゃんやりすぎ。カイト君死んじゃう」
途中にニューが割込み、僕の魔法をオーラで打ち消す
「私の負けです」
「さすがにギリギリで耐えれるかなって思ったんだ。すまん」
「はぁー、お兄ちゃん今日の夜お説教ね」
「はぃ」
ニューのお説教怖いし長いんだよなぁ。これで十数回目だ
「カイト君。はい」
カイトがニューのオーラに包まれる。すると傷がみるみる回復していく
「いつ見ても仕組みが分からないんだよな」
「なんかいつの間にか回復機能が付いていたんだよね。一度も被弾したことがないのに」
「ありがとうございます、ニュー様。もう痛みはなくなりました」
「傷は回復しても、疲れはそんなに取れないから早く休んでね」
「はい」
と毎回言っているが疲れも多少は取れる盛りすぎ性能である
「じゃあ部屋に帰ろうか」
夕食を食べ、風呂に入り、もう寝るだけとなった時、ニューがベッドに座りながら正座するように催促した
「なんだ、ニュー」
「お兄ちゃん、まさかだけど、忘れたなんて言わせないよ」
「忘れた?・・・あっ」
「またカイト君を殺しかけたね。これで何度目?全力でやったら殺しそうになるにきまっているじゃん」
「いや今日は嫉妬があるからいつもより力が入ってしまったというか、なんというか」
「言い訳しない!お兄ちゃんは手加減を練習すべき」
「はい」
「って毎回言っているけど一向に身に着ける気配がないので私、練習方法を考えました」
「そんな都合のいいものがあるのか」
「お兄ちゃん、電話のイメージってできる?」
「もちろんできるが」
これでも地球で一般男性として生活していたのだ。携帯くらいは使ったことがあるにきまっている
「私と心の中で会話するイメージで魔法を詠唱付きで使って」
「うん?分かった『コール』」
電話みたいな魔法だからコールという安直な名前だが言われた通りに魔法を使う
「『コール』」
すかさずニューも詠唱する
(お兄ちゃん聞こえる?)
「え?どこから声が」
(コールだよ。これは頭の中で会話ができる魔法。イメージを完全に共有しないといけないから難しいけどね)
(あ、ああ、聞こえるか。すごい魔法だな)
(で練習方法なんだけど、お兄ちゃんには24時間365日ずっとこの魔法を使い続けてもらいます)
「え?」
(別に会話をし続けようって意味じゃないよ。この魔法を使い続けることによって本来の力が出せなくなるでしょ?)
(そうだろうな)
(本気の1段階下の実力を練習することによって、手加減を学ぶっていう練習法。どう?)
(本当にそんなので学べるのか)
(うーん、やってみると分かると思うけど、たぶんつらいよ・・・私も)
(ニューはいいのか)
(お兄ちゃんのためだからね。私、頑張る)
(分かった。妹がそこまで考えているならやらないといけないな)
「約束。一応、魔法を解除したときの罰も決めておこうか」
「罰?」
「じゃあ、一回につき一晩、私にずっと膝枕ね」
「・・・きつすぎないか」
「これくらいの方が約束守るモチベーションになるって!」
「そんなものなのか」
「じゃあ約束!」
「ああ約束」
そうして、手加減の練習になるか怪しい特訓が始まった
[ちょっとだけ補足]この世界の魔法はイメージなため、同じ詠唱でも全く効果が違う・見た目が違うことはざらにある。逆に違う詠唱なのに同じ効果を持つこともよくある。そのため魔法を使う際には想像力と集中力が必要になるが、魔法を撃つと集中力が落ちるため連発することは難しいとされている
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