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傍観人如月哲也  作者: 双鶴


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5/11

第5話 開始1時間、社会って、誰のこと?

模擬裁判、開始から1時間。

俺の指はもはや“議事録界のF1マシン”と化していた。

でも、議論のほうが速い。

追いつけない。誰か、俺にピットインをくれ。


---


「社会が許さないって言うけど、社会って誰なんですか?」


傍聴人Aが、またやった。

この人、議論の“急カーブ”をノーブレーキで突っ込んでくる。


検察官・佐久間さんが、ややムッとしながら答える。


「社会とは、我々全体の価値観の集合体です。ルールを守ることで秩序が保たれるんです」


弁護士・水谷さんが、口角を上げる。


「でも、その“全体”って、誰が代表してるんですか?

 この中に“社会代表”って人、います?」


俺は議事録に書いた。

《社会代表、行方不明。記録係、探偵になりたくなる》


---


陪審員の一人、元警官の大野さん(60代)が口を開く。


「私は現場で、いろんな“社会”を見てきました。

 でもね、ルールを守る人が正しいとは限らないんですよ。

 “正しさ”って、時代でも場所でも変わるんです」


俺は議事録に書いた。

《元警官、社会の相対性を語る。記録係、頭が追いつかない》


---


傍聴人Aが、静かに言った。


「タカシくんがやったことは、確かに“ルール違反”かもしれない。

 でも、彼が“社会”から見捨てられてたとしたら?

 その社会に、彼を裁く資格って、あるんですかね」


会場が、また静まった。

裁判長が、深く息を吐いた。


「…模擬裁判とはいえ、これは重い問いですね」


---


俺は議事録に書いた。

《傍観人、社会に問いを投げる。記録係、思考がフリーズ》


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