第4話 開始45分、罰より希望
模擬裁判、開始から45分。
俺のタイピング速度は、もはや新幹線。
議論のスピードに追いつくため、指が勝手に動いている。
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「更生って、誰のためにあるんですか?」
傍聴人Aが、またやった。
この人、絶対に“黙る”という概念を知らない。
検察官・佐久間さんが、眉間にしわを寄せる。
「更生は、社会のためです。再犯を防ぐために、教育が必要なんです」
弁護士・水谷さんが、すかさず乗っかる。
「でもそれって、“社会の都合”じゃないですか?
本人が変わりたいと思ってなかったら、意味ないですよね?」
俺は議事録に書いた。
《更生、社会の都合か本人の意思か。記録係、哲学の沼に沈む》
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陪審員の一人、大学生のミナミちゃん(19)が手を挙げた。
「私、思うんですけど…タカシくん、誰かに“信じてもらった”ことって、あったのかなって」
会場が静まる。
俺も思わず、タイピングの手を止めた。
「私、昔ちょっとグレてたんですけど…先生が“信じてるよ”って言ってくれて、変われたんです。
だから、罰よりも、信じてくれる人が必要なんじゃないかなって」
俺は議事録に書いた。
《陪審員、涙腺を刺激。記録係、心がちょっと温まる》
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傍聴人Aが、珍しく静かにうなずいた。
「罰って、“過去を裁く”けど、希望って“未来を信じる”ことですよね。
タカシくんに必要なのは、どっちなんでしょうね」
裁判長が、ふっと目を伏せた。
「…模擬裁判とはいえ、考えさせられますね」
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俺は議事録に書いた。
《傍観人、希望を語る。記録係、コーヒーを飲むタイミングを失う》




