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傍観人如月哲也  作者: 双鶴


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3/11

第3話 開始30分、法律って、そんなにエライの?

模擬裁判、開始から30分。

議論は「更生とは何か」から、なぜか「法律って何?」に進化した。


傍聴人Aが言った。


「ていうか、“万引きはダメ”って、誰が決めたんですか?

 法律? でも法律って、罰するだけで、ダメって言ってないですよね?」


俺は議事録に書いた。

《傍聴人、法律にケンカを売る。記録係、タイピングが追いつかない》


裁判長が少しだけ笑った。

「確かに、“ダメ”とは書いてませんね。“罰する”とは書いてありますが」


検察官・佐久間さんが反論。


「でも、罰するってことは、社会が“ダメ”って言ってるってことです」


弁護士・水谷さんがニヤリ。


「じゃあ、社会が“ダメ”って言ってることを、個人が“いい”って思ったらどうなるんですか?」


俺は議事録に書いた。

《議論、倫理と法律の境界線へ。記録係、哲学の授業を受けている気分》


---


傍聴人Aが静かに言った。


「タカシくんは、悪いことをしたんじゃなくて、“社会にとって都合が悪いこと”をしただけかもしれない。

 でもそれって、本人の人生を否定する理由になりますか?」


俺は思った。

この人、裁判じゃなくて人生相談所に行くべきだ。


でも、議論は確かに深まった。

“罰”とは何か。“悪”とは何か。

そして、“誰がそれを決めるのか”。


俺は議事録に書いた。

《傍聴人、議論の深海へ。記録係、酸素が足りない》

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