第2話 開始15分、議論は、万引きから宇宙へと
模擬裁判、開始から15分。
俺はすでに議事録のフォルダ名を「カオス裁判」に変更していた。
被告タカシの万引き事件をめぐって、検察官・佐久間さんが語る。
「万引きは犯罪です。たとえ未成年でも、社会的責任はあるべきです」
うん、正論。
でもその直後、弁護士・水谷さんがニヤリと切り返す。
「でもねぇ、佐久間さん。人って、空腹でパン盗んだら犯罪ですか?
それとも、社会がパンを与えなかった罪ですか?」
俺は議事録に書いた。
《弁護士、パンで社会を殴る。議論、哲学へ突入》
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そして、傍聴人Aがまた口を開く。
「ていうか、万引きって“文化”じゃないですか?
昔の時代劇とか、盗人ってカッコよかったし」
裁判長が「文化!?」と小声でつぶやいたのを、俺は聞き逃さなかった。
佐久間さんは目を閉じて深呼吸。
水谷さんは爆笑。
「文化って言い出したら、宇宙人が万引きしても許されそうですね」
俺は議事録に書いた。
《議論、宇宙へ飛ぶ。記録係、ついていけない》
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陪審員の一人、主婦の田中さんが真面目に言う。
「でも、うちの子も昔ガチャガチャの景品を勝手に持って帰って…
それって、親の責任ですよね?」
その瞬間、議論が“家庭教育”にシフト。
万引きはどこへ行った。
俺は議事録に書いた。
《万引き、行方不明。議論、家庭へ帰る》
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そして、傍聴人Aがまた爆弾を投下。
「ていうか、タカシくんって、悪いことしたって思ってないんじゃないですか?
“悪い”って誰が決めるんですか?」
俺は思った。
この人、裁判じゃなくて哲学科に行くべきだ。
でも、議論は確かに動いた。
“罪”とは何か、“罰”とは何か。
そして、“誰がそれを決めるのか”。
俺は議事録に書いた。
《傍聴人、議論の中心に。記録係、コーヒーを飲む暇なし》




