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傍観人如月哲也  作者: 双鶴


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2/11

第2話 開始15分、議論は、万引きから宇宙へと

模擬裁判、開始から15分。

俺はすでに議事録のフォルダ名を「カオス裁判」に変更していた。


被告タカシの万引き事件をめぐって、検察官・佐久間さんが語る。


「万引きは犯罪です。たとえ未成年でも、社会的責任はあるべきです」


うん、正論。

でもその直後、弁護士・水谷さんがニヤリと切り返す。


「でもねぇ、佐久間さん。人って、空腹でパン盗んだら犯罪ですか?

 それとも、社会がパンを与えなかった罪ですか?」


俺は議事録に書いた。

《弁護士、パンで社会を殴る。議論、哲学へ突入》


---


そして、傍聴人Aがまた口を開く。


「ていうか、万引きって“文化”じゃないですか?

 昔の時代劇とか、盗人ってカッコよかったし」


裁判長が「文化!?」と小声でつぶやいたのを、俺は聞き逃さなかった。

佐久間さんは目を閉じて深呼吸。

水谷さんは爆笑。


「文化って言い出したら、宇宙人が万引きしても許されそうですね」


俺は議事録に書いた。

《議論、宇宙へ飛ぶ。記録係、ついていけない》


---


陪審員の一人、主婦の田中さんが真面目に言う。


「でも、うちの子も昔ガチャガチャの景品を勝手に持って帰って…

 それって、親の責任ですよね?」


その瞬間、議論が“家庭教育”にシフト。

万引きはどこへ行った。


俺は議事録に書いた。

《万引き、行方不明。議論、家庭へ帰る》


---


そして、傍聴人Aがまた爆弾を投下。


「ていうか、タカシくんって、悪いことしたって思ってないんじゃないですか?

 “悪い”って誰が決めるんですか?」


俺は思った。

この人、裁判じゃなくて哲学科に行くべきだ。


でも、議論は確かに動いた。

“罪”とは何か、“罰”とは何か。

そして、“誰がそれを決めるのか”。


俺は議事録に書いた。

《傍聴人、議論の中心に。記録係、コーヒーを飲む暇なし》


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