第10話 終了5分前、傍観人が
模擬裁判、終了5分前。
俺の議事録ファイル名は「傍観人、記録完了」に更新された。
でも、まだ書き終わっていない。
最後の一文が、どうしても浮かばない。
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裁判長が、閉廷の言葉を告げる。
「これにて、模擬裁判を終了します。
本日は皆さん、ありがとうございました」
拍手が起こる。
でも、俺の中ではまだ終わっていなかった。
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傍聴人Aが、立ち上がった。
そして、俺の方を見て言った。
「如月さん、あなたの議事録って…誰かの“目線”で残るものですよね。
その目線が、誰かの“記憶”になる。
それって、すごく大事なことだと思います」
俺は思わず聞いた。
「あなた…誰なんですか?」
傍聴人Aは、少し笑って言った。
「僕? ただの“元・記録係”ですよ。
昔、模擬裁判で議事録書いてました。
でも、ある日気づいたんです。
“記録するだけじゃ、何も変わらない”って」
俺は議事録に書いた。
《傍聴人A、元・記録係。記録の先にあるものを見ていた》
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そして、俺は最後の一文を書いた。
「裁くことより、語ること。
傍観することより、見つめること。
記録することより、記憶に残すこと。
それが、俺の模擬裁判だった。」
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模擬裁判は終わった。
でも、俺の中では始まったばかりだった。
記録係という傍観人だった俺が、初めて“記録を超えた”日。




