スタートダッシュ2
あっという間に終わってしまったバトルに、意気消沈しながらも陽介はもう一度会えないかとC1を周回していた。
・陽介
さっきのR33が視界から消えても、陽介は下りる気はしなかった。もう一度会えるかもしれない。根拠のない希望がずっと頭をよぎっていたからだ。だがしかし、そんな時間ももうすぐ終わりを迎える。陽介は諦めて帰ることにした。その前に一度、大黒のパーキングで休んでからにしようと思い再びエンジンをふかす。大黒に着いた頃にはもう少し日が昇り始めていた。ここからの朝日は美しいと聞いたことがあったが、気軽に見ていられるほどの気力は陽介にはもう無かった。時間的にもガランとしていて開放感のある大黒パーキングを車内から見渡していると、目の前に映った光景に陽介は愕然とした。
R33……カラーリングも同じ。間違いなくあの33だ。すると奴は俺に気づいたかのように一つ間をあけて車を止めた。ついさっきボコられた相手。その顔が一体どんなものだろうと頭にしっかりと焼き付けてやろう。陽介が真剣な眼差しで見ていると、33のドアが開いた。緊張の中出てきたのは!……ん?全然想像と違うぞ?。年上かと思ったがそうでもない。体着きからして同い年だろう。そして肝心の顔は……
「は。光圓寺!?。」
その姿には見覚えがあった。いや、覚えがなければ大問題だ。なにせこいつは席が隣の同級生、丘田 光圓寺だ。
「おはようございます、澤田さん。僕がどうかしましたか?」
何を言われるかと思えばこうだ。さっきまでのことはまるで無かったかのような振る舞いをする光圓寺に陽介は、少々キレ気味に不満げな眼差しを送った。
「どうもクソもねーよ。さっき澄ました顔で俺を抜いて行ったのお前だろ。その33を見ればわかるよ。」
すると光圓寺はめんどくさそうな感じで
「いったい何の話ですか。それよりもなんであなたがここに?」
そんなしょーもない返答をしてきた。寛容な陽介も流石に怒り始めて
「そんなの走りに来たに決まってるだろ!この時代にここでそれを言うのは失礼なんだからな。覚えておけ、この時代遅れ!!」
そう言ってしまってから気づく。光圓寺も首都高にいるということは俺と同じ理由だととってもおかしくないはずだと。それにさっきの走りだと相当腕の立つものだということは確かなのに、まるで素人を叱っているようではないか。と反省し
「すまん。ついカッとなってしまって。」
そう言って頭を下げると光圓寺はびっくりしたよう(実際びっくりしているのだろう)に、俺と何かを交互に見ている。そして閉じていた口を開いた。
「そのスープラは君のか?そうならどこで手に入れたか教えてくれ。」
その眼は珍しく輝いていた。
・光圓寺
僕は内心とてもびっくりしていた。あのスープラのドライバーがまさか澤田君だったなんて。だからこそ聞きたかったのだ。どうしてこんなチューンにしてあるのか。チューナーとして、何か意図があるのではないかと思っていたのだ。だからこそ聞いてみた。教えてほしかった。だが、回答は思いもよらぬものだった。
「すまん。こいつ廃車場で買った時から何もいじってないんだ。てか全然わからないんだ、そう言うたぐいの。」
あれだけキレといてこう来たか。今度は僕が怒りMAXだよ。光圓寺は怒りのままこう放った。
「そんなんで何がハイウェイレーサーですか。なるならちゃんとそう言う面のことを覚えて初めてなれるものなんです。最近は適当にノリで入ってくるニワカ雰囲気組がいるようですが、そんなもの塵も積もればなんとかの塵にすら満たない存在です。実際この33はマシンチューン以外されておらずひどい状態でした。ほんの一週間でテストドライブまでこぎつけたの自体が奇跡です。」
ここで一息置いてから再度口を開く。
「いいですか。あなたがもし本当のハイウェイレーサーになりたいと望むならば、僕はあなたをお手伝しようと思います。実際そのスープラにも興味がありますし。」
それは、僕が澤田君に可能性を感じたということを遠巻きに言った瞬間だった。
・陽介
ん。今なんて言った?お手伝い……。まさか!さすがにそれは。
「じょ、冗談だよなぁ。」
心の声がおもいっきり出てしまった。
「冗談?僕は別にそんな軽い意味で言った覚えはないですが……。」
本気だったー。ある意味初対面な奴に言う言葉じゃねぇ。
「だけどさ。お前に迷惑かけちまうし……」
「理由はさっき説明した通りです。もしハイウェイレーサーになるというのなら、僕の後についてきてください。」
俺の話を遮ると、光圓寺は33に再び乗った。不思議とついて行きたくなった。何かが読んでいるように感じたからだ。すっかり日が昇った頃、陽介はスープラに乗り再びエンジンをふかした。
ハイウェイマスター第三話(第一話続)を読んでいただきありがとうございます。ついに光圓寺の登場となった回。皆さん気づいてくれたでしょうか?*隣の席の同級生*……そう!彼こそが序盤に居眠りをしていた陽介を見てため息をついていた張本人です。性格・言動などはさておき、光圓寺との出会いは陽介の人生を大きく変えていきます。乞うご期待!!




