第25話 暗い部屋
家に着いた。
「ツムギの家には——お前は行かない方がいい」
レンはその一言だけ残して、ツムギを背負ったまま、ツムギの家の方へ歩いていった。振り返らなかった。振り返れなかったのだと思う。
玄関のドアを開けた。暗い廊下。緑色の月光。
「ハンナ?こんな時間まで——」
母さんが何か言っていた。聞こえなかった。
自分の部屋に入り、ドアを閉め、鍵をかけた。
ベッドまでたどり着く気力もなく、床に座り込んだ。
スマートフォンを開いた。
ツムギとのメール。最後のやり取り。
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ハンナちゃん、元気?
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元気だよ。どうしたの?
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ううん、なんとなく
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ハンナちゃんのこと、すごいと思ってるよ。怖いことなのに、ちゃんと向き合おうとしてて。私だったら絶対逃げてる
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レンくんがハンナちゃんを守ろうとするの、分かるよ。ハンナちゃんには守りたくなる何かがあるから。それは、悪いことじゃないよ
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うん!おやすみ、ハンナちゃん(´꒳`)
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画面が涙で見えなくなった。
ツムギはあの夜、何を思ってこのメールを送ったのだろう。
好きな人が、別の女の子のことを話しているのを聞いた夜。それでもハンナちゃんのことを「すごい」と言ってくれた夜。寝る前に絵文字付きの「おやすみ」を送ってくれた夜。
——全部、最初からあった。
全部、ツムギがくれていた。
私が受け取れなかっただけ。




