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HOME - 巨樹が空を覆う世界で -  作者: lovely plants
第4章 The Orphic Cradle

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第17話 光の在処

 根の回廊(かいろう)が、狭くなっていった。


 さっきまでは歩いて通れた隙間が、一歩ごとに身を圧(あっ)してくる。肩が引っかかる。壁に手をついて体を横にし、少しずつ押し進む。


「うぅ……狭い……」


 両側の根は温かかった。脈動していた。その奥に無数の繭が埋まっている。人を飲み込んだ植物の壁。——さっきまでの恐怖は消えていた。代わりにあるのは、奇妙な安堵感(あんどかん)。


 声が導いている。奥から聞こえる。


 暗がりの中に、四角い開口部(かいこうぶ)が見えた。自然にできたものではない。何者かが造った——入口。縁にかすかな光が走っている。


 根の壁に体を押し込み、最後の隙間をくぐり抜けた瞬間——


 息が、止まった。


 目の前に、都市があった。


 巨大な地下空洞。天井を覆い尽くす巨樹の根の遥か向こうから、白い光が降り注いでいる。同心円状(どうしんえんじょう)に広がる街路。崩れかけた建造物の列。苔に覆われた結晶の尖塔(せんとう)が何本も何本も、天に向かって突き出している。


 そして都市の中央に——巨大な樹のような構造体が聳(そび)え立(た)ち、その頂部(ちょうぶ)から光が溢れ出していた。


「え……!?」


 声が漏れた。空洞に反響して、いつまでも消えなかった。


「こ、ここは……何?」


 足が勝手に一歩踏み出した。壁面の結晶に、恐る恐る手を伸ばす。触れた瞬間——指先から振動が流れ込んできた。低く、深い共鳴。骨の奥がじんじんと熱を帯びる。


「声が……聞こえる。ここが……HOME(ホーム)?」


 呟いた瞬間、空気が変わった。


 都市の中央の構造体から、光の筋が蔓(つる)のようにゆっくりと伸びている。私に向かって。


「何かが……近づいてくる……」


 根が再び通路を形作っていた。でも今度は違った。根が自ら道を開けている。私を通すために。暗い螺旋(らせん)の回廊が、奥へ奥へと続いている。その先に、金色の光が脈打っていた。


 足が吸い寄せられるように回廊を進んだ。一歩ごとに金色が濃くなる。


 そして——手のひらの上に、光があった。


 金色の球体。拳(こぶし)ほどの大きさ。いつの間にか両手を差し出していて、その上に光が降りてきていた。


「この光……温かい……」


 指先から全身に染み渡る温もり。巨樹の幹に触れたときと同じ——いや、もっと深い。もっと私に近い温度。


 光を持ったまま顔を上げると、通路の壁の繭が呼応(こおう)するように脈打っていた。


「もっと種子が……呼んでる、私を……」


 足が進む。光の球体を両手に抱えたまま。通路の壁面に、小さな光の球がいくつも灯り始めた。蛍のように。星のように。暗闇が、金色に染まっていく。手の中の光が溢れ出し、腕を伝い、全身を包んでいく。


 抗えなかった。抗う気もなかった。


 光の奥へ、落ちていった。



第4章 The Orphic Cradle 了

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