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やはり、そうだったのだ。
セリアは選ばれたわけではなかった。
季節が一つ進んでも、なぜ自分がこの地に嫁ぐことになったのかは分からないままだった。
だがランドルフの話で全てが繋がった。
フォガンタムはもともと鍛治職人たちの街だ。
鍋や農具、錠前はもちろんのこと、武具や馬具の多くが彼の地で作られている。
ブレウィンバラが今もなお砦としての機能を残しているのであれば、当然、フォガンタムとの繋がりは欲しいはずだ。
きっとランドルフの来訪はそのための下見も兼ねていたのではないか。
そして都合のいいことに、年頃の娘たちがいることを知ったのだろう。
そして格上の伯爵家からの話を受け、恐らく父は考えたのだ。
どちらでも良いのであれば、より生真面目な方を嫁に出した方が粗相がなかろうと。
アリスも別に能力がないわけではない。
勉強に熱心ではなかったが、手先はアリスの方が器用で、特に刺繍の腕などはセリアより上だった。
自分の方がほんの少し、儀礼的なことを重んじたから。
たったそれだけのことで、今ここにいる。
セリアは自室のバルコニーに出た。
大きく息を吸う。そして、吐く。
風の音と共に、どこかで鳥の鳴く声がする。
陽の光は夏でもそう強くはないが、その分やさしく暖かい。
夕食の支度が進んでいるらしく、パンが焼ける匂いもしてきた。
——良いではないか。
どちらでも良かったのであれば、自分でも良かったということなのだから。
かねてからの予定通りに双子の片方が家に残り、もう片方が家を出た。
しかも輿入れ先は名門の伯爵家。
無事婚約は進み、二つの領地の繋がりは深くなり、きっと豊かになる。
これ以上の結果はあるまい。
セリアの心は達成感に満たされ、そしてあるべきところに落ち着いた。
これで良かったのだ、全て。
それからのセリアは、より完璧な婚約者として振る舞った。
義母はセリアの成長に満足しているし、義父も言葉少なながらもその献身を認めている。
ただランドルフだけは、婚約者の変化に馴染まなかった。
それまで確かに見せてくれていたはずの彼女の柔らかい部分が、見えなくなった。
穏やかすぎるその微笑みは、自分と彼女の間に壁のようなものを作っているように感じていた。




