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セリアの錯乱を、彼女の父は重く見た。
そしてこれ以上状態が悪化しないよう、すぐにブレウィンバラに送ることを決めた。
生真面目な娘は、無理にでも環境を変えてしまえば自らを律することだろう。
それを見越しての判断だった。
その間、カーティスとアリスにはセリアに近づかないようにと厳命が下った。
彼らは彼らで婚約を進める必要がある。
なにより、カーティスとセリアの間で何かが起きたことは明らかだった。
セリアも大切な娘だが、カーティスもまた義息子であり自身の後継である。
フォガンタム子爵は、父である前に正しく領主であった。
彼はどちらにも疵をつけさせないまま、速やかにこの件を処理したのだ。
父の読み通り、セリアは憑き物が落ちたかのように粛々と支度を調えた。
母に嫁ぎ先での振る舞いなどについて教えを乞い、嫁入り道具は父の目利きで適切なものを選んで欲しいと頼むなど、すぐに両親を安心させた。
身の回りの品も家格に見合うものから必要なものだけを選び抜き、そうしてほとんどのものを置いて早々にブレウィンバラへと向かった。
ブレウィンバラ伯爵家は同名の領地を治める名門である。
その由緒は長く、建国まで遡るほど。
歴史の中では王家の血も混じると言われるほどの尊き一門だ。
なぜ自分がそのような家に嫁ぐのか、セリアには全くわからなかった。
フォガンタム子爵家とて、かつては鍛治の力で戦を支えた家だ。
始まりが職人ゆえに爵位そのものは高くないが、そこらの家に侮られるような立場ではない。
だがそれでも、理由なくその血が結ばれるほどとは思えなかった。
不安もある。
なにせ単身乗り込んできてしまったのだ。
さすがに実家の侍女も護衛もブレウィンバラまでの行程には付き合ってもらうが、定住はせずにフォガンタムへ戻る手筈にした。
今の気持ちでは、とても自分に付き合わせて若い娘を遠方に連れて行くことはできなかった。
街道を進み、宿場を通過しながら数日を経て、一行はブレウィンバラ領に入った。
フォガンタムに比べると春でも少し気温が低いようで、馬車の中でも肩掛けを増やした。
こうしてブレウィンバラ邸に到着し、セリアはとうとう、初めて婚約者と顔を合わせることになった。




