4話 ヤケクソな日常
晴れた空の下、街を歩いていた。そこは家がいくつも建っていて店は武器や防具屋が多く並んでいる。
街の人々はあまり良いとは言えない身なりだった。中には頭の上に耳の生えた獣人などもちょっと混ざっていた。
国を追放されはしたが、俺は自分1人の道を堂々と歩く。って。
「うわっ!」
道の凹凸に躓きドサッとコケた。
「ついてないなー……」
膝をついた状態から俺は立ち上がる。周りにいた人が俺を見ていた。誰も助けに来ない。そんな奴らには如何に俺がダメな人間でその行動が正しいかを教えてやりたくなる。
だって、人の気持ちを下げるのも哀れまれて自分の気持ちが下がるのも嫌だから。
口外するなとは言われたけど……もうどうせ死ぬんだ関係ないね!
俺はその場で歩きながら大きな声で話す。
「俺は無職の職業勇者ーー!!!! 無職は無能だと言われ国外追放になりましたーーー!!!!」
周りの人たちが一斉に見てくる。ひそひそと話す人たち。
「ほんとか?」
「嘘なんじゃない?」
「職業勇者って本当に召喚されたんだ……えでも今のって」
「え……ちょっと変な人じゃない?」
そんな周りの声を聞きながら俺は歩いて一応国の外を目指して行った。
深夜4時まで起きていたから眠いな。まー関係ない。そこら辺で寝るか。ホテルとか行く必要はない。どうせ死ぬんだし……周りもいていないようなものだ!
それでもベッドを涙がちょちょぎれる程体が思い出す。
地面は硬く小石などがあり邪魔でそれらをどかしてから、俺は人通りの少ない所で無理に横になり寝た。
◆◆◆
目が覚めると夜になっていた。
「なんか俺にしては良く寝れたなー……今何時だろう……」
俺は目を擦って視界の時間を確認する。
『2:14』
「深夜か……」
お腹がぐうぅとなる。
どうせ死ぬんだ飯なんて食わなくてもいい……。
そう思ってビルから落ちた時のことを思い出す。
自然と体が震え出した。
「やっぱり怖いなぁ゙ぁ゙」
涙が出そうな思いで俺は体を手で抱く。
「死ぬのって凄く怖いんだよ。そう何度もヒョイヒョイと自殺なんてできない……でも死にたい……死ねない」
誰に言ったのか……分からないが俺は自分を落ちつかせるように息を整える。
「金は……盗まれてない……最後の晩餐にでもしようかな……それで気合い入れて死のう」
俺は飲食店を探す。
ここの文字全部日本語なのが不思議だよな……。
俺は適当な飲食店を探しながら街を見る。路上を見てもホームレスみたいな人がいない。
職にあぶれている人がいないみたいだな。俺は開いている店を見つけ中に入る。
「いらっしゃいお好きな席へどうぞ!」
中に入ると手に料理を持ち働いている女性がいた。人は夜だからか少ない。
俺は空いている席に座った。女性がやってきて水を置く。
「注文がお決まりになりましたらお呼びください」
「分かりました」
俺はメニューを開く。
きのこ炒め 半銅貨3枚
野菜炒め 半銅貨1枚
野菜スープ……。
今持ってる金がいくらでこれがいくらに値するのか分からない。これで足りるかは聞いてみるか。
俺の投げ付けられた袋には金貨が2枚と銅貨3枚入っていた。
少ないな……。
俺は店員を呼びこれで足りるか袋の中を見せ聞くと全然足りると返ってきたのできのこ炒めを頼んだ。
◆◆◆
きのこ炒めが来た。見た目はほんとにきのこを炒めただけって感じのもの。
食べると……。
「味ないな……」
うっすくきのこの香りが広がる程度で美味しくはなかったが食べれなくもないものだった。
全然足りなかった。俺は死から無意識に逃げるようにまた別のを頼もうとする。
一応どの程度他の人が注文しているか知るため、周りを見ると同じような量の物を食べている者たちが多く、別段俺が少ないというわけではない事が分かったがそれでも俺は店員を呼んでしまう。
テーブルの上には又同じきのこ料理から野菜スープ、味付きご飯など色んな料理がいっぱいに敷き詰められていた。
それを俺は凄く遅いペースで食う。
ゆっくり食べ続ける。
これで思い残すこともないか。そういえば普通に食えてるけど国外追放が俺ってことは知らされてないのか? 国王恥ずかしくて隠してるのかもな。
周りの席に着く人が俺の方を見てひそひそとざわついていた。
一般の大人の男が1人こちらに寄って話し掛けてきた。
「あんた仕事は何してるんだ?」
「……どうしてそれが気になる?」
「その服装は何の職業なのかなと思ってさ」
「あー……分かりやすく約すと無職だよ、無職」
「無職!?」
男は周りにも聞こえるくらいの声量で驚く。呼応して周りが聞こえるかどうかギリギリの声で話し出す。
「無職とかゴミじゃねぇか」
「帰れよ」
「なんで平然と料理食べれるの?」
「飯はいいから帰れ」
俺は話し掛けてきた男に問う。
「……別にどうでもいいが自分たちが無職になったらどうするんだ?」
男はしぶしぶ嫌そうにして答えた。
「そうならないために働くんだ。お前には分かんねぇか」
「……」
俺は周りを無視しながら飯を食べ続けた。
◆◆◆
不味い飯だった。
所持額は金の貨幣一枚と小銭がジャラジャラ。
支払いの時に思ったが国王が『何も手にできず』って言ってたけど、お金手が弾いたな。向こうの人に取ってもらったけど……生きづらいんだな職業勇者って……。
俺は夜の道を歩く。
道の端で顔のこけた子供たちがいた。中には首輪の付いた子もいる。
俺どうせこの後死ぬし。
俺は子供たちの前に残っていた金の貨幣を一枚置いていった。
◆◆◆
外に出る道を発見。
……よし……行くか……。
気合を入れて、外に出るまでの長い道のりを見つめる。
ようやっと死ねる……もういいよ長いよ人生!
俺は外に向かって駆け出した。と、その時首根っこを捕まれその場で倒される。
「え……!?」
「あ、どうも職業勇者様こんばんわ」
俺の顔を覗き込む変な男がいた。俺は体勢を立て直し身なりの良い服を着たその変な男と話す。
「な、何のようですか」
「やはりあなたが職業勇者様ですか、しかも無職の!」
「そうです!!」
「なるほどではでは是非ご覧にいただきたいものがございますよ!」
男は手をすりすり擦り不適に笑う。
「なんで、俺が無職の職業勇者と知ってるんですか?」
「偶々近くで聞いたんですよ。ほんとに偶然です」
ふーん……。
「俺、悪徳な勧誘とか高額商品の販売とかはお断りしてるんです」
「そんな……今回は違いますよ」
「普段はやってるのか……」
「商売がたきにだけです」
「そうですか……それであなたは一体どなたで何屋さん?」
姿勢を正しごほんと咳払いをする。
「わたくし奴隷商を営むモールモータと申します以後お見知りおきを」
「うわー奴隷! よくないよーそういうのよくないよおー」
「まあまあ良いお話ですから」
はー……また死ねなかった……もう気持ちが入らない……話、聞くだけ聞いてやるか。
そして俺は良くはないとは言いつつ、この者の言うまま店に行った。




