3話 無能な無職は国外追放
国王の隣に立つ白い清楚な服を着た男が呟いた。
「この国始まって以来の大失敗だ……」
……ゴミ……無職はゴミか……死のう。
100%間違ってもないかと思っていたが、それを聞いていた医師の瀕舞さんが声を荒げて話し出した。
「ゴミとは、いくらなんでも言い過ぎじゃないんですか!? それに召喚して呼び出すのに許可は取ったんですか!? 私は取られていない! どうせ取ってないんでしょ。取ってもないのに勝手にやってそれでハズレだったらゴミ呼ばわりはあんまりにも卑劣だ!!」
大工の隅銘さんまでもが続けて言ってくれる。
「そうだぞー!!」
瀕舞さん、隅銘さん……優しい人だ。
プリンセスのアミィーさんもうんうんと頷いていた。目立った動きじゃないけどそれでも嬉しくはあるもんだ。
「職業勇者様方……あなた方の世界ではどうだったかは存じ上げませんがこの世界で無職は、働いていない者は、ゴミも同然なのです。そこのゴミと皆様を同列には扱えません……ではそこのゴミ、勇者武具を出してみなさい」
俺を指差しそんなことを言う。
「……勇者武具?」
「はー道具を意識すれば出てきますよ通常は」
俺はよく分からないが剣や盾、ペンなどまで色んな道具を意識してみた……だが何も起こらなかった。
隣を見ると、瀕舞さんがメスのような医療用ナイフを空から出していた。同様に隅銘さんはトンカチ、アミィーさんは頭に輝く王冠が出ていた。
それを見て王様や周りの者はおお! と体が自然と上体を前のめりにさせる。そして俺を睨むように下卑た目で見る。
「普通はこのように素晴らしい勇者武具が出るはず何ですよっ。勇者武具にはそれぞれ効果があって皆優秀です。ゴミとは違ってね」
瀕舞さんは顎に手を当て何かを考えてる? 感じの後に低めのトーンの厳しい声で国王に向けて言った。
「なら元の世界に返すべきだ。それくらいはやらないと公平でなさ過ぎる」
この言葉にも俺以外の召喚された人には優しい声で王様は対応する。
「いや、一度召喚した者はもう戻すことはできません」
「ちっ……そんなことだろうとは思ったが……」
「え、じゃあ俺たちゃ一生帰れないってことすか?」
「全てのエラー災を払えば帰れるとも古文語訳聖書には書いてある」
「全てのエラー災を払うなんてどうせずっと先の話だろう? 从ニさんは? 勝手に呼ばれて能力もなくそこで虐められてそれからどうなるって言うんだ? 殺すのか?」
一斉に周りの者が国王を見る。何を言うのかと周囲の嫌味な疑問と苦しい嫌な考えが空気を重くする。
国王様は息を呑んで重く答えた。
「残念ながら殺すまではできませんが、無職のゴミはこの国を汚していくのみ、国外追放とし早急にここから立ち去ってもらいます!」
「なっ……! この世界にはモンスターがいると言っていたじゃないですか! 危険なんでしょ!?」
俺はもうなんか諦めて聞いていた。
「それはそうです。そういう世界ですから……」
ここで隅銘さんが口を開く。
「なあ从ニさん、あんた日本人か?」
「そうですけど……」
「俺もそうなんだ! 今決めた、国外追放になるっていうんなら俺も从ニさんについて行くぜ」
「え?」
「私も同じ日本人として共にしましょう」
瀕舞さんまでもが隅銘さんと同じことを言う。
「第一、無職がどうので人を切る国は信用できません」
瀕舞さんがはっきり言うと国王がゆっくり話す。
「それはなりません。そんなことをすれば職業勇者様方が死んでしまいます」
「やはり死ぬのか」
瀕舞さんは厳しく見つめる。
「召喚された職業勇者様にはエラー災とはまた違う職業勇者様たちを吟味する職業勇者の試練が直ぐ来ます。これは時間になると強制転移のイベントで逃れられません。それまでに強い仲間を揃え備えなければ……それに職業勇者同士は近くにいると経験値が入らない仕様です。そして道具は一部を除いて決まった自分の勇者具しか手に取れないのです。そこのゴミは何も手にできずせめて触れるホークやスプーンなどで戦うしかありません。間違いなく我々のアシスト無しでは厳しく皆さんの足を引っ張るでしょう」
「く……」
「ひでぇ……」
…………。
瀕舞さんも隅銘さんも黙ってしまった。
まーそうだ。自分の都合が悪くなれば引くしかない。ここまでの流れで庇ってくれていただけ感謝だ。今度は……俺が庇う番かな。
「あの俺国出ますよ」
「そうか」
国王は安堵して言った。瀕舞さんが話に入る。
「すみません……ならせめて仕度金くらいは渡したらどうなんですか」
「それくらいはしねぇとなー!」
隅銘さんも怒ったように言ってくれている。
「仕方ない……職業勇者様方がそこまで言うなら用意させます」
国王の隣に立つ者が金の入った袋を持ってくる。地面に投げつけられ中身の硬貨が少し出てしまう。
お金……別にどうせ死ぬし必要ないんだが瀕舞さんたちがくれたお金だ、拾わないのは失礼か。
落ちている袋を俺は拾い外に出た硬貨に手を向けるが。
こんなちょっと必要ないか……。
何となく拾うのがやだった硬貨を捨て、俺は袋だけ持って踵を返した。
「それでは」
瀕舞さんと隅銘さんは心配そうに俺を見ていた。後のものはこちらを見ないようにしている国王を除いて。
「くれぐれも、自分が無職の……職業勇者であることを口外してはいけませんよ」
職業勇者を嫌そうに言った国王に対し、俺は何も言わずぎぃぃと音を立て扉を開け出ていった。




