ヒューマン兵士と オタク女子
今回の内容はヒューマン兵士のお話です。
朝早く城のエントランスで仁王立ちしているヴァイアン、
「城の前って何処だ?
ここで良いのか?自信は無いが…」
ヴァイアンの両脇に立つ近衛兵達も、
「確かに、
約束の場所を明確にしておけば良かったですな」
「500人近くの兵士が現れれば、
騒がしくなるでしょう、
直ぐに気付きますよ」
その時、空間が歪み、
歪みが大きくなっていくと、
中からガヤガヤと話し声が聞こえて来る、
「マスター、お世話になりました」
「マスター、本当にありがとうございます」
「マスター、命の洗濯が出来ました」
それぞれお礼を言いながらポータルから出て来る、
目の前には隊長のヴァイアンが引き攣った顔で立っていて、
「あっ、隊長ただいま戻りました」
「お前達…マスターって誰の事を言っている?」
「あの救ってくれた少女ですよ」
兵士達が平然と答えると、
ヴァイアンは何とも言えない顔で、
「アンドレは何処だ?」
「アンドレ副隊長は最後に出て来ると思います」
兵士達がゾロゾロとポータルから出て来て、
整列を始めると、
「お前達は一旦兵舎で待機していろ、
王に報告するまで、
拠点での話は口にするな」
兵士達はヴァイアンに敬礼をしてから、
兵舎に向かって行った、
兵士達は顔色も良く、
頭の先から爪先まで、
綺麗になっていて、
良い匂いまでしていた。
そんな兵士達を眺めて、
(たった一晩であそこまで変わるだろうか?
一体拠点で何があった?)
そこに副隊長のアンドレが声をかけて来た。
「ヴァイアン隊長、只今戻りました、
王が無事に救出されたと聞いて、
心から安堵致しました」
アンドレは満面の笑顔でヴァイアンを見つめていた、
「アンドレ、
兵士達があの少女の事を、
何故マスターと呼ぶ?」
「ああ、それは…
あの木の人形が少女の事をマスターと呼んでいたので、
それにつられたんでしょうな、
少女が拠点に戻った所を兵士達が囲んで、
質問攻めにしてましたから、
その時にマスターになったのでしょう、ハハハ」
「質問攻めだと?」
「拠点は凄い所で、
私も聞きたい事が山ほどありましたが、
少女が人気者で諦めて、
動物達と話をしていました」
ヴァイアンは何の事だか理解出来ずに、
「動物と話?」と首を傾げていたが、
ポータルから声がかかる、
「おい、馬の主人はいるか?」
ポータルから顔を出していたのはクレアだった、
ヴァイアンは慌ててクレアの前に出て、
「それは私の馬だと思います」
クレアはヴァイアンの頭から爪先までジロリと見て、
「馬が帰るのを嫌がっている、
お前はちゃんと世話をしているのか?」
ヴァイアンは貴族、
馬の世話などした事は無い、
「馬の世話は、使用人に任せていますが、
馬の事は何でも知っている者なので、
問題は無い筈です」
クレアはヴァイアンを睨みつけて、
「お前の馬なのに、
お前が世話をして無かっただと?
馬の話では食べ物も不味く、
運動も十分じゃ無いと言っているが」
そう言ってクレアは馬の顔をポータルから出して、
「お前の主人はあいつか?」
馬はヴァイアンを見て「ブゥホォ」と声を出すと、
「アイツが主人なのか…」
馬は「ヒィ〜ン」と鳴いて、
「お前は嫌いじゃ無いけど、
ここに居たいそうだ」
ヴァイアンは困った顔で、
「いや、戻って貰わないと困る、
精霊王様、本当に馬がそんな事を言っているのですか?」
「俺は動物の精霊王だぞ、
動物が何を考えているか分かる、
俺としては、動物の希望が優先だからな…
お前は新しい馬を用意すれば良い」
「そんな簡単に言わないで下さい、
軍用の馬は色々訓練をしているので、
馬を用意して直ぐに使える訳じゃないのです」
そこにクレアを誰かが引っ張って、
「オッサン邪魔」
クレアは振り返り、
「サクラ、馬達が帰りたく無いと言っているんだ」
サクラはポータルから顔を出して、
「馬が必要になるまで、
ここで休ませてあげれば良いじゃん、
馬が必要になったらここから出してあげるよ、
このオッサンが面倒見るし」
サクラはそう言いながらポータルから出て来て、
「その方が馬も心身共に元気になる」
「精霊王様がお世話してくれるなら、
こちらとしては有難いお話ですが、
必要な時はどう伝えれば良いのですか?」
サクラは考えるように首を傾げながら、
「連絡出来る魔道具持って無い?」
「魔道具はありますが、
お渡し出来る魔道具は無いです、
貴重品なので」
「ふ〜ん、
じゃあいいや、太郎君を2体ここに置くよ、
1人でもギガントモンスター倒せるから便利だし、
毎日モンスター狩って来てくれるから、
食料不足も心配ない、
太郎君とアタシは念話で話が出来るから、
連絡も取れるしね」
ヴァイアンは口を明けて話を聞いていたが、
(こんなにも簡単に繋がりが出来てしまった、
昨夜の心配事は何だったんだ?)
「そう言って頂けるなら、
お言葉に甘えさせて頂きます」
「あっ、太郎君貸すのは期間限定だから、
ギガントモンスターが出没しなくなったら、
返してもらうよ」
「それで、大丈夫です」
サクラは頷いて、
「それで、火傷の人は集められそう?」
「はい、謁見の間に、
もう集まってもらってます」
「そう、じゃあ移動しようか、
それとさ…あそこの扉から見ている変な奴は何?」
ヴァイアンは城の大きな扉に目をやると、
ほんの少し扉を開けて、
こちらの様子を伺っている者に気付き、
走り寄って扉を開けると、
第一王子グレイスが立っていた、
「グレイスさま…
陛下に言われた事をお忘れか?」
グレイスはサッと隠れて、
「ヴァイアン、静かに、
私とバレてしまう、
父上に言われたから、
コソコソしているのだ」
ヴァイアンは額に手を当てて、
「そのコソコソもダメです、
何か要件があるのなら、
堂々と声をかけた方が印象が良いと思います」
「その要件が無いのだから…
コソコソ見ていただけだ」
そう言いながらまた扉の陰から、
そっと外を見るグレイス、
「あっ、彼女が居なくなったぞ」
ヴァイアンは慌てて、
アンドレに向かって走り、
「アンドレ、あの娘はどこ行った?」
「ポータル開いて謁見の間に行ってしまわれた、
今日もやる事がたくさんあるからと」
ヴァイアンは謁見の間に向かって走って行った、
謁見の間では初めてポータルを見た人達が騒めき、
中から少女が出て来たが、
見た事の無い服装と、
頭の変なチョンマゲを見て、
騒めきが大きくなっていた、
謁見の間に既に待機していた王が、
「皆、静まれ、
その少女が我々を助けてくれた者だ、
失礼の無い様にな」
サクラは王に向かって飛んで行くと、
飛ぶ姿を見て驚いた人達は、
また声を上げてしまっていた。
サクラは王に挨拶も無しにいきなり、
「あのシャーを連れて来て欲しい」
「何故だ?」
サクラは1番手前に座っていた人達の様子を見て、
「彼らがシャーにやられた人達でしょ、
これは酷い状態だよ、
本人にちゃんと見せないと」
王も火傷を負った元兵士達を、
真剣な顔で見つめながら頷き、
近衛兵に向かって、
「シャルーンをここに連れて来てくれ」
近衛兵は胸に拳をぶつけて返事をしてから走って行った。
サクラは集まった人達を眺めながら、
「おじいちゃん、
貴方の息子はこんな酷い事をしてしまった。
その息子に同じ思いをしてもらう、
何も言わずに見ていて欲しい」
子供の体になったシャルーンは、
近衛兵に抱えられて連れて来られ、
その扱いに不満を言っているシャルーン。
「兵士の分際で俺の体に気安く触れるな、
後で不敬罪にしてやるからな」
床にドンッと置かれるシャルーン、
その目の前にはサクラが腰に手を当てて立っていた。
「お前…全然反省していないな、
ここに座っている人達を見てみろ」
シャルーンは火傷を負った元兵士達を見て、
「何だこいつら気持ち悪いもの見せるな」
サクラがシャルーンの頭に触れると、
魔法が解けて元の姿に戻り、
着ていた服が破れてしまう、
元の姿に戻ったシャルーンに気が付いた兵士と、
付き添っていた家族達の表情が変わり、
怒りで体を震わせていたが、
相手は極悪人でも王族、
平民には王族に逆らう事は出来ない、
そんな状況を見ていたサクラが、
「みんなの怒りがお前に分かる?」
シャルーンは、
殆ど裸状態になってしまった事ばかり気にして、
「はぁ?うるさいんだよ、
それより早く着替えを持って来い」
近くにいた王が、
シャルーンの顔を殴り飛ばす、
「お前は…なんて情け無い人間になった、
シャルーン、今からお前は王族では無い、
1人の平民として生きていけ」
王は火傷を負った元兵士達に、
「我が息子に酷い目に遭った兵士達よ、
この愚息に代わって謝罪がしたい」
そう言って王が頭を下げる、
謁見の間に集まった人達が騒めき出したその時、
ヴァイアンとグレイスも謁見の間に入って来て、
王の姿を見て驚き、
「陛下何があったのですか?」
ヴァイアンは王の横に倒れているシャルーンに気が付いて、
状況を察して王の横でヴァイアンも頭を下げた、
グレイスも遅れて頭を下げる、
サクラは太郎を召喚して、
シャルーンに何かを着せる様に指示した後、
王達を退ける様に指示を出した、
太郎はアイテムボックスから、
銭湯に常備している甚平を出して、
シャルーンに着せてからサクラの横に連れて行き座らせる、
サクラは太郎を見上げて、
「太郎君、これから調べる事をメモしてくれる」
「御意、マスター」
突然現れた太郎達を見て、
硬直していた元兵士達にサクラが、
「お兄さん、顔を触ってもいいかな?」
突然の問いに戸惑いながらも頷く元兵士、
サクラはそっと元兵士の顔を両手で包み込み、
「炎の魔法を顔に向かって撃たれたの?」
元兵士は顔半分がケロイド状態になっていたので、
話しにくそうに頷きながら、
「そう…です、あ の、にくく…い、
お…とと…こ」
サクラは頷きながら、
「分かっているよ、
炎の魔法を撃たれたのはいつ?」
元兵士と家族は首を傾げながら考えて、
母親らしき人が答える、
「半年くらい前だと思います、
顔半分がこの状態だったので、
片目も見えなくなり、
助からないとも言われてました」
「治癒魔法はかけてもらった?」
「はい、治癒魔法を使える魔術師の方に、
直ぐ治癒魔法をかけてもらったのですが、
炎の魔力が強すぎてこの様な状態になってしまって…」
母親らしき人はその時の事を思い出したのか、
そこで号泣してしまった。
サクラは怖い顔をしてシャルーンに向かって、
「シャー、
お前がやった事で、
どれだけの人を悲しませたか、
ちゃんと見ておけ、
そして同じ苦しみをお前に味合わせる、
太郎君、火傷の場所と火傷の期間を記録して」
サクラは兵士の顔を手で包んだまま目を閉じて、
何かをブツブツ呟くと、
手が金色に光り出し、
火傷を負った顔が段々と綺麗になっていった。
綺麗になっていく息子の姿を見ていた母親は、
何が起こったのか理解出来ずに固まって、
サクラが両手を外して、
「はい、元通り、
お兄さん…若かったんだね、
こんな若い人に酷い事をして」
サクラはシャルーンに向き直って、
シャルーンの頭を鷲掴みすると、
「半年の間、
このお兄さんと同じ思いをするといい」
そう言って魔力を込めると、
シャルーンは両手で顔を覆い、
悲痛の声を上げて床をのたうち回った後、
自分の顔が半分崩れている事に気付く、
「こ…の、の〜、くっくそ…ガキ」
サクラは冷たい目でシャルーンを見つめて、
「お前がやった事だよ、
これで済むと思うなよ、
ここに集まった人達、
全員分の火傷を体験してもらう、
まずその状態を半年ね〜フンッ」
状況が掴めない周りの人達は大混乱、
火傷が治った元兵士は家族と抱き合って喜び、
王とヴァイアンは何か恐ろしいもの見たような、
驚愕の表情になり、
グレイスはサクラが威厳のある姿に見えて、
悦に入っていた、
そんな状況にサクラは気にも止めずに、
火傷を負った元兵士達を治療して、
太郎はせっせとメモを取って行った、
火傷を負った元兵士は全部で18人もいた、
サクラはシャルーンに不敵な笑みを向けて、
「こんな経験を18回受けてもらうから、
楽しみにしてなね、クックック〜」
サクラの治療に感謝する元兵士達と家族、
王や近衛兵達は冷や汗を流し、
グレイスは両手で口を押さえて、悦、発動中、
シャルーンの絶望し狼狽える姿を見ていた元兵士達と家族は、
無表情で眺めていたが、
怒りに取り憑かれていた心が少し浄化されていた、
王は恐る恐るサクラに尋ねる、
「お嬢さん、この魔法はいったい…」
「昨日も言った交換魔法?だと思う、
性別や種族、傷も交換して経験出来るかな〜って思って…
詳しい事は分からん…
まぁ〜元に戻せるからご心配ご無用」
王はサクラの答えに、
「そんな事が聞きたかった訳では無いんだ、
私自身何が聞きたかったのか…
分からなくなって…」
サクラは頷きながら、
「うん、うん、分かるよ、
私自身も分かってやって無いから、アハハ、
じゃあ兵士の治療を続けるね」
サクラは太郎達を召喚して、
治療が終わった人達に飲み物と果物を提供して、
モンスター退治で怪我をした兵士達の治療を始める、
元通りに戻った体に感動している兵士達は、
サクラに涙を流しながら感謝を告げていた、
最後の並んでいた人達は兵士では無い平民だった、
腕には小さな子供を抱いて不安そうな顔でサクラを見る母親、
サクラは笑顔を向けながら、
「お子さんがどこか悪いの?」
母親は頷いて、
「この子は生まれつき目が不自由で…」
そこに王が口を挟んで来た、
「私も昨日初めて聞いたのだが、
産まれたばかりの子に、
不自由な所があるなんて聞いた事は無い、
エルフ族や鬼人族も同じだと思うが、
我ら長寿種は体は丈夫に出来ていて、
長く生きられるように神が丈夫に作られたと、
神話の中に記録されている」
「じゃあ今までは無かったと?」
「そうだ、この数年の間に産まれた子に、
体の何処か不自由な子がたまに産まれるそうだ」
サクラは腕を組んで唸りながら首を傾げて、
「う〜ん、なんか、この数年にって多いよね、
モンスターの巨大化、
紫の悪魔とマレディク-ダンジョン、
そして今回の子供の事、
何か繋がりがあるのかも」
サクラは母親の顔を見つめて、
「大丈夫きっと治せる」
そう言って跪き子供の顔を優しく手で包んで、
子供の状態をサーチすると、
「お母さん…大変だったね」
サクラの言葉に思わず嗚咽を漏らす、
王は不思議そうに、
「お嬢さん、どうゆう事だ?」
「産まれた時両目とも、
眼球が無かったんだ」
子供は母親の腕の中でスヤスヤと眠っていたので、
眼球が無い事に王は気付いていなかった。
サクラの説明に王は悲しげな顔で、
「それはご両親もお辛かったでしょう、
何か協力出来る事があれば何でも言ってくれ」
王の言葉に子供の両親は声を出さない様に、
泣き崩れていた、
サクラは手に魔力を注いで、
頭の中でイメージをする、
「本当はあったもの全て元に戻せ」
そう小さく呟くと、
子供の全身が光り出し消えていった。
サクラは立ち上がってから、
「目に膨らみが出来た、
多分眼球が戻ったと思うよ、
眠っているのに可哀想だけど、
瞼の上からそっと触ってみて」
サクラの話を聞いて、
隣にいた父親が子供の顔の変化に気付いて、
「ウッ」と声を漏らしながら、
そっと子供の瞼に触れると、
手ごたえがあり、
瞼を動かしてみると眼球が見えた、
驚いた顔で夫婦はサクラの顔を見つめて、
何を言えば良いのか分からない様だった、
サクラは笑いながら、
「良かった、ちゃんと戻ってたね、
この事はご両親のせいじゃ無いから、
自分を責める事はしないで」
子供が産まれて来てから、
五体満足に産んでやれなかったと、
両親は自分を責め続けていた、
サクラの言葉に号泣する両親を、
涙を流しながら見つめる王、
そんな王にサクラが、
「ここにいる子供達で全員?
もし他にもいるなら直ぐ連れて来て、
それと、これから産まれてくる子にも、
同じ様な事があったら、
太郎君に言ってアタシに連絡して、
直ぐ駆けつける」
ヴァイアンも後ろの方で泣いていたが、
サクラに近付いて跪き、
「お嬢さん、
国民の為にありがとうございます、
今、体が不自由な子供はここにいます7人だけ、
これから何かありましたら、
遠慮なく連絡させてもらいます」
サクラは軽く「オッケー」と言いながら、
次の子供の治療に移っていき、
ほんの数時間で集められた人達全員の治療を終わらせた。
太郎達は忙しく動き回り、
集まった人達に色々配って行き、
拠点の飲み物と果物を食べた人達は、
益々元気になって行った、
サクラは王に向き直って、
「おじいちゃん、
シャーはやっぱりアタシが預かる、
あんな姿を母親には見せたく無いでしょ?」
王は難しい顔で頷き、
「そうしてくれ…
お嬢さんには迷惑かけてすまない」
「会いたい時はいつでも会えるから心配しないで、
後、専属太郎君を付けるから、
更生すると思うよ、フッフッフ、
それとオッサン、
ここの治療院には病気の人とかいない?」
「お陰様で病人は今はいません、
紫の悪魔の噂は聞いていましたが、
かかった者はいませんでした」
「えっ?おじいちゃん達3人はかかってたけど…」
その事を忘れていたヴァイアンは、
気まずそうな顔をしていたが、
王はヴァイアンの肩を叩いて、
「気にせずとも良い、
今回はヴァイアンのお陰で救われた者も多い、
これからも宜しく頼む」
ヴァイアンは深く頭を下げて、
「勿体無いお言葉です、
これからも国の為に尽くす所存でございます」
その場が和やかに終わりそうになった時、
怪我の治療をしてもらった兵士達全員が、
王の前で跪き、
「陛下、
陛下のお陰で体が元に戻る事が出来ました。
図々しいお願いとは思いますが…
また国に尽くせるようにして頂けないでしょうか?」
王は頷き、
「よくぞ言ってくれた、
モンスターの巨大化のせいで、
兵士の数は減るばかりであった、
直ぐに兵士に戻れるようにしよう、
ヴァイアン、お願いできるか?」
「仰せのままに」
と言って頭を下げるヴァイアン、
兵士達はお互いに喜び合い、
ヴァイアンにもお礼を告げる兵士達の後ろで、
重たい空気の火傷を負わされて元兵士達が、
「陛下…今回の治療ありがとうございました。
そして我々の今後の話なのですが…」
元兵士達は俯き黙ってしまったが、
王が気を利かせて、
「そなた達には本当に迷惑をかけた、
何でも言ってくれ、
出来るだけの償いをさせてもらいたい」
元兵士達は涙を浮かべながら、
頭を下げて、
「こんな失礼な事を口にする事をお許しください、
我々は体の傷だけでは無く、
心にも深い傷を負いました、
それは私達だけで無く、
家族も深く傷付いています。
動く事が難しくなった我々に、
何の保証も無く城から投げ出され…
今まで生きていくのにどれだけ苦労したか…、
体が元に戻った今、
動けるようになりましたが、
城に戻る事は精神的にもう無理なのです、
どうしてもシャルーン様は許せない…
兵士以外の仕事は何も出来ない我々で、
これから先の事が見えなくなってしまい、
それでお願いがあるのです」
王は兵士の話を聞いてかける言葉も見つからず、
シャルーンの愚かな行為に改めて怒りが込み上がり、
「私に出来る事なら何でも言ってくれ、
どんな謝罪の言葉を重ねても、
皆の心を癒す事は出来ないだろう、
皆の生活は一生王族が責任を持って保証する」
兵士達は首を左右に振って、
「申し訳ありませんが…
王族の世話になるなんて、
絶対に受け入れられません、
出来れば…王都から離れた場所に居場所が欲しく、
その移動の安全を保証して頂きたいのです」
王とヴァイアンは目を見開いて驚き、
「そこまで…王族を許せなくなってしまったか、
本当に…申し訳無い、
どこの領土が良いか希望はあるのか?」
「出来れば国を出たい、
無理で無ければエルフの国が良いのです、
王族の世襲制の無い世界に行きたい」
「エルフの国か…」
ヴァイアンが苦々しく表情になり、
「それは…難しいかも知れない、
シャルーン様の命令で、
エルフ側の国境への行軍を何度かしてしまった、
エルフ側にもたくさんの被害が出ているはず」
元兵士達はヴァイアンの話に絶望して、
力無く項垂れてしまった。
王やそこにいた兵士達も、
項垂れている元兵士達の姿を悲しそうに見つめ、
何も出来ないでいた。
そんな重い空気と違って楽しそうに会話をしている、
サクラと子持ちの両親、
ヴァイアンはそんなサクラを見つめて、
「陛下、
あの少女に頼めば何とかなるかも知れません、
今朝少女の拠点から帰って来た兵士達は、
生まれ変わったように生き生きとしてまして、
拠点が素晴らしい場所だとアンドレも言ってました」
王もサクラを見つめながら、
「シャルーンの事も預かるって言っていたぞ、
この者達はシャルーンが近くにいるのは辛いはず、
それに今回は世話になり過ぎてこれ以上は…」
「そんな事言っている場合ではありません、
取り敢えず相談してみます」
ヴァイアンはサクラに駆け寄って、
何かを伝えると、
一緒に王に向かって歩いて来たが、
「おじいちゃん、
アタシはそろそろ帰るけど、
相談って何かな?」
王をおじいちゃん呼ばわりしているサクラに、
周りはドン引きだったが、
王は気にして無い様子を見て、
本当におじいちゃんなのかと疑う者出たと言う、
王はすまなさそうに
「あの、お嬢さん、
シャルーンに酷い目に遭わされた兵士達が、
ここにいたく無いらしく、
王族の世襲制の無いエルフの国に、
移住したいとお願いされたのだが、
シャルーンのせいでエルフ族にも迷惑をかけただろ、
だから移住は難しいと思っているのだが」
サクラはしどろもどろの王に
「何、しどろもどろになって、クック」
サクラは元兵士達に向き直って、
「移住って事は家族も一緒だよね?」
元兵士の1人が、
「はい、両親も一緒です」
サクラは頷きながら、
「小さな町と中位の町、
後は王都ならお願い出来るけど、
他の種族と生活は辛く無い?」
「そうですが、
ここに居るよりはましかと…
王族を見かけると、
腹の底から怒りが湧いて来てしまって、
そうなってしまう自分が嫌で」
「じゃあ、アタシの拠点に来ればいい、
エルフを125人保護しているけど、
土地は広いし、
やる事もたくさんあるから、
手伝って貰えれば助かるんだ」
「お嬢さん、ちょっと待ってくれ、
そこにはシャルーンも行くのでは?」
「シャーをアタシの大切な動物達がいる所に、
置くわけないじゃん、
更生施設行きだよ、アイツは、
不自由な状態で自分の事は自分でやらせる、
アイツがやった事みたいな酷い目には合わせないから、
心配しなくていいよ、
先にシャーだけでも移しちゃうか」
サクラは更生施設のポータルを開けると、
シャルーンを担いだ太郎が中に入って行く、
シャルーンは顔が半分火傷になってショックを受け、
何も言わずに太郎に担がれていた。
シャルーンとすれ違う時にサクラは、
傷はそのままで性別だけ魔法で女性に変えた。
「太郎君、説明は太郎君に任せるね」
「御意、マスター」
太郎が中に入った事を確認してから、
ポータルを閉じて、
今度は拠点のポータルを開くと、
「今、家族が一緒なら拠点に行ってみれば?
あっ、荷物の事もあるか、
アタシはせっかちでごめん、
覗いて見てよ拠点はこんな感じ」
そう言いながらポータルから離れると、
中から料理太郎達が、
「マスター、お昼の時間、
お弁当持って無い、
今から用意するから食べて」
「えっ?いや〜今はそんな状況じゃ無くて」
料理太郎はポータルから出て来て、
謁見の間にいる人達の数を数えて、
他の料理太郎はサクラのテーブルセットを持って来て、
サクラを座らせると、
「我儘はいけない、
ちゃんと食べないとママさんに悪い」
そう言いながら食事の用意を始める、
他の料理太郎達もポータルから出て来ると、
大きなテーブルと椅子を用意して、
そこにいる者達を座らせて行く、
「マスター、驚く物を作れた」
嬉しそうに笑いながら料理太郎が持って来た物は、
鶏がらスープで作ったラーメンだった、
トッピングはチャーシューに海苔、
メンマまで乗っていた。
サクラは立ち上がり叫ぶ、
「おおおおおお〜醤油ラーメン!
何で?メンマまで乗ってる、
あっ!鶏ガラ欲しがってたか!
太郎君マジ神、ありがとう〜」
サクラは太郎に抱きついて大喜びしていた、
周りの人達は見た事の無いラーメンを見て、
どうすれば良いのか硬直していたが、
太郎達にフォークを渡されて食べる様に促される、
小さな子供がいる夫婦には、
小さな器まで渡していて、
心はもうお母さん。
サクラはラーメンを食べて見ると、
「うっま〜い!」と叫んで立ち上がる、
「マスター、立ち上がらない、
行儀が悪い」
太郎の顔を見つめながら、
(マジ親になってるじゃん)
「すいませ〜ん」と言いながら座って、
サクラはラーメンを食べていた、
ラーメンを口にした全ての王族や兵士達、
一般の人達も美味しさに舌鼓をうっていた。
ラーメンのツユまで飲み干した後、
サクラは(何をしてたんだっけ?)と首を傾げてから、
「アアア〜そうだった」
サクラはラーメンを食べている兵士達の元へ行き、
「拠点ではこんな食べ物も出るから楽しいよ、
アタシと一緒に拠点に行くなら荷物をまとめてね」
元兵士の1人が、
「場所は何処なんですか?」
サクラは満面の笑みで、
「ホーリー山」と答えると、
ラーメンを食べて賑わっていた場所が、
ホーリー山の一言で凍りつくのであった。
読んで頂きありがとうございました( ̄∇ ̄)/




