ヒューマン族と オタク女子
国境での続きのお話、
サクラはエルフの隊長に向かって歩いていると、
背後から鼻をすする音が聞こえて来てきた、
驚いて振り返ると、
星神を中心にヒューマン達が跪いて泣いている。
その光景を唖然として眺めていたが、
そこにエルフの隊長カムルがやって来て、
「ヒューマンの兵士達はどうしたんでしょう?」
「星神を見て耐えてた物が爆発しちゃった?
何を耐えていたのかは知らんけど…」
カムルは「星神様?」と小さく呟く、
サクラはカムルの顔を見て、
「星神ってみんなにとってどんな存在なの?」
カムルは空を見上げ言葉を探すように、
「崇高な存在、救世主、
絶対的な存在、これ全て…
いや、言葉にするのは難しい」
「なるほどね…じゃあ全能神の事は?」
「それは…神話の中の存在、
実在してるとは思ってなかった、
この星を作られた方と神話では語られてるな」
サクラは「ふ〜ん」と言いながら、
「もしかして…星神を信仰している教会とかあるの?」
「教会?聞いた事ないな、
世界中に壁画が有るのは知ってるか?」
「聞いた事ある」
「その壁画に描いてある存在が、
我々の世界を司っている尊い存在と、
記されているんだ、
モンスターや食糧難で不安な今の生活を、
星神様や精霊王様達が助けてくれると、
信じている者も多い、
それで、あそこにいらっしゃる方は星神様なのか?」
「そうだよ」
カムルも星神を見つめてウルウルし始めて、
「壁画に記されていた事は本当だったんだな…
しかも、全能神様まで、
我々の為にお嬢さんを導いて下さったなんて」
サクラは困惑した顔で、
「あのね、あれはおじいちゃんの冗談だから、
誰にも言っちゃいけないよ、
アタシは星神に言われて、
みんなに食料を配っている、
星神に言われて、
怪我人や病人も治療している、
アタシは星神の小間使いだから、
だから全ては星神のお陰だと言う事をお忘れ無く」
カムルは疑いの目でサクラを見て、
「まぁ〜お嬢さんを見て、
全能神様と関わりがあるようには見えないからな」
サクラは表情を明るくし、
「そ〜なんだよ〜
見た目をバカにされた様な気はするが、
オッサンの感じた通り!
それで、オッサンは食料要らない?
必要なら砦まで食料を届けるよ、
星神から命令されてるからね」
カムルは嬉しそうに、
「勿論、有り難く頂きます」
サクラは作り笑いを浮かべながら、
太郎達に砦まで食料を運ぶ様に指示を出す、
「オッサン、
もうヒューマン族に攻め込まれる事は無いと思う、
みんな元気に怪我の無い様に気をつけてね〜」
そう言いながら片手を振って、
サクラはヒューマン達の方へ向かって行った。
カムルはサクラの後ろ姿を見つめて、
(自分が星神呼ばわりしている事に気が付いて無いのか?
王都から届いている情報は本当だったんだな、
あんな魔法見せられたら…
ただ者では無いのは確かだ)
カムルの思いも知らずに、
サクラはヒューマンの兵士達の様子を見て、
(ヒューマンの国、
絶対に厄介な事起きてるよね…
面倒な王とか貴族絡みか、はぁ〜、
悩んでも仕方ない、
町クエは真面目にこなして行くか)
サクラは星神に声をかける、
「星神〜何かあった?」
星神は困ったように、
「サクラさん、みなさんの様子が変で、
何も説明してくれないので困っていました」
サクラは大きなため息を吐いて、
「えっと〜兵士長だっけ?隊長だったか?
1番偉い人、国がどんな状態か星神に説明して、
エルフの兵士は向こうにいるから聞こえないよ」
隊長のヴァイアンが顔を上げて、
「国家機密なので…」
サクラはわざと大きなため息をついて、
「はぁ〜あああ〜
どうせ王が変なアクセサリーのせいで暴走してるんでしょ?
鬼人族の国では…王が国民をアクセサリーの為に供物にしてた、
それと貴族が兵士の家族を人質にして、
無理矢理命令を聞かせてるってパターンもあったか、
後は貴族にアクセサリーを使わせて、
貴族を操作してた、
鬼人族の王はたくさんマレディク-ダンジョンの、
アクセサリー装備してたよ」
ヴァイアンは驚き何も言えないでいた、
そんな様子を見てサクラは、
「国の恥は隊長さんからは話せない、
もしかして…オッサンも貴族?
まぁ〜それは尊重して何も聞かないけど、
人の命が関わっているなら、
星神の望む通りアタシは助けに行くだけ、
それと、王の命令はもう来ないから、
みんなは好きな場所に帰っていいよ」
「王の命令が来ない?」
サクラは頷いて、
「ヒューマンの兵士がここでやってた事は、
迷惑行為なのよ、
大地や人の心を乱す行為は、
モンスターを巨大化させ、
星に悪い影響を与える、
それを止めるのもアタシの仕事、
ここにいる星神からの指示だからね、
ヒューマンの王を捕まえて、
後は星神を中心に国を回せばいい」
兵士達が顔を見合わせながら騒ぎ出す、
「ヴァイアン隊長、
星神様のご指示なら、
王も説得に応じてくれるかもしれません」
ヴァイアンは苦しそうな表情で、
「星神様、この少女の言っている事は本当ですか?」
星神はちゃんと話を理解して無いので、
なんて返事をすれば良いのか悩んでから、
「えっと、サクラさんは嘘はつきません、
今まで有言実行して来ました、
何か困っているのなら、
先に説明しておいた方が良いと思います、
何故なら…本当に王を捕まえますから」
ヴァイアンがサクラを見ると、
サクラは頷きながら嫌らしい笑顔をヴァイアンに向けていた。
ヴァイアンも何かを決心したのか、
国の状況を話し始める、
「お恥ずかしい話なのですが…
王と第一王子が病に伏せてから、
何処かに隔離されてしまい、
王の代わりにと出て来たのが第二王子のシャルーンです、
シャルーンは魔法があまり得意では無かったのですが、
王達が隔離された途端に、
上級の火の魔法が使えるようになり、
苦言を呈する貴族や王の側近達を、
火の魔法で黙らせ、
今は誰も逆らえない状態です」
サクラは頷きながら、
「それは絶対に確保ですな、
王が生きているならなんの問題は無い、
王に戻って貰えば良いんだから」
「王の安否は確認出来ていません」
「さすがに自分の父親を殺して無いと思いたい、
病気になった王はいい王だったの?」
「国民の生活と安全を1番に考えていたお方です、
今の王都の状態を見たら…
そんな状態にしてしまった我々王国兵士のせいでもある」
「そんな事は無いでしょ、
だって魔法で脅迫してたんでしょ?
変に逆らえば被害が大きくなったんじゃ無い?
取り敢えず、王都に行って王を探すよ、
それから、そのシャ…シャーを捕まえて、
王と交換して来る、
鬼人族の国より楽勝だね!」
兵士達は騒めき、
「そんな簡単に行くわけない」
「シャルーン様は本当に貴方を魔法で殺します」
みんなはサクラに無茶をするなと色々言って来た、
星神はみんなを落ち着かせる様に、
「ま〜ま〜みなさん、
サクラさんを心配する気持ちはわかりますが、
さっきもお話した様に、
有言実行しちゃいます、
そのシャー…シャ〜さんが、
捕まるのが嫌ならはっきり言わないと、
本当に捕まえるし、
王様がどんな病か分かりませんが、
サクラさんは治す事が出来ます、
ご要望は早く伝えないと、
直ぐに飛んで行っちゃいますよ」
サクラは「そう、そう」と頷きながら、
いきなり飛び上がって見せる、
ヴァイアンは本当に飛び上がったサクラを見て、
慌てて声をかける、
「ちょっとお待ちを、
本当に飛んで行くのなら、
私も連れて行って下さい、
いきなり城に入っては近衛兵に捕まります」
サクラはヴァイアンを見ながら、
「え?捕まら無いし」
星神もサクラを見上げて、
「ここにいらっしゃる兵士の皆さんも、
王都まで送ってあげて下さい」
「え〜自分達で帰れるでしょ、
これだけ兵士がいれば、
ギガントモンスターも倒せるだろうし」
「倒せるかも知れませんが、
怪我人は出ますよ、
危ないので送ってあげて下さい」
サクラはゆっくり降りて来て、
「ここから王都までどのくらい?」
ヴァイアンは安心したのか、
ちょっと息を吐いてから、
「ここからだと、
馬車で10日程かかります、
途中の町で休憩と物資の調達をすると、
12日位かかるでしょうか」
サクラは腕を組んで考える、
(ぶっちゃけ、
のんびり歩いてなんか行ってられないな…)
サクラはポンッと手を叩いて、
「分かった、
王都にはオッサンだけ連れて行ってもいい、
他の兵士は拠点で待機してもらう、
落ち着いたらポータル開いて帰ればいいでしょ?
それなら星神も納得してくれる?」
星神も手を叩いて、
「それなら安全ですね」
サクラは頷きながら、
「それでだ、
拠点での兵士のお世話は、
星神がするって事で宜しく」
星神は叩いていた手を止めて、
「はっ?それって何をすれば良いのでしょう?」
「寝る場所とか食事くらいかな、
ほら星神も戻って準備して」
サクラは星神の背中を押してポータルに戻すと、
兵士達に向かって、
「これから王都に行って来るから、
兵士達はアタシの拠点で落ち着くまで待ってて、
それなら隊長だけ連れて行ってもいい」
ヴァイアンも兵士に向かって、
「皆、すまない、
このお嬢さんの言う通りにしてくれ」
「隊長、落ち着くまでってどのくらいでしょう?
それに拠点って安全なのでしょうか?」
サクラは兵士達に人差し指をさして、
「星神が入って行ったでしょ、
星神が居る場所なんだから安全だし、
食料もたくさんあって、
癒し系の動物達もいる、
さぁ〜さっさと移動して、馬も忘れない様に」
兵士達は不安気にポータルを通って行くと、
目の前に草原が広がり、
精霊王があっちこっちに寛いでいて、
遠くには川や湖もあり、
平和そのものの世界、
拠点に入って来た兵士に太郎達が駆け寄って来て、
寛げる場所へと移動させる、
最後に馬が入って来ると、
クレアが馬に駆け寄って来て、
「なんだこの馬達は、
さっき入って来たのと違い疲れきってる、
人間に、な〜に〜さ〜れ〜た〜〜?」
クレアに睨まれた兵士達はビクビクしていたが、
クレアの頭をサクラがはたいて、
「オッサン、何してる、
前に入って来た馬は治療したから元気だったの、
この馬達は治療受けて無いだけだよ、
馬が人の馬車を引いたりしてたの知ってたんでしょ?
何を今更だよ、怒るなら守ってあげてよ、
その馬達の世話はクレアのオッサンに頼む」
クレアは頭をさすりながら、
「相変わらず忙しそうだな、
馬の世話は任せておけ、
川で体を綺麗にしてやろう」
クレアは馬に何か呟くと、
馬達が大人しくクレアの後をついて行った。
兵士達は呆気に取られて、
「もしかして今のお方は、
動物の精霊王様ですか?」
「そう、そう、動物精霊王…変態、
精霊王は全員いると思う、
何か聞きたい事あったら聞いてみるといいよ」
サクラがポータルで元の場所に戻ろうと振り返ると、
ポータルの前でヴァイアンが呆然と立っていた。
サクラはをヴァイアンの肩を叩いて、
「オッサンもここで待っててもいいよ」
ヴァイアンは激しく首を左右に振って、
「私は一緒に王都に行きます」
「そっか、決心は固そうだね、
じゃあ何も文句言わないでついて来て」
ヴァイアンは真剣な顔で頷いて
「勿論だ」と返事をする。
サクラはアイテムボックスから、
コッペパン飛行機を出して乗り込むと、
「アタシの後ろに乗って」
ヴァイアンは変な乗り物に驚き、
「これはいったい…」
「文句は言わない約束、
明るい内に王都に行くから、
さっさと乗ってくれないと置いてくよ」
ヴァイアンは渋々乗り込むと、
コッペパンは浮き上がり、
「太郎君、後は宜しく、
今日の夕飯は食べられないから」
サクラの言葉に反応した料理太郎が、
キッチンから凄い勢いで走って来て、
小さなトートバッグを渡して来る、
「太郎君これは?」
「マスターのお弁当、
ちゃんと食べて」
サクラは苦笑いしながら、
「ありがとう、用意してたんだ…
ちゃんと食べるよ」
サクラは手を振ってポータルから出て行った。
ヴァイアンはサクラの後ろで青い顔をして硬直している。
サクラが行った後、残された兵士達は、
「空飛ぶ乗り物って初めて見た」
「あれは乗り物だったのか?」
星神が笑いながら、
「あの乗り物が飛んでいるわけではないですよ、
サクラさんの風魔法を纏わせているらしいです」
突然現れた星神に驚いた兵士達は、
跪いてしまった。
星神は悲しい顔をして、
「跪くなんてやめて下さい、
何故、跪くのですか?」
「これは位の高い方々への敬意を表する姿勢です」
星神は「クスッ」と笑うと、
「私は位など高く無いから、
跪くのはやめて下さい、
私は世間知らずとサクラさんに良く言われるので、
良かったらみなさんのお話を聞かせて頂けたら嬉しいです」
兵士達は目を大きく開いて星神を見つめながら立ち上がり、
「では、どんな話をすれば良いでしょう?」
「まぁ〜まぁ〜、
そんな硬くならないで、
腰を下ろして楽しくお喋りしましょう」
そこにクリスタルゴーレムと手を繋いだピエールがやって来て、
「星神様、どこに行ってたの?」
「あっ?ピエール、
サクラさんに呼ばれて地上にいました」
「また小娘に使われていたのね、
それでこの兵士達はどうしたの?
凄い数いるけど」
「サクラさんが王都で仕事している間、
ここで待機する様に言われてました、
そうそう、ピエールは位が高い人って知ってます?」
「位が高い…?
あっ、もしかして、
人が勝手に作ったヒエラルキーの事じゃない?」
兵士達は星神達の会話に焦ってしまい、
ピエールに質問する、
「あの…
精霊王様達は星神様に跪く様な事はしないのですか?」
ピエールは首を傾げて、
「なんのために?」
「敬意を表すために」
「敬意…を表す?
勿論、星神様の事は尊敬しているけど、
跪くってなんか距離感があって嫌だわ〜
だからそんな事しない、アハハ」
兵士達はどう反応していいのか分からず、
ただ黙って星神達を見つめていたが、
近くで話を聞いていたノルが、
「精霊王様、兵士さんが可哀想ですよ」
「ノル、あんた、いたの?」
「はい、太郎達に手伝いを頼まれて、
あの…ヒューマンの兵士さん、
ここでは上下関係は関係無いので、
普通にのんびり過ごして下さい、
こちらの方々は、普通じゃ無いので、
天然と言うか…世間知らずと言うか、
気にしないで下さい」
ピエールはノルを見つめて、
「ノルって最近サクラに似て来て無い?」
「はぁ〜?全然似てないですよ、
一緒にしないで下さい」
ピエールはノルの返事が受けたのか、
大笑いして、
「ア〜ハハハハ、そこまで嫌う事無いでしょ」
「きっきらって無いです、恩人ですから」
その時、クリスタルゴーレムが、
「ピエール、お前の事、
マスターに伝える、
マスターは私達の主人、
マスターをバカにする奴はここから追い出す」
ピエールはゴーレムにすがるように、
「そんな事言わないでぇ〜、
バカになんかして無い〜」
ピエールが大きな声を出していたら、
料理太郎がやって来て、
「ノル、なんでこんな所にいる、
これから兵士の分の食事を作る、
早くキッチンに来て手伝え、
ゴーレムお前もだ、
そこの変な奴は放っておけ、
兵士達もこんな機会は無いんだから、
ゆっくり寛いでいろ、
星神はウロウロするな、
慣れない兵士が気を使うだろ、
ピエールはうるさい、
端っこで静かにしていろ」
指示をテキパキと告げてキッチンに戻る太郎、
ノルとゴーレムも後をついて行く、
叱られた星神は乾いた笑顔のまま、
キッチンのテラスに座る、
ピエールも呆気に取られた顔で、
星神の横に座って小さな声でブツブツ言っていた。
星神と精霊王はこの世の中で一番崇高な存在と、
小さい頃から大人達に教えられて来た兵士達、
星神と精霊王は、
変なエプロンを着ている木の人形に叱られ、
エルフの青年には天然呼ばわりされている…
兵士達は頭がごちゃごちゃになる、
ただでさえ国は色々な問題を抱えて、
ここ数年、心休まる日も無かった、
そんな世界と無縁なこの拠点、
周りを良く見ると、
変な生き物が楽しそうに遊んでいて、
それを眺める精霊王達とエルフの子供、
遠くにはエルフ達が楽しそうに、
お茶をしながらお喋りをしていた、
兵士がポツリと、
「ここは…私達が居た世界と同じなのか?」
「同じには思えないな、
なんて…平和な風景」
そこに大きなトレーに、
たくさんの水とカットフルーツを乗せた太郎が来て、
「お前達、食事の時間までこれでも飲んで待っていろ、
後はここで採れたフルーツだ食べろ、
元気が出るぞ、
色々大変だったろう、ここでは休め」
素っ気ない話し方の太郎だが、
何故か兵士の心に、
太郎の優しさが染み渡り、
兵士の目から涙が溢れていた。
次に現れたのは、
ピアノを持った小さな太郎達、
「音楽で心を癒せ」
そう言って温かいメロディーが流れ、
太郎達が歌い出す、
兵士達が自然と集まり、
太郎達の歌に涙を流すのであった。
読んで頂きありがとうございました( ̄∇ ̄)/




