バルとエイストとエルフの王と オタク女子
忍者太郎達にエルフの王都に連れて来られてバルとエイスト、
ジョルジュの王らしく無い態度や言動にあたふたする、
エルフの王都は優秀な王のお陰で、
比較的平和な毎日を送っていた、
ギガントモンスターが出現しても、
鍛えられた兵士によって討伐される、
そんな王都に忍者太郎が尋ねて来た事で、
王がソワソワする時間が増えた事に、
宰相や側近達は戸惑っていた。
王ジョルジュは急に立ち上がり、
「だから、何度も説明したが、
バルとエイストの手紙に書いてあった事を確かめに行きたい、
捕まえた鬼人もこちらで引き取って、
尋問した方がいいだろ?」
宰相は頭を抱えて、
「こちらからも何度も説明しましたが、
モンスターが巨大化している今は遠出するのは危険です、
陛下はこの王都を守る事に集中して下さい」
ジョルジュは窓の外を眺めながら、
「宰相達は分かって無い、
あの者とは繋がりを持つべきなんだ、
モンスターを倒した時のあの身のこなし、
たった1人で倒してしまったんだぞ、
我が国の兵士も強いが、
ギガントレベルのモンスターを倒すのに、
兵士200人は必要になる、
ハイポーション100本以上、
死人は出ないが怪我人は半分以上は出る、
ハイポーションが無ければ死者も出るだろう、
ポーションの材料だって残りわずかだ、
被害が広がる前に手を打たなければならない、
ただの私の趣味だけで、
行きたいと言ってるわけじゃ無い事を理解して欲しい」
「ならば、違う者達に行かせましょう、
陛下が行くとなると兵の数も増えますが、
違う者ならそこまで用意しなくても良いでしょうから」
ジョルジュは振り返り宰相を睨みつけて、
「ぐっぬぬ」と口から漏れる、
宰相は涼しい顔でジョルジュの顔を眺めて、
「やはり、
ご自分の興味が優先された考えの様ですな、
その様な強者が現れたなら、
いずれモンスターの件も落ち着くでしょう、
それまではこの王都の事に集中して頂きたい」
ジョルジュは何も言えずに、
目を窓の外に戻し街道を見つめる、
エルフの王都は、
敷地の中央に高台を作り、
高台の上に城を建て、
城から東西南北全てを確認出来る様になっている。
城下町も良く見えるので、
何か騒ぎがあれば直ぐに兵士が対応していた。
ジョルジュはその見通しの良い窓から街道を見つめていた、
すると街道の奥の方から、
黒い点が2つ凄い勢いでこちらに向かっている、
「あれはなんだ?」ジョルジュが呟く、
近衛兵長がジョルジュの横に立ち街道を見つめ、
「何かが向かって来ますな、
直ぐに城門に向かって確認を取って来ます」
ジョルジュは近衛兵長を呼び止め、
「待て、私も行く」
近衛兵長は嫌な顔をして、
「陛下はまだ会議中では?
安全が確認出来るまでここでお待ちを」
ジョルジュと近衛兵が見つめ合って、
時間が止まった様になり、
宰相と側近達は何事かと2人を交互に見ていたが、
ジョルジュが急に走り出して、
部屋を出て行ってしまった。
近衛兵長も慌てて追いかけながら、
「王を止めろ〜」と叫びながら走る、
ジョルジュは選ばれし者、
運動神経も普通では無かった、
華麗に兵達を避けて、
階段を勢い良く降りて行くと、
そのまま窓から飛び出して行った、
城から飛び出して走り去る姿を、
城の門番の兵士が唖然と見ていると、
近衛兵長のホーマーが、
「何をボーっと眺めてる!王を止めろ〜」
ジョルジュはあざ笑うかの様に走り去って行った、
町中は人通りもあり、
それを避けながら走っていたが、
「王様だ」
「あっ王様何かあったのですか?」
王が凄い勢いで走る姿を見て、
町の者達は不安な顔をしていたがその後を、
近衛兵長と兵士達が凄い形相で、
王を追いかけている姿も見て
ますます不安になる人々、
それから少し時間を置いて、
宰相達も現れて、
何も心配は無いと説明しながら通り過ぎて行った。
城門でも向かって来る者に気がついて、
緊張に包まれていたが、
向かって来る者の姿が確認出来ると、
一瞬ホッとしたが…
違う問題が頭に蘇り城に目を向ける、
大通りの方から騒ぐ声が近付いて来る事に気付き、
兵は門の前に1列に並んで誰も通さないように塞ぐ、
人の間を潜り抜けてジョルジュが城門に着くと、
「門を開けろ」
兵士が「どんなご用件で?」
「街道から城に向かって走って来る者がいる、
それが何なのか確かめる為だ」
「それは陛下の役目ではありません、
どうぞ城にお戻り下さい」
そんなやり取りをしている間に、
近衛兵ホーマーが息を切らせてやって来て、
「陛下は下がってください」
ジョルジュはホーマーに振り返り、
「何故、そこまで私を引き留める?」
「まだ何者か分かって無いからです」
「敵では無いのは分かっているだろ」
そこに門の外から声が響く、
「バルとエイストを連れて来た、
誰か迎えに来い!」
ジョルジュは忍者太郎の声を聞いて、
城門に聞き耳を立てて、
「はぁ〜あの時と同じ声、
早く開けろ、バルとエイストを、
連れて来たと言ってるじゃ無いか」
ホーマーがジョルジュの前に出て、
「では、私が先に出ます、
陛下はその後について来てください、
他の者は陛下を囲む様について来い」
ホーマーはゆっくりと門を開けて、
正面に立つ忍者太郎2人と、
その背後にある見た事の無い乗り物を、
警戒しながらゆっくり進んで、
「バル殿とエイスト殿はどこにいる?」
忍者太郎は黙って、
キャンピングリヤカーのドアを開けて、
「ここに乗っている」
ホーマーはジョルジュに待つように手で合図して、
ドアの中を覗くと、
バルとエイストが座席で気持ち良さそうに寝ていた。
「何で寝ているんだ?」
「マスターがやった、
理由は本人が知っているから早く起こせ」
ホーマーは恐る恐る中に入って、
思ったより中が広いのに驚いていたが、
それよりも、
ベッドや見た事の無いシンクの方に目を奪われていた。
「なんだこれは?動く家の様だな」
そんな事を呟きながら、
バルとエイストの肩を揺すって、
「バル殿、エイスト殿、目を覚まして下さい」
バルとエイストはホーマーの声に目が覚め始めて、
エイストはホーマーの顔を見て、
「んん?ホーマー?いつ来た?」
「エイスト殿、
寝ぼけて無いでしっかりして下さい、
バル殿も早く起きて説明をして下さい」
中の声が聞こえて来て、
ジョルジュは待っていられなくなり、
キャンピングリヤカーの中に入ってしまい、
「なんだこれは?
中が家の様になっているでは無いか?」
ジョルジュはシンクに近寄り、
蛇口の栓を開けると、
「おおお〜水が出た、
こっちはなんだ?
調理ができる様になっているのか?」
バルはジョルジュの声で飛び起き、
「陛下、何故ここに?」
ジョルジュはバルを見て、
「何を寝ぼけた事を、
お前達が王都に来たんだぞ」
バルとエイストはお互い顔を見合わせて、
慌ててキャンピングリヤカーから降りて、
周りを見回している、
「バル殿これは…あの娘にやられましたな」
バルは頷いて
「その様だな、
でも…本当に明るい内に着いてしまったのか?」
そこにいた忍者太郎が「フンッ」と鼻を鳴らして、
「お前達がマスターを、
ここに連れて来る計画なんか立てるからだ、
正面から頼めば来てくれる」
バルが忍者太郎の顔を見上げて、
「王に会ってくれと何度か頼んだぞ、
だけど嫌がっていたじゃ無いか」
「頼み方が悪い、
何で王に会わなきゃなら無い?おかしいだろ、
この王都には紫の悪魔にかかった者はいないのか?
モンスターと戦って四肢を無くした者は?
その者達を助けて欲しいと言えば直ぐ来てくれただろ」
バルとエイストは「あっ」と言った後何も言えなくなっていた。
中を十分観察したジョルジュが出て来て、
「何の話をしている?」
バルとエイストはバツが悪そうに、
「いえ、何でもありません、
急ぎ伝える事がありましたので、
こちらに伺いました、
ここで話す様な内容では無いので、
城に戻りましょう」
ジョルジュは興味津々な顔で、
「お前達、何か隠そうととして無いか?」
バルはため息をついて、
「はぁ〜私達が陛下に何を隠すのです?」
「ホーマーもそうだが、
私が興味を持つ物から切り離そうとするだろ?
この太郎とかいう者の事から話してもらおうか?」
バルは開き直ったように、
「何でもお話ししましょう、
ただ、条件があります、
ジョルジュ様は王の役目をちゃんと理解してますな?」
「それは理解している」
「200年の任期もお忘れでは無いですよね?
署名もされているのですから、
これから何を聞こうと、
個人的な我儘は絶対に言わ無い、
勝手な行動を取ら無い約束をして下さい」
ジョルジュは楽しそうに手を頬に当てて、
「そこまで釘を刺すと言う事は、
私が興味ある内容って事か?
約束するよ、
私だって責任ある立場だって理解している」
バルは頷き、エイストは不安そうにしていた、
「まずこの戦士は忍者太郎と言う者です、
ある者が召喚した戦士ですので、
ジョルジュ様が欲しいと言っても、
絶対に手に入る事はありません」
ジョルジュは「はぁ〜」とため息をついてから、
「そうゆう所だよ、
ある者がって誰だ?
隠そうとして無いか?」
エイストがバルに向かって頷き、
「最初から私がお話ししましょう、
ただ、これから話す人物とは、
良い関係でいなければなら無い事を、
ちゃんと理解して下さい」
ジョルジュが頷くと、
太郎が話を割って入って来た、
「お前達、話をここでするのか?」
ジョルジュが嬉しそうに、
「そうだ、ここで話をする」
太郎達は頷いて、
「支度をするちょっと待ってろ」
そう言ってからキャンピングリヤカーの天井から、
テントの布の様な物を引っ張って屋根を作り、
車体の下から折り畳みのテーブルと椅子を出しセットすると、
「ここに座って話をしろ」
バルとエイストは呆れた顔で椅子に座っていたが、
ジョルジュはワクワクが止まらない顔で座る、
もう1人の太郎がキャンピングリヤカーの中から、
果物がいっぱい入った、
デドックスウォーターをピッチャーで持って来て、
コップに注いで、
「これを飲みながら話すが良い」
次に太郎は周りにいた兵士に、
「マスターから持たされた食料はいるか?」
ホーマーは首を傾げて
「食料を頂けるのですか?」
太郎は頷いて、
「食料が足り無い所に配っている」
ジョルジュが嬉しそうに手を挙げて、
「頂きます!兵士に渡して下さい」
太郎達はもう一台のキャンピングリヤカーから、
小麦粉や果物、野菜を運び出して、
兵士達に渡して行った。
ジョルジュは楽しそうにその光景を眺めながら、
デドックスウォーターを一口飲むと、
目を丸くしてコップを見つめる、
「なんだこの水は?凄く美味しいんだが?」
バルとエイストは苦笑いをしながら、
「それも含めてご説明しましょう」
エイストはサクラとの出会いから説明を始める、
ジョルジュの目が輝き聞き入っていた、
途中で話はバルに変わり、
救出された話を詳しく説明し直し、
今朝突然呼び出されて聞かされた鬼人族の国と、
マレディク-ダンジョンのアクセサリーの説明に入っていった。
ジョルジュは顔を高揚させて何かを考えている、
エイストが心配そうに、
「陛下?大丈夫ですか?
アクセサリーに関しては、
エルフ族には関係は無いと思うのですが、
封鎖を強固な物にした方が良いかもしれませんな」
ジョルジュは満面の笑みを浮かべて、
「ダンジョン?それは大丈夫だ、
今は隣の町に行くのも大変な状態だ、
命をかけてまで行こうとは思わ無いだろう、
ただ、ダンジョンと紫の悪魔の関係は、
いつか調べなければなら無いだろうがな」
バルが手のひらをジョルジュに向けて、
「それも必要無いと思います、
あの娘がダンジョン調査に行くと言ってましたから」
「その娘は結局何者なんだ?」
バルとエイストは黙る、
2人の顔を交互に見て、
「全部話すって言ってただろ?」
エイストが空を見上げて深呼吸をしてから、
「別に隠そうとした訳ではありません、
ただ荒唐無稽な話なので、
実は私達は星神様と、10人の精霊王様達に会いました、
星神様が仰るには…全能神様が導かれた者だと」
ジョルジュは急に立ち上り、
「何だって〜!」
バルが慌てて、
「ちょっとお待ち下さい、
今、頭の中でどんな想像したかわかりませんが、
全然その様な雰囲気は無い少女です、
あまり美化しません様に」
ジョルジュは首を傾げて、
「美化なんかしないさ、
その少女が召喚した戦士が彼らだろ?
少女と言われて納得だ、
子供ぽい発想だからな」
「でも、気をつけて下さい、
彼女との関係はこれからも上手くやっていきたいので」
ジョルジュは自慢げな顔で、
「何を心配している、
お前達も知っているだろう、
私が婦女子に良く思われている事を、
私の誘いを断る女性は今までいなかった」
バルとエイストは呆れた顔でジョルジュを見て、
バルが、
「正直言って、陛下は、
彼女の苦手なタイプだと思います」
「何故だ、全てが揃っている、
容姿、頭脳、身体能力、魔法能力、剣術」
「そうゆう所が多分駄目だと思います、
因みに、紫の悪魔に呪われている者はどの位いますか?」
ジョルジュは不愉快そうに、
「なんだそうゆう所とは?
紫の悪魔は確か20人ちょっといたか」
「怪我人や他の病にかかっている者は、
把握していますか?」
「把握はして無いが、
モンスター狩で大怪我をした者なら、
確か100人は超えているはず」
「では、今度日を改めてその者達を、
1箇所に集めて下さい、
治療院の前とかが良いでしょう」
ジョルジュは訝しげに、
「何でだ?」
「その娘に全員の治療をお願いします、
陛下は何も言わずに見てるだけにして下さい」
「王としてお礼はしないと…」
エイストはジョルジュの話の腰を折って、
「要らないです!
こちらの方でそこら辺は上手くやります、
陛下は太郎達と仲良くしたいのですよね?
城にも居てもらえればモンスターの不安も消えます、
私の所とバル殿の所にも、
ギガントモンスターが居なくなるまで、
太郎達を借りていますから」
ジョルジュはエイストを指差して、
「なんだ、それはずるいぞ」
「ずるいと言われても、
私達の様な小さい町には兵士も少ないので、
大変だったのですが、
太郎達のお陰で平和になってます、
だからこそ、余計な接触は避けて頂きたい、
太郎から見て、マスターは王をどう思う?」
太郎はジョルジュをじっと見て、
「ナルシーは嫌いだと思う、
だがマスターをバカにするな、
いくら王が苦手な奴でも、
病人は全て治してくれる」
ジョルジュは太郎をうっとり眺めて、
「太郎、ナルシーとはなんだ?」
「お前みたいに自分を大好きな奴」
「はぁ〜そうか、
では、本当にそうか証明してもらおう」
バルとエイストは頭を抱えて、
「私は忠告しましたぞ」
ジョルジュは自信ありげな顔で、
「分かっておる、
ではいつ来てもらおうか?」
バルとエイストは目を合わせて、
「エイスト、我らが居る時の方がいいだろう」
「私もそう思います、
太郎、マスターに病人約130人位の治療を頼んでもらえないか?
それといつ来てもらえるかも聞いてくれ」
太郎は頷く、
ジョルジュは不思議そうに、
「今聞いているのか?」
「はい、念話が使えるそうです」
「ねっ念話だと!
何の魔道具も使わないで…
素晴らしい、どの様な仕組みになってる?」
ジョルジュの興奮した姿を見てエイストが、
「陛下、落ち着いて、
いきなり質問攻めとかやめて下さいよ」
そこに太郎が、
「マスター、いつでも良いそうだ」
ジョルジュは目を輝かせて、
「それではいつにしよう」
太郎はジョルジュを見つめて、
「マスターは忙しい、
今から怪我人を治療院の前に集められるなら集めろ」
ジョルジュは驚いた顔で太郎を見上げて、
「今からって…そのマスターはどこにいる?
直ぐに来れるのか?
分かった直ぐに準備しよう」
ジョルジュは兵達に声をかけて、
王都の中に急いで戻って行った。
バルとエイストは太郎の顔を見つめて、
「本当に今から来れるのか?
太郎の走りが速いのは知っているが、
流石に数時間はかかるだろ?」
太郎は「クスッ」と笑ってから上を指差し、
バルとエイストが見上げると、
サクラが空高く浮いていた。
エイストが思わず、
「え〜いつの間に?」
サクラはゆっくり降りて来て、
「オッサン、大きな声を出して、
音速を超える速さに挑戦中だ、
さてとさっさと終わらせて帰るけど、
オッサン達はどうする?
ポータルで町まで送れるけど、
キャンピングリヤカーで帰る?」
バルが怒った顔で、
「そうだ、言いたい事がある、
眠らせて無理矢理連れて来させるとは」
サクラは両手を広げて、
「やれやれだよ、
アタシの世界では、
おじいちゃんより年取っている人が、
この乗り物に乗って旅行とか行くの、
全ては慣れだよ、
乗り物に慣れれば動きやすいでしょ?」
エイストは頷いて、
「確かにそうだが、
ちゃんと説明はしないといけないぞ」
「アタシは効率厨なの、
説得なんかしてる暇は無いんだよ、
それで帰りは明日?」
「いやいや、我らも忙しい、
ポータルでお願いする」
サクラは頷いて、
「太郎君、持たせた食料は渡したの?」
「全て渡した」
「じゃあキャンピングリヤカーはもう必要無いね」
そう言ってアイテムボックスに、
キャンピングリヤカーをしまって、
高く飛び上がり、
王都の様子を見て治療院の場所を確認すると、
「じゃあ治療に行って来る、
太郎君達はアタシの中に戻って」
バルとエイストは何が起きたか理解できず、
反応するのに遅れて、
「ちょっちょっと待って〜」
そう叫びながら王都に入って行った。
サクラは治療院に入ると、
10体の太郎を出して、
いつもの流れで治療を始めていく、
治療院にいた治療師達は、
兵からの連絡をさっきもらったばかりで、
こんなに早く来るとは思っていなかったので、
戸惑っていた…が、
患者が回復して行く姿を見て驚きつつ、
太郎達が献身的な態度で患者達に、
水を飲ませて行く姿を見て、
自然と手伝いを始めていた、
ある治療師がサクラに向かって、
「この水は何か特別な水ですか?」
サクラは治療をしながら、
アタシが魔法で出した水に、
果物を入れただけの水、
なんか飲ませた方が元気になる感じがして飲ませてる、
紫の悪魔にかかっていた人は、
脱水症状の人が多いから飲ませているけど」
サクラはサーチをして、
患者の状態を見せる、
「ほら、軽い脱水症状って書いてあるでしょ、
これ酷いと重い脱水症状って表示されるんだ」
なんて事ない様に説明しながら、
治療して行くサクラの姿を、
治療師達は唖然と眺めて、
「サーチって何の魔法?」
「聞いた事無いぞ、
それにあの子供は誰なんだ?」
太郎が治療師達に向かって、
「手が止まってる、
邪魔をするなら外に出てろ」
治療師達は慌てて手伝いに戻って行ったが、
1人の治療師が太郎に、
「あの…この水を私も飲んで良いですか?」
太郎は頷いて、
「好きなだけ飲め、体にいいぞ」
治療師は水を飲むと、
あまりの美味しさに止まらなくなり、
コップ一杯の水を一気に飲み干した、
それに釣られて他の治療師達も水を飲んで、
「これ…ただの水じゃ無いな、
体力と気力が戻っていく」
「わかる、疲れが飛んだ」
治療師達が騒ぎ出すと、
太郎に睨まれて慌てて手伝いに戻った。
王都の治療院に入院してた人の数は、
エイストの町の治療院に比べて少なく、
あっという間に治療が終わった、
治療院の前には怪我をした元兵士達が、
兵士に連れて来られ待機させられている、
サクラがいきなり近付いて来て、
手を触ったり、顔を撫ぜたりされて、
驚いていたが、
自分の体が元に戻った事に気が付き、
だんだんとその場が騒がしくなっていく、
バルとエイストもその場にやっと到着し、
サクラが治療をして行く姿を黙って見守っていた、
ジョルジュは城門でサクラの到着を、
心待ちにしてたが、
忍者太郎達がいない事に気付き、
「あれ?太郎達はどうした?
あの変な乗り物も無くなっている」
そんな事を呟いていると、
王都の奥から歓声の様な声が聞こえて来て、
ジョルジュは門番達を睨みながら、
「まさか、もう来ているのか?」
門番は
「何の事でしょう?
バル殿とエイスト殿が、
城に向かって走って行ったのは見てます」
ジョルジュは「チッ」と舌打ちをして、
治療院に向かって走って行く、
その後ろをホーマーが追いかけながら、
「陛下、舌打ちはいけません」
ジョルジュは振り向きもしないで、
「うるさいぞ、
こんな面白い事を見逃してたまるか」
本音がダダ漏れのジョルジュの背中に、
ホーマーがため息をついていた。
サクラの治療速度はますます早くなって、
ジョルジュが到着した時は、
2人の患者が残っていただけだった、
片腕を無くした元兵士の腕を、
なぞる様に復元して行くサクラの姿を見て、
ジョルジュの興奮は頂点に達し、
興奮した顔をサクラにズイッと近付けて、
ニコニコ笑って見せる、
サクラは引き気味に、
「なんだコイツ…気持ち悪い」
ジョルジュは初めて自分に向けられた言葉、
気持ち悪いが心の中で響き渡る、
(気持ち悪い…気持ち悪い?
気持ち悪いって褒め言葉だったか?)
そんな事をグルグル考えていると、
太郎がジョルジュの首根っこを掴んで、
ズルズルと引きずってサクラから離す、
離した場所には2人の太郎が立ち塞がり、
「マスターに近付くな!」ときつく言われる、
最後の患者は両足を膝から下を失っていたが、
質の良さそうな義足をつけている、
見た目は中年男性で、
鍛えられた体をしていた、
男性の事が心配なのか、
奥さんと女の子が男性に寄り添って待っていた。
サクラは男性に向かって、
「お待たせしちゃったね、
ちょっと義足を外して見ても良い?」
男性は、サクラが子供だと思ったのか、
笑いながら頷き義足を外してくれた。
サクラは傷口を見て、
「傷口が凄く綺麗だね?
治癒魔法で治したの?」
男性は首を左右に振って、
「これはハイポーションを使ってもらえたから、
こんなに綺麗なんだよ、
そのお陰で義足をつけてもそんなに痛く無いんだ」
「へ〜ハイポーションか?見てみたいな、
じゃあ治療してくね、
痛く無いから、奥さんもお嬢ちゃんも、
安心して見ていてね」
サクラは目を閉じて、
男性の膝の辺りから、
スウっと手で撫ぜる様に光りを当てると、
光の中で足が再生していった。
奥さんは手で口を塞いで涙を流し、
まだ小さい子供は面白い物を見る様な目で見ていた、
両足が元に戻って家族が抱き合って泣いていたが、
サクラが男性に、
「裸足で帰るのも嫌でしょ、
これ履いて帰ってね」
そう言って最近魔法の練習で作っていた、
ゴムサンダルを出して渡す、
男性はビックリした顔で、
サンダルを受け取りながら、
サクラの手を取って、
「お嬢さん、本当にありがとう、
こんな奇跡が起こるなんて、
なんて言って良いのか…」
サクラは満面の笑みで、
「おじさん、
幸せに暮らしてくれればそれで良い、
お礼をなんていらないから」
そこに女の子がサクラに向かって、
まだたどたどしい話し方で、
「オネエサン、ありがと」
そう言って木を削って作られた花を渡して来た。
「え?これもらって良いの?」
女の子は恥ずかしそうに頷く、
サクラは女の子が可愛くって、
思わず頭を撫で回した後、
「じゃあ、プレゼント交換」
サクラはゴムのボールを魔法で出して、
女の子に渡すと、
女の子は不思議そうにするだけだった、
サクラは同じボールを出すと、
太郎にパスをした、
ボールを受け取った太郎は、
女の子にドリブルをして見せる、
女の子は嬉しそうにボールを地面に落として遊び出した。
周りで見てた子供達も羨ましそうだったので、
「おじさん、この町には子供は何人位いる?」
おじさんと奥さんが顔を見合わせて、
「確か120人位だったかと」
サクラは大きなネットを出してから、
ネットの中に、
ボールをたくさん出して太郎に配らせる、
サクラは立ち上がるとバル達を探して、
「おじいちゃん、オッサン、
全員終わったから帰るよ〜」
そう声をかけると、
ジョルジュが「ちょっと待った〜」と叫ぶ、
サクラは凄い嫌な顔をしてジョルジュを見ていると、
バルとエイストが慌ててジョルジュに向かって行き、
「陛下、これ以上は関わらないでください」
「お前達ずるいぞ、
お前達の町には太郎を貸してもらっているのだろ?
私も太郎を貸して欲しい、
お嬢ちゃんだって、元兵士の治療をして、
モンスターの脅威がわかっているはず、
これ以上怪我をさせたく無いだろ?」
サクラはジョルジュをじっと見つめて、
「おじいちゃん、コイツは誰?」
サクラの言葉に周りが騒つく、
近衛兵の1人がサクラに向かって、
「小娘、無礼であるぞ、
この方はこのエルフの国の王である、
跪き敬意を払え」
その場が凍りつく、
バルとエイストは「ああああ〜」と叫んだ後、
バルは様子を見に来てた宰相に駆け寄って耳打ちをして、
エイストはサクラに物申していた兵士の口を塞いでから、
「いや〜娘さん、
確かにこのお方はエルフの王ですが、
ここまで兵士達に良くしてくれた人に跪けなんて言いません、
この兵士が勝手に口走った事だから気にするな」
サクラは顎に手を当てて何かを考えていたが、
「アタシは誰にも跪かない、
王とか貴族とか関係無く、
命を救って怪我を治していく、それだけ、
忍者太郎も2人貸してやっても良い、
ただ〜し!それは国民の安全為、
王が私物化する様な事は絶対に許さない、
それを理解したなら貸すけど」
ジョルジュは大喜びでジャンプしていた、
バルから耳打ちされていた宰相がサクラに向かって、
「先程は大変失礼な事を申しました、
ご気分を害していませんか?
あの兵士にはきつく叱っておきますので、
それと、あんなにたくさんの食料を頂いて良いのでしょうか?」
サクラは太郎達に出来るだけ食料を、
アイテムボックスから出して、
空いてる場所に置く様に指示していたのだ、
サクラは頷いて、
「食料はいくらでも提供出来るから、
足りなくなったら太郎君に言って、
直ぐに届ける」
宰相は嬉しそうに頷いて、
「こちらが受け取るだけでは申し訳ないです、
こちらから何かお礼は出来ないでしょうか?」
サクラは「う〜ん」と唸りながら空を見上げてから、
ポンと手を叩くと、
「そうだ、ポーション見せて」
宰相は不思議そうに、
「見せるだけですか?」
サクラはウンウンと頷いて、
「サーチしたいだけだから」
宰相は「サーチですか?」そう呟きながら、
その場に居た治療師に指示を出して、
ポーションを持って来させると、
「これがローポーション、
これはポーション、
そしてこちらがハイポーションとなってます」
サクラはポーションに向かってサーチの魔法を使うと、
材料とその割合が表示される、
宰相は驚いて表示された情報を眺めていた、
「へぇ〜3種類材料も違うんだ」
「そうですね、
ローポーションは比較的手に入り易い材料ですが、
ハイポーションとなるとなかなか手に入れるには難しいですね」
サクラは宰相に向かって、
「ありがとう、これで錬金術の練習も出来る、
このハイポーションの材料の蛇の頭、
欲しかったら分けられるけど、どうする?」
宰相は驚いて、
「いや、そんな貴重な素材を頂くなんて」
サクラは苦笑いをしながら、
「その貴重な蛇を毎日狩って来る太郎君が居て…
アタシのアイテムボックスが凄い事になってる、
もらってくれると助かる、肉もついでにね」
宰相は顔を引き攣らせて、
(バル殿が言ってた事が分かった様な気がする、
絶対に敵対…いや嫌われるのも問題になる、
王は絶対に近付けない様にしなくては)
「そうですか、ではお言葉に甘えて頂きます」
サクラは嬉しそうに太郎に指示を出して、
2体のギガントスネークを大通りに並べて出してもらう、
広い大通りを埋め尽くす程の太いスネークが2体並んで、
その場に居た人全員が驚愕していた、
ジョルジュだけは大はしゃぎで、
スネークを見て回っていた、
サクラは宰相に挨拶をして、
バルとエイストに声をかける、
「今度こそ本当に帰るよ〜」
バルとエイストはサクラに駆け寄って行ったが、
ジョルジュがまたしても声をかけて来た、
「ちょっと待て、
バルそこの者を女性と言っていたが、
本当は、男性なんだろ?
女性ならば私を見て気持ち悪いなんて言うわけが無い、
目を輝かせるのが普通の反応、
そこをちゃんと説明してもらわないと私の立場が悪くなる」
宰相が凄い勢いでジョルジュまで走って行って、
口を押さえたがもう遅い、
バルとエイストは冷や汗をかきながら、
サクラの様子を伺ってみると、
サクラは目を見開いてジョルジュを見て、
腹を抱えて笑い出す、
「ア〜ハハハハ、マジ?
本当にこんな人いるんだ?
世の中の女性はみんな自分を好きになる的な?
ア〜ハハハハ、バカなんだな、
世間知らずとも言う?
立場が悪くなるって何?
ねぇ、おじいちゃん達、あいつが言ってる事って本当?」
バル達は呆気に取られてサクラを見てから、
「それは…ジョルジュ様が王に選ばれた時、
容姿端麗、全ての才能がある人物と言われてました」
サクラは目を細めて、
「へぇ〜外側がいくら良くても、
歳を重ねる度に崩れていくのに、
そんな事にこだわって生きていくのは辛いだろうな…ご愁傷様、
いくら見た目が良くても中身が腐っていたら、
何の魅力も無いね、
太郎君達のがカッコいい、
アタシが女性か男性かどっちでもいいよ、
アタシはアタシだから、
それと太郎君達は、
ギガントモンスターが出現しなくなったら返してもらうからね、
ではお邪魔しました」
サクラはバルとエイストの町までのポータルを開けて、
それぞれのポータルに押し込んだ後、
拠点のポータルを開けて、
中に入ろうとした時、
星神がポータルから顔を出して、
「あっ、サクラさん何処に行ってたのですか?」
星神の姿を見てその場は騒然となる、
宰相は星神に駆け寄って跪き、
「星神様ですか?本当に本物の?」
突然声をかけられた星神は、
「はい、そうです」
星神が答えた瞬間皆が跪き首を垂れる、
さすがのジョルジュも驚いて跪いていた、
星神が皆が跪くのを見て、
「みなさん、そんな事するのはやめて下さい、
私はただ星の調整をしているだけの者です、
サクラさんここはどこですか?」
「エルフの王都だよ、
病人の治療に来てただけ」
「サクラさんいつもありがとうございます、
皆さん、
私は皆さんに何も出来ずに申し訳なく思っています、
だけど彼女が来てくれた事で星も良くなって来ました、
後少しの辛抱ですよ、
それまで、怪我のない様に過ごして下さいね」
そう言ってニコニコしている星神、
星神の能天気な挨拶に、
サクラは吹き出しそうになっていたが、
エルフ達は呆然と星神を見ていた。
サクラは星神をポータルに押し込んで振り返り
「星神も言ってたけど、
怪我しない様に自分を大切にね〜」
そう言ってポータルを閉めてしまった。
そこに残された人達は、
神話で語られていた星神が本当にいた事に興奮し、
次にその星神と普通にやり取りしていた、
子供の正体が気になり始める、
ジョルジュだけはバル達にサクラの事を聞かされていたが、
すっかり忘れてサクラに酷い事を言ったかもと反省するのだった。
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