鬼神族の国に行く オタク女子
鬼人族の町に到着したサクラ達、
情報は手に入るのか?
拠点の夜明け前、
サクラがせっせと何かを作っている、
サクラの近くで寛いでいるルーア一族、
他の者はまだ寝ていてとても静かだ、
サクラの近くで作っている物を、
興味津々で見ていた3匹の子供のウルフが、
「マスター、これ何?ウルフ用ベッド?」
サクラは吹き出し、
「プッ、ベッドに見える?
もしかしてこんなベッド欲しいとか?」
ウルフは首を傾げて、
「狭いかも」
「そうだよね、これじゃ狭いよ」
サクラが作っていたのは、
中をくり抜いたコッペパンの様な形の乗り物で、
真っ白に色付けられていた。
コッペパンの中は三等分に分けられ、
座れるようにシートも付いていた。
サクラがコッペパンに乗り込むと、
風魔法でコッペパンを風で纏い、
ゆっくりと浮き上がって行く、
子供ウルフは大喜びでクルクル走り回る、
ルーアが片目を開けて、
「お前達うるさいぞ、
マスターがやっている事に、
いちいち騒ぐな」
「だってボス、飛んでるよ、
僕も飛んでみたい」
ルーアは空に浮かんだコッペパンを見て、
「マスター、ちょっと乗せてやってくれ」
コッペパンは降りて来て、
「まじ?乗りたいの?
乗っても良いけど、絶対動かないって約束して」
「分かった〜」って叫びながら、
子供ウルフはコッペパンの周りを走り回る、
3匹のウルフをシートに乗せて、
風を纏わせて浮かべると、
子供ウルフ達は大喜びで景色を楽しんでいる、
「凄い〜あんな遠くまで見えるよ、
マスター、あの湖まで走って行きたいけど、
川が渡れ無いんだ」
一緒に浮かんでいたサクラも湖を見て、
「結構川幅あるんだね、橋を作るか」
子供ウルフが大喜びで、
「マスターありがとう」
サクラはデレデレ顔で、
「任せて〜」と答えると、
ルーアが呆れた顔で、
「マスター、
その変な乗り物でどこか行くんじゃ無いのか?
遊んでる暇あるのか?」
ルーアの指摘に、
「あっ、そうだった、
じゃあこれで空中散歩おしまい」
コッペパンをゆっくり下ろし、
サクラはコッペパンに乗り込んで、
「今日は鬼神族の国に行って来る、
みんなじゃ〜ね〜」
そう言ってサクラがコッペパンで下山して行った後、
料理太郎達が慌てて走って来て、
「マスター行っちゃった?
もう、あの子ったら朝ごはん食べ無いで」
サクラの母親の口癖を真似をする太郎達、
ルーアは太郎達を無視して、
また眠るのであった。
サクラはコッペパンに乗って更生施設の上で、
下の様子を見ていると、
真面目なアルダンが1番に起きて来て、
太郎達の家に入って行った。
何をしに行ったのか、
ゆっくり降りて、家の中を窓から覗くと、
朝食の準備をしている太郎の手伝いをしているアルダン、
アルダンは楽しそうに笑って、
太郎達と何かを話している、
サクラは最近、確信したのは、
太郎達は自動学習をしている、
PCの側で色々見ていた様で、
料理太郎は醤油なども作りだし、
味噌やビールなどを作るのも時間の問題、
サクラは太郎達の成長を大いに喜び、
これからが楽しみでしょうがない。
家の中を覗きながらニヤニヤしているサクラに、
オネットとサンセが声を掛けて来た。
「マスターおはようございます」
サクラはオネット達の声に「ビクッ」として、
「おっおお、おはよ〜」
「マスターそんな所で何をしてるのです?
それにその乗り物は何ですか?」
サクラはニヤニヤしながら、
「いや〜ヒューマン女子の、
アルダンが良い子で、
太郎君達の手伝いをしているから、
ここに連れて来て良かったと思ってた所」
オネットとサンセは笑いながら頷き、
「両親達も言ってますが、
あんな盗賊から助け出せて良かったって、
みんな言ってます」
オネット達が嬉しそうにしている所にサクラが、
「本当に良かった、
さ〜オネット達は、
このコッペパンの様な乗り物に乗って」
オネットとサンセは笑顔のまま固まって、
汗をかき始める、
「えっえっと〜それに乗れと?
浮いてますよね?」
「うん、アタシが風魔法で浮かせてる、
飛んで行った方が速いと思って、
朝早くに作ったんだ、
ほれ、ほれ、はよ〜乗って」
オネット達は口が引き攣って、
「空を飛ぶ…いや〜
落ちたら大変な事に…」
「失礼ね、落ちないわよ…たぶん、
落ちたって死なないから、
上空で地図も書きたいし…」
冷や汗をかいて硬直している2人を見て、
変なスイッチが入ったサクラ、
「仲間が心配なんだろう?
つべこべ言ってないで、
さっさと乗りな、
モンスターと戦ってきた兵士が、
空を飛ぶだけでビビってるんじゃねぇ〜ぞ」
サクラの勢いに負けて、
渋々コッペパンに乗り込む2人、
ゆっくりと浮上して行くコッペパン、
上空30メートル位で、
「鬼人の国はどっちじゃ〜」
初めての飛行にビビっているオネットが、
震える手で鬼人の国の方向を指差す、
「あっちだな!ああん!」
サクラの変なスイッチが入ったまま、
コッペパンは動き出す。
空をを飛んで1時間程進むと、
大きな町が見えて来る、
最初はビビっていた2人も、
高い所に慣れて来て、
町を指差すと、
「あそこの町に下ろして下さい、
あそこで兵士の家族が店をやっていたはず」
「了解っす、
その前に、見た目変えないとね、
それでどうする?」
オネットは
「私はこのまま歳を取った様に変えて下さい、
サンセは若い女性で、親子として聞き込みします」
「分かった!
アタシは勝手に調査するから、
何か有ったら…どうっすかな〜ああ!」
サクラは3cmの太郎を2体召喚して、
オネットとサンセの肩に乗せる、
「太郎君達とは念話が出来るから、
何か有ったら太郎君に言って、
太郎君達は誰にも見られ無い様に、
体の何処かに隠れるんだよ、
じゃあ体を変えるよ〜チェ〜ンジ」
言われた様に容姿が変わった2人、
サクラは首を傾げて、
「サンセは女性の服じゃ無くて良いの?」
「大丈夫です、
ローブ持って来たんで、
それより…マスターはそのまんま?
目立ちませんか?」
オネットもサクラを見て、
「忘れていたな、町でローブを買いますか?」
「ええ?お金持って無いよ」
「私が持ってます」
「いやいや、
オネットのお金は使わせ無い、
どうしてもって言うなら何か売るよ」
「それは無理です、
マスターは子供に見えますから、
買って貰えないでしょ、
私が聞き込みのついでに売って来ます、
何を売りますか?」
「何を売ればいい?
光石が高価だって、
バルのおじいちゃんが言ってたけど、
それで良い?」
オネットとサンセは目を丸くして、
「売ってもいい程持ってるんですか?」
「うん、いっぱいある、
魔石も色々あるし…
そうだモンスターから取れる魔石も持ってるな」
「それは…貴重な物なので、
あまり売らない方が良いですよ、
相手にも何で持ってるかって聞かれますし、
光石なら少しの量で、
ローブを買える位の金額になると思います」
サクラはアイテムボックスを開けて、
光石を取り出す、
大きな光石が5個出て来た。
「これでいい?」
オネット達はビックリして、
「私達の町にもふんだんに使われていますが、
大丈夫なのでしょうか?」
サクラは「フッ」と鼻で笑うと、
「拠点に採掘担当の太郎君がいるんだ、
それは毎日、毎日、楽しそうに、
採掘に行っちゃうんだよ、
光石だって柱の様な大きさのもある」
「ああ、ルポルの町で出してた」
「そうそう、だから売っちゃって、
売ったお金で他に必要な物を買ってもいいから」
「では1つだけ売らせてもらいます」
「何で1つ?」
「マスターはこの世界の人間では無いと、
仰ってましたよね、
だから知らないのも仕方無いのですが、
これ1個で金貨10枚程になると思います」
サクラは表情を変えずに、
「へ〜」と一言だけ言うと、
オネットとサンセは「プッ」と吹き出し、
「お金には興味が無さそうですね、
金貨10枚は新人兵士の5ヶ月分の給料ですよ」
サクラは難しい顔になり、
「今は食糧難で、お金よりも食料だけど、
この先オネット達もお金が必要になる?」
2人は首を傾げて、
「それはどうでしょう?
今の生活だと、町で全部揃いますし、
兵士の時は家賃や税金の支払い、
生活に必要な物は買わないと無かったですが」
「まぁ〜今考えても仕方がないか、
この先お金に困る人が出て来た時の為に、
たまに町に出て何か買ってもらって、
お金も貯めていた方がいいかな」
「でもマスターはお金必要無いでしょ?」
サクラは笑いながら、
「アタシの為じゃ無いよ、
例えば、ヒューマン女子達が独立して、
何処か違う町に住むって言ったら、
お金持たせないと困るでしょ、
オネットとサンセだってそうだよ、
他に困っている人にも渡せるしね」
何でも無い様に説明をするサクラを、
オネットとサンセは見つめていた、
今まで仕えて来たダガルは、
傲慢で自分の利益しか考えていなかった貴族、
仕える相手が選べたのなら、
サクラの様な考えの主人が良かったと、
つくづく思うのであった。
目頭が熱くなるのを堪えながらサンセが、
「マスター、
私はあの町を出る事は絶対に無いと思います。
住んでいる家は何もかも整っていて、
豊富な食材、しかも食べた事も無い美味しい食材、
しかも、空いてる時間にと、
スポーツやボードゲームなどを用意してくださって、
楽しい時間というものを初めて経験しました、
これからもよろしくお願いします」
「アハハ、サンセは真面目だな〜
こちらこそ宜しくだよ、
サンセは今女性なんだから、
言葉遣いは気をつけ無いとね、
じゃあ町の近くに降りるよ」
サクラは人目を避けてコッペパンを下すと、
町の城門に向かって歩き出す、
城門には見張りの兵士が2人立っていた。
「町に入るのに何かしなくて良いの?」
「特に無いのですが、
別種族は色々聞かれるかもしれません」
「なるほど、
オネット、光石は売れたら売っといて、
アタシは別ルートで町に入って情報収集する、
何か有ったら連絡して、
アタシもするから、
それにローブは自分で作ればいい事に今気付いた、
じゃあ行って来るね」
そう言ってサクラは飛んで行ってしまった。
オネット達は「あっ」と言って、
「そうだったマスターは飛べたな、
我々も気を引き締めて、
町に入ろうでは無いか」
オネットの言葉にサンセは真剣な顔で頷く、
オネットとサンセは城門まで行くと、
「私達は近くの農村から、
買い物をしに町まで来ました」
門番の兵士は訝しげに2人を見て、
「近くの農村とは何処の事だ」
ペザンヌの農村がまだある事は、
空から見て確認済みだったオネットは、
自信を持って答える、
「ここから北東にあるペザンヌです」
「ペザンヌだと?
途中モンスターには出くわさなかったのか?」
「はい、お陰様で大丈夫でした」
「まさかお前達は、
何かアクセを装備しているのか?」
オネットとサンセは首を傾げて、
「装備はこの剣しか持ってませんが、
アクセとは何の事でしょう?」
そう言って腰の長剣を見せる、
兵士は慌てた様子で、
「いや何でも無い、
今は物の流通も少ない状態だ、
希望の物が買えるかどうか分からんぞ、
では町に入るがいい」
オネット達はホッと胸を撫でおろすと、
城門をくぐり町へと入って行く、
暫く通りを歩いてからオネットは小さな声でサンセに、
「アクセって何だ?
ダガルが持ってた物と関係があるのか?」
サンセは歩きながら目だけでオネットを見て、
「関係はあると思った方が良いと思います、
私が知る限りではアクセサリーは魔道具だと思ってましたが、
まさかマレディク ダンジョンで、
アクセサリーが見つかるとは思ってませんでした。
そのアクセサリーをあんな盗賊を雇ってまで取りに行かせたのなら、
ダガルは何かを知って取りに行かせたのでしょうな」
オネットは大きく頷き、
「確かにダガルは何かを知ってるだろう、
我々兵士にも入って来なかった情報だ、
知ってる者からすると、
元ダガルの私兵はアクセサリーの情報を持ってると、
勘違いされているかも知れない、
急いで情報を集めるぞ」
サンセは頷き、2人は早足で目的の場所へ向かう、
向かった先は帰った兵士の両親が営んでる雑貨店だ、
オネットも何度か寄った事があり、
気さくな両親が大好きであった。
店の前まで来ると何故か店は閉まっている、
人の気配も感じ無い、
オネットは店の2階部分を見上げて、
「おかしい…もう店が開いてる時間のはず、
2階は住居のはずだが、人の気配がしないな」
サンセは通りを眺めて、
「開けてる店の者に話を聞きましょう」
そう言ってサンセは向かいにある茶葉の店に入って行く、
店の中には年老いた女性が店の奥で座っている、
店に入って来たオネットとサンセを見て、
「いらっしゃいませ、何をお探しですか?
品薄ですがゆっくりご覧ください」
そう言ってお茶をすすっていた。
サンセは茶葉を探すふりをして、
オネットは老婆に近付いて、
「あそこの雑貨店に用があったのだが、
まだお店が閉まっていてな、
何時に店が開くか知ってるかい?」
老婆はオネットの顔を見上げて、
「あそこはもう店はやって無いよ、
いつ閉めたかの…2年は経って無いか?
なんか貴族様の私兵がたくさん来た時だ、
あの時は町で騒ぎがあったから、
良く覚えているよ」
「町に騒ぎですか?
どんな騒ぎだったのでしょう?」
老婆はゆっくり首を左右に振ると、
「私は詳しい事は何も知らんよ、
他の店もバタバタ閉めて行ったしな、
この2年は色々あり過ぎだ」
オネットとサンセは悲しい顔で老婆を見つめ、
サンセが商品をいくつか持って、
「あの…これを頂けますか?」
「まあまあ、そんなに、
ありがとうございます」
サンセは老婆に笑いかけ、
「あの、この瓶の入ってる黒いのは何ですか?」
老婆は指差された瓶を見て、
「あ〜それは、コーヒーて言って、
南の方でしか取れ無い貴重な物なんだけど、
ここら辺じゃ飲まないから…なかなか売れなくって」
オネットはコーヒーと言われた瓶を見つめ、
(確か、マスターがコーヒー飲みたいと、
言っていた様な…」
「店主殿、そのコーヒーとやらを頂けないか」
「まぁ、買って下さるの?
ではおまけにこのハーブティーをお付けしますよ」
老婆は嬉しそうに、
商品を袋に詰めると、
「このコーヒーが売れて良かった、
売れ残って可哀想だったから、
私も店を閉めて息子達の所に行く事にしたの、
この町も変わっちゃって…」
老婆は寂しそうに通りを見つめる、
「あらやだ、暗い事言っちゃったわ、
お嬢さん達もお元気でね」
そう言って老婆は笑って手を振っていた。
オネットは怖い顔をして歩いていた、
そんなオネットにサンセが、
「オネットさん、どうかしました?」
「あの店主が言ってた騒ぎが気になって、
こうなったら、冒険者ギルドに行くぞ、
ギルドマスターとは知り合いだったが、
この姿のままでは…何処まで口を割ってくれるか、
あそこには情報も集まるからな、
その前にマスターの光石を売りに行くとしよう」
光石を冒険者ギルドで買ってもらい、
ギルドマスターとの面会を頼んだオネット、
受付の女性には怪しい者のように見られたが、
なんとかギルドマスターに会う事が出来た。
ギルドマスターの部屋に案内され、
部屋に入ると、
少しやつれたギルドマスターが立っていた、
オネットは深々と頭を下げて、
「初めまして、ギルドマスターさん、
私はオネット-トゥリスの父親のロイタと申します、
息子が行方不明になりまして、
情報を集めているのです、
前にこちらのギルドマスターさんと知り合いだと、
息子から聞いていましたので伺いました、
何か情報はありませんか?
他の兵士達の情報でも良いのです」
ギルドマスターは目を伏せて、
椅子に座ると頭を抱えてながら、
「オネットのオヤジさん、
話を聞いたらどうするつもりだ?」
「どうするって?
息子を探しに行きます」
「探しに行かないと約束してもらえれば、
知ってる事を少しは話してもいい、
そもそも、探しに行けない所にオネットはいる」
オネットは驚いたふりをして、
ギルドマスターに詰め寄る、
「どうゆう事ですか?
息子は無事何でしょうか?」
ギルドマスターは顔を上げて、
「オヤジさんはオネットが仕えていたダガルの事は、
勿論知っているよな?
ダガルは犯罪を犯して、
私兵を連れてエルフの国に逃げて行った」
オネットは
(そんな事まで知られている?誰から聞いた?)
オネットは驚愕の顔を作って、
「その情報は確かなのですか?」
「ああ、ダガルを見限った兵士が戻って来て、
その兵士達から聞いた話だ」
オネットは心の中で(繋がった)
喜びで笑ってしまいそうなり、
両手で顔を押さえて誤魔化し、
「その兵士達は今何処にいるのですか?」
「それは言えない、
あいつらも危ないからな」
「危ないって…何故?」
「兵士が仕えてた主人が罪を犯したんだ、
兵士も同罪だろ、
いくら見限って帰ったと言っても、
私兵が主人を捨てるなんて、
プライドが高い貴族が認める訳無い、
何人かは捕まったが…
他はバラバラに逃げたとも聞いている、
300人全ての行き先は知らない」
ギルドマスターは真剣な顔で、
「オヤジさん、早く町から出ろ、
絶対にオネットの親などと口にするな、
この国はおかしくなってる、
明るい内に町を出るんだ!」
オネットはギルドマスターの顔を見つめ、
(やはり、こいつは良いやつだった、
ギルドマスターの立場で、
冒険者も守らなければならない、
辛い立場なんだろうな…)
オネットは目頭が熱くなり、
声が震えない様に、
「ギッギルドマスターさん、
ありがとうございます、
ギルドマスターさんもお体に気をつけて、
では失礼します」
そう言って振り返ると、
サンセが号泣していた。
オネットはサンセの背中を優しく撫ぜながら、
ギルドマスターの部屋を出る、
オネットはマスターの顔が浮かんで、
「マスター、この国救ってくれないだろうか?」
涙でぐしゃぐしゃの顔をオネットに向けるサンセであった。
読んで頂きありがとうございました(^^)




