純の苦い記憶
「陽仁……」
みづきが俺の背中を見つめる
「今の俺は……ただの殺し屋なんかじゃない」
自分でも驚くほど、すんなりと言葉が出た
さっき司令官に言われたことが、ようやく分かった気がした
俺は三節棍を握り直し、みづきの前に立つ
「守るもんがあるんだ」
「陽仁…あなた、きっと そのうちリーダーに選ばれるわ あなたの腕前、気風の良さなら」
すると後ろから純が口を挟んだ
「いいんじゃねえか? 陽仁リーダー」
「お前まで何言ってんだ!」
「俺より向いてそうだぜ?」
「比較対象がお前なら大抵の奴が向いてるだろ!」
純はケラケラ笑い
「失礼なやつだな、これでも昔は俺もリーダーやってたんだよ 滝たちがいない頃にな」
俺は思わず純を見る
「なんだよ、その意外そうな顔は」
「いや……お前、真っ先に突っ込むだろ」
「昔はもうちょい考えてたんだよ!」
みづきがくすっと笑う
「そうね、純がリーダーをやってた時期もあったわね」
「みづきと俺は同期だからな 滝や智嬉よりも古いんだ」
「じゃあ、お前、滝が来る前から前線にいたのか?」
「ああ」
純はあっさり答える
「滝がいなきゃ戦えねえってわけじゃねえんだよ
あいつが来る前は、俺らでやってたんだからな」
「ヤンキー時代だな?」
俺が聞くと、純は不敵な笑みで
「"武龍会"の幹部もやった時もあった」
純は妙に得意げだ
みづきが横から口を挟む
「純、あの頃は今よりずっと怖かったのよ」
「おい、余計なこと言うな」
「本当じゃない 目つきも悪かったし、喧嘩っ早かったし」
俺は思わず仰け反る
純は見逃さなかった
「俺にビビってるけど、お前の殺し屋も大概だからな 俺らより上だぜ?やってることは」
「うっ……」
言い返せない
確かにそうだ
元ヤンキーにビビってる場合じゃない
俺はそれ以上の世界にいた
「……言われてみりゃそうだな」
「だろ?」
純はニヤニヤしながら俺を見る
「武龍会の幹部だった俺を見て引いてる元暗殺者…笑っちまうな」
「うるせえ! お前は見た目と普段の態度が妙に普通なんだよ!」
「こうなるまでに努力したんです〜」
純はわざとらしい敬語で俺に言い返した
「腹立つ言い方すんな!」
「事実だろ 俺だって最初からこうだったわけじゃねえんだよ」
純はケラケラ笑う
みづきも懐かしそうに頷いた
「それは本当よ 昔の純を知ってる人なら、今の姿を見たら驚くと思うわ」
すると、敵の気配
テレポートして俺たちが今いるサロンに現れたジャスティンがニヤリ
「…やはり貴様にもあるな 苦い記憶がありそうだ」
純は冷や汗を流した
「やべっ…」
「黒い記憶覗かせて貰うぞ!! 体を動けなくしてやる!!」
純は慌ててみづき、俺を大きい体で前にたち、
大きく腕を広げて庇う
「純!!」
「純だけじゃ無理よ!!"水守"!!」
みづきの水色のバリアが俺たちサロン全体を囲う
ジャスティンから放たれた青黒い波動が、水色のバリアへ激突する
「くっ……!」
みづきが両手を前へ突き出し、必死に踏ん張る
水色の海のようなバリアが顕になった
「みづき!」
俺は咄嗟にみづきの身体を支える
純はそれでも俺たちの前から動かない
両腕を大きく広げたまま、ジャスティンを睨みつける
「純! お前まで一人で受ける気か!」
ジャスティンは青黒い力を放ちながら、純を見据える
「仲間を背に庇うか、荒井純」
「……」
「だが、その行動も貴様の記憶から来ているのではないか?」
純の肩がぴくりと動く
俺は見逃さなかった
純は忌々しく話し、
「……そうだと思ったら? てめえはどうする気だよ」
俺は純を見る
「純、お前……何をそんなに警戒してる?」




