偶然……ではない
「マニー様ですか!? 挨拶が遅れました。アキテールの祭に参加させて頂き、ありがとうございます。私、イズン帝国から来た」
「そうですか。祭に参加頂き、ありがとうございます。ぜひとも、楽しんでくださいね。今は急ぎの用がありますので」
【妖艶】は商人が名前を告げる前に、笑顔で対応。すぐに会話を切るために、笑顔ながらも急いでる空気も出すのは、こういう状況に慣れているからだろう。
「す、すみません。また伺わせてもらうかもしれませんので……」
商人は俺の方に視線を向けてきた。俺が商人の顔を覚えてたように、彼も俺の顔に見覚えがあると思ったのかもしれない。
単なる客の一人の顔なんてと思うが、彼女が何か言ってる可能性は十分ある。
そして、そんなやり取りをしてるのなら、彼女もこっちを向くのは必然なわけで……
「師匠!!」
ネスティスは俺を見た途端、自身だと分かるようにフードを脱いだ。
折角、勇者の自覚が出来たと思ったのに、喜び損だぞ。
「はぁ……師匠呼びは止めろ。外にいる時はゼロストにしてくれ」
「あっ!! ゴメンなさい。けど、偶然ですね。同じ国に来てるとは思いませんでした!!」
「……偶然?」
ネスティスは俺の方に笑顔を向けてくる。
『偶然』という言葉を使うのが逆に怪しいし、本当にビックリした感じでもない。
コイツは俺がアキテール国に来る事を知ってた気がする。そう考えると、知られたのは……あの時か!?
カフェでの俺とフレアの会話……だとしても、店内にネスティスはいなかった。ただし、出る時には外側に姿が見えたような気はしてたが……
「アンタがネスちゃんの師匠なんだな。何処で情報を仕入れたのか、アキテールについて行きたいと言ってきた時には何事かと思ったよ」
「ん? ネスティスから……貴方が護衛を頼んだわけじゃないのか? その報酬として、【鑑定】のスキルを教える」
「【鑑定】のスキルを教えるのは合ってるし、護衛もそうだけど……先に言ってきたのは」
「それは……その……えへへ。それもゴメンなさい!! ゼロストさんがこの国に出張する事は知ってました」
ネスティスは白状したが、どうやって?
フレアが彼女に話す事はない……と思う。彼女に話せば、ついて来ると言いかねない事は分かってるはずだ。
協力関係なら、一緒の馬車に乗ったはず。ネスティスも余計な行動をせずに済んだ。
だとすれば……可能性があるのは、彼女が習得したスキル。




