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駆け引き

「あんな言い争いよりも、あっちが日常茶飯事ね。駆け引きを楽しむところもあるし」


【妖艶】が指差した方向には、商人と客との勝負が行われていた。


「私の【鑑定】だと、もっと安く出来るはずです」


「いやいや……この国にはない物だからね。場所によっては価値が変化するんだよ」


「なるほどです……でも、これぐらいですよね?」


「駄目駄目。だったから、これも買って、この値段はどうだい?」


「いらないです。それだけが欲しいです」


「それも確認しよう。分かってる物でも、少し違っただけで効果が変わる事もあるからね。スミマセンね。この子のスキルの練習も兼ねているので」


「なるほどね。なら、これの価値が当たれば、少し安くしてあげるよ。失敗すれば、授業料として提示した値段+この物も買い取って貰うのはどうだい?」


「……いいでしょう。私の事は気にしなくていいです」


 実戦は練習よりも効果があるように、商売の場で【鑑定】のスキルの練習をする二人組がいる。


 露店の商人もタダで勉強させるよりも、どちらに転ぶか楽しんでいるようだ。


 二人組の一人は顔を見せないようにフードを被っているのが怪しく思えるが、もう片方は商人だとすぐに分かる。


 というのも……彼はイズン帝国の商店街に店を出してる商人だからだ。


 それと……もう一人の顔を隠している人物……女の声に聞き覚えがある……というよりも、幾度も聞かされているのが正しいか?


 フードを深く被り、彼女が顔を隠してる理由も分かる。商人の方も気をきかせたんだろう。


「良い師匠がいるわね。スカウトしたいところだけど、今は邪魔になりそうだし」


【妖艶】は一度見るだけで、気にせずに過ぎ去ってくれそうだが……


「フードを脱いで、ちゃんと見た方がいいぞ。練習中なら尚更だな。失敗の理由されるのも面倒だ」


「……大丈夫です。それを言い訳なんかにしません。迷惑を掛けるわけにもいかないので」


 彼女はフードを取らず、【鑑定】をするようだ。


『迷惑』という言葉も失敗ではなく、顔を見られて、騒ぎになるのを見越してだろう。そこは本人も自覚があるようだ。


「そこまで言うんだったら……っと!! マスターじゃないか。いつ見ても美人だな。連れに男一人は珍しいね」


「どうも。仕事関連だから。変な噂は流さないでよ。そっちもお疲れ様ね」


【妖艶】というよりも、組合のマスターとしての知り合いのようだ。一介の商人というより、上の地位な気がする。


 ただし、問題なのは【鑑定】の最中に声を掛けてきた事だ。

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