弱点?
「……何? 勇者に知り合いでもいるわけ?」
こういうところは【妖艶】も察しが良いから、困る。来るのがネスティスなら、絶対にバレる。
【妖艶】が会わせるつもりなら、尚更だ。ネスティスは空気も読まず、師匠呼びしてきそうだ。
「まぁ……一人だけ。別の国に行くとは言ってたが、流石に……な。対面じゃなく、見るだけなら」
俺は顔見知りな事は伝えておく事にした。
「言っておくが、彼女は俺が【道化師】という事は知らないからな。見つかったとしても、余計な事を言うなよ」
もし、ネスティスがアキテールに来てる場合、俺を見つける可能性はゼロじゃない。
俺自身がその国の協会へ挨拶に行けと言ったからだ。
フレアが受付をしているのなら、当然俺もいる事になる。そこに【妖艶】が鉢合わせて、余計な一言を言うかもしれない。
「【道化師】の弱点」
「そんな事言ったら、ゴイゼン所長にある事ない事言うからな。勇者だけじゃなく、フレアにも駄目だからな」
弱点があるのはお互い様。俺の場合、面倒になるだけだが、【妖艶】の場合は口に言えない事も……
「分かってるわよ。事務所の裏口から入って、確認すればいいから。ちなみにどの勇者なの? 貴方が目をかけてるなら、本部寄りじゃないのよね?」
【妖艶】としては、本部と繋がりの薄い勇者と繋がりを持ちたいようだ。もしくは、本部を良く思ってない勇者。
勇者もいうなれば、本部ありき。本部の力で勇者は成り上がり、確固たる地位を得たまである。
だからこそ、本部に逆らう勇者はいない。
今ではランキング上位にいるのは勇者パーティーばかり。昔はそこまでの力はなく、【無法者】が上だった。その前に……
「だな。俺達自身、他……今の勇者達の事をほぼほぼ……全く知らないに等しいからな。俺の場合、映像で見るぐらいだ」
勇者の存在は昔もいたが、俺達が知っている勇者はハンターから消えている。引退した者もいれば、死んだ奴も。本部が力を貸す以前の話だ。
俺達【無法者】や【影】、【妖艶】を含む二つ名持ちがハンターから離れた後、台頭してきたのが今の勇者達になる。
「だからこそ、私以外の目が欲しいわけ。商人達からも良い噂はないからね。まぁ……キテールに来るなら、協会にも顔を見せるはず。先にどんな人物か知っておくのも悪くないでしょ? 貴方も趣味もだけど、彼女のためにもね」
俺の趣味……異界じゃなく、ハンターオタクの方か。確かに【道化師】時代から、色々とメモをしてたが、それを【妖艶】に見られていたなんて……
彼女というのは、勿論フレアの事だろう。【妖艶】はネスティスの事を知らないはずだ。
もし、男勇者だとしたら、アキテール支部唯一の受付嬢に絡んでくる可能性が高く、事前に対策を建てる事が出来るからだろう。




