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本人だけが分かってない?

「はぁ……行くか」


「本当に嫌そうなんだけど……そんなにヤバいハンターなの? 私達は別支部だから、大丈夫だと思うんだけどな」


 フレアは俺達が来た事で、何も変わらないと思ってる。本来はそうだ。来たばかりで、能力なんかも知らない。来て早々に勧誘する事はないだろう。


 それとオークション参加者であるフレアの情報も手に入れているはず。


 イズン支部で働いているのはともかくとして、顔と名前はマニーも知っているに違いない。


 貴族ゴード家の娘ともなれば、下手に扱えない……扱えないはず。


 この場だと、フレアの方が嫌がるか。【妖艶】なら、すぐに状況を察して、彼女に合わせる事も可能だ。


 むしろ、【妖艶】はフレアの方にだけ集中してくれ。俺は空気と思ってくれた方が嬉しいまである。


【妖艶】とは【道化師】の姿でしか会った事はなく、声も変えた状態でだ。


 それでもゼロストの姿で気付く可能性がある。結構な確率だと思っている。


 目や耳が良いのもあるが、動きや声質で判断している。盗賊が変装しても、見破る事が多かったからな。


「おはようございます!!」


 フレアは堂々とアキテール支部に入り、挨拶をした。そのお陰で、全員の視線が彼女に集中する。特に【妖艶】の視線が突き刺さるのが分かる。


「アキテール支部の制服? ……誰? 新人が入ったなんて、ゼンさんから何も聞いてないんだけど? 」


【妖艶】は近くにいたオジサン職員に声を掛ける。この場にはゴイゼン所長はいないようだ。


 というか、ゴイゼン所長の事を『ゼンさん』と呼んでる時点で、仲の良さが伺える。しかも、職員にも気軽に声を掛けてるぐらいだ。アイツが気にせず、話し掛けているだけかもしれないが。


「イズン支部からの出張で来てる子達だよ。今日が仕事始めでね。邪魔をしたら、所長の評価が下がるから駄目だよ。色々な意味でだからね」


 オジサン職員の一人はちゃんと【妖艶】に言い返している。職員も【妖艶】を嫌ってるわけでもなさそうだ。


 もしかしたら、オジサン職員達も分かってるのかもしれない。ゴイゼン所長本人だけが分かってないだけで……


「ふん!! 私がそんな事を気にするか……貴方達は仕事の続きをしておきなさい。この時期に手伝いに来るという事は」


【妖艶】がフレアに近付いてくる。『この時期』と言う時点で、オークションに関係すると考えていそうだ。


「……可愛いわね。若いのに私以上の雰囲気があるぐらいに。普通の職員には思えないんだけど?」


「そうですか? ありがとうございます。貴女みたいな綺麗な人に言われると自信が付きます」


【妖艶】は皮肉を言ったわけじゃなく、本当にそう思った感じがある。フレアも何もなかったように返したわけだが……

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