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悪口ではなく、褒め言葉です

「彼はそんなに優秀なんですか?」


 アカネはジルオールの実力を買ってみるみたいだが、普通に立ってただけ。スキルを使用してる様子もなかった。仕事を完遂するために必要な事をしてないんだが?


「そうだな。ジルは稀有な存在だ。存在感がない。影が薄い。そこにいるとは思わない」


「……悪口ですか?」


 存在感がないとか、影が薄いとか酷すぎだろ。俺にはハッキリと目に見えてるから。


「違う。褒め言葉だ。見つからないという事は、盗賊の素質が高い事になるからな。ジルはスキルなしで【気配遮断】に近い状態にいる。一般人であれば、ジルが歩いているのに誰も気付かない。興味を持たない。俺でもたまに見つけられない事もあるぐらいだ」


「なるほど。【気配遮断】も使わず、堂々としているから、意味が全く分からなかったけど、その状態でも見つからない自信があったからか」


 確かに他の通行人は堂々と突っ立てるジルオールに対して、誰も興味を示してなかった。


 通り過ぎるのもそうだが、邪魔で避ける人いたが、障害物的な感じだった。


 文句も言わず、目も合わせず、単に避けただけ。


 俺だけがジルオールを見つけていたのか。だからこそ、あの驚きと嬉しさがあったのかもしれない。


「しかも、ジェ……所長でも見つけられない時があるのは凄い。スキルを使えば、何処にでも侵入出来そうな気もする」


 例えば、本部の中とか。色々と秘密がありそうだから。とはいえ、異界は流石に無理だろうけど……


「いや……そうもいかない。人の目は欺けても、監視装置を掻い潜るにも技術がいるからな。ゼロストの目が凄いんだよ。それに……」


 所長は口籠る。


「ジルは自身の特異に胡座をかいてるのよ。見つからない自信があるから、【気配遮断】や【気配探知】、【盗み聞き】のスキルを覚えようとしない。近くにいてもバレないからって」


 ジルオールは自信過剰になってるわけだ。まぁ……そんなところまで協会職員が知ってるはずもなく、盗賊ギルドの一員だから分かる事だと思うんだが……そこは触れないでおこう。


「それを治すためだとしても、俺を選ぶ理由は? 俺だったら、確実に見えると思ったから?」


 俺には【閲覧】や【開眼】があるからといって、ジルオールを見つけられたかどうか。話を聞く限り、偶然に過ぎないんだが……


 一度見つけられたから、目に入ってくるというか……


 それに【道化師】とは無関係だったら、尚更選んだ理由が見えてこないぞ。


「いや……ゼロストが簡単にジルを見る事が出来るとは全く思ってなかった。もしかしたら……ぐらいだな。理由に関して……勇者が関係している」

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